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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
60/440

42 蟻の巣穴にて6

 全身骨折、内臓破裂、片目眼球損壊、脳挫傷。


 裂傷、刺傷にいたっては数える気にもならない。


 まさに満身創痍。体のいたるところから血を流している少女にグレアムは治癒魔術を施す。


 まずは肺と心臓の循環器系。


 右手を少女の胸に置き、"怪我治療"を発動する。


 ポゥ。


 魔力の光がグレアムの右手から発し、少女の胸の中に吸い込まれていく。


 少女の体の中では、折れて肺を刺していた肋骨が瞬く間につなぎあわされ、破れた肺も、修繕した服のように穴を塞いでいく。


(十二秒)


 少女の肺と心臓を修復に費やした時間だ。


 この怪我なら一流の治療魔術師でも五分はかかる。ヒューストームが規格外と嘆くグレアムの治癒魔術は少女の肺と心臓を完璧に元に戻していた。


 続いてグレアムは頭部の修復に取りかかる。


 完全な治療。後遺症も残らないようなイメージを魔術式に注入していく。


 グレアムに言わせれば、魔術式とは関数である。


 ある入力に対して一つの出力に変換する。傷ついた今の少女の体と修復後の体のイメージを入力し、魔術式は"怪我治療"という結果を出力するのだ。


(魔術演算開始)


 グレアムはヤマトを通じて十三万弱のスライムに命じる。


 少女を癒す"道順"は魔術式という形で既に示されている。後はいかに速く、目的地に到着するかでしかない。


 だが、目的地に到着するまでに膨大な"式"を解かなくてはならない。


 そのスピードは魔術師の処理能力に依存する。


 同じ魔術を使用しても、魔術師によって発動までの時間や威力が異なる理由だ。


 スライムたちは膨大な魔術式の計算を分割して行っていた。


(まるでグリッド・コンピューティングのようだな)


 グリッド・コンピューティングとは、ネットワーク上にある複数のコンピュータに処理を割り振り、一つの高性能なコンピュータのように使う技術のことだ。


 宇宙から地球に届いた電波を解析して、地球外生命体から発せられた電波を探し当てるプロジェクトが有名だ。


 スライムのコミニュケーション手段である思念波のやり取りは正確で速い。


 スライム一匹をネットワーク上に配置された一台のコンピュータと見なせば、まさにそれは現代地球世界のグリッド・コンピューティングだった。

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