表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
一章 ムルマンスクの孤児

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/447

6 金貸しデアンソ

 使役系スキルの効果に感覚共有というものがある。


 使役している魔物の眼と耳を通して、彼らが見たり聞いたりしたものを使役者が見聞できる技能だ。


 タイッサは狼を使っての索敵、斥候ができるので傭兵ギルドで重宝されているという。


「タイッサさん。スライムの眼と耳はどこにあるんでしょう?」


 グレアムは半透明で半球形のスライムの体を眺めた。


「……私にそれを訊く?」


 それもそうかと思い、グレアムはスライムに直接訊いてみることにした。


(ヤマト。お前に眼と耳はあるのか?)


 ヤマトというのはグレアムが最初に使役したフォレストスライムにつけた名前である。


(???)


 ヤマトの返答は困惑だった。


「どうやら無いようです」


「でしょうね」


 それでグレアムはスライムを斥候に使う案は諦めたのだが、スライムの観察を続けて音には反応していることに気づいた。


 耳もないのにどうやって音を聞いているのかと思ったが、人間は耳を塞いでもある程度、音が聞こえることに思い至った。


(確か骨伝導といったか。音を体の表面で受けて音を認識する方法)


 もちろんスライムに骨はないが、似たような仕組みで音を認識しているのではないか。


 グレアムはそう仮説を立てた。


(もしそうなら……、ヤマト、マイクのように……っていっても分からないか。

 とにかく、おまえが拾った音を俺にそのまま伝えろ)


 マイクは音波を電気信号に変える。グレアムはスライムにマイクと同じ機能を期待したのだ。


 スライムマイクの実験結果は大成功と言えるものだった。


 スライムに音をうまく拾わせるには多少のコツが必要だったが、スライムと意思疎通が出来る範囲ならば、グレアムはスライムが拾う音をほぼすべて聴くことができるようになった。


 ------------------------------------------------------------------------------------


『まったく、傭兵ギルドも余計なことをしてくれる。

 危うく数年がかりの計画がパァになるところだった』


 デアンソ商会に潜り込ませていたスライムがデアンソの声を拾う。


『ギルドの職員に鼻薬をかがせておいて正解でしたね』


『トムスはどうした?』


『部下に命じて始末しておきました。今頃は魔物の餌になっている頃です』


 トムスはトレバーに架空の投資話を持ちかけ、金を貸し、その借用書をデアンソに流した人物だ。


 デアンソは十年以上も前から孤児院の土地に目をつけていた。


 金のためなら汚い事にも平気で手を染めてきたが、さすがに領主の息のかかった孤児院の土地を非合法で手に入れることは憚られた。


 デアンソは孤児院に関する情報を集めつつ、チャンスを待った。


 そして数年後、トレバーが賭博にのめり込んでいるという情報を得た。


 賭場を開いてるいる胴元に金を渡し、トレバーの勝負をコントロールするように依頼した。


 小さな負けを重ねさせて最後に大きく勝たせる。


 負けは取り返せるという幻想をトレバーに刷り込ませることが目的だった。


 デアンソが胴元に金を渡すのを止めると、目論見通りに負けを重ね、遂には孤児院の運営資金にまで手をつけた。


 こうなるとしめたもの。


 領主は運営資金を溶かしたトレバーを許しはしないだろう。


 焦るトレバーに金を貸すのは容易だった。最初は低金利で、徐々に金利を上げていく。


 気づいた時にはもうどうしようもなくなっている、あの土地はデアンソのものとなる、そのはずだった。


 トレバーの娘のレナが借金の存在を知り、一気に清算しようとしているとの情報が入った。


 借金を返されれば土地を合法的に手に入れられなくなる。


「レナに金を貸さないようにはできないのか?」


 デアンソは買収したギルド職員に訊いた。


「ギルド長はレナの話に前向きです。貴重な癒やし手を確保できるのですから」


「……レナの出した条件はギルド所属の傭兵の怪我を優先的に治療するというもので間違いないな」


「はい」


「それに条件を一つ、いや二つ加えさせることはできないか?」


「どのような条件でしょうか?」


「まず、ギルドが要請したクエストに強制参加が一つ、二つ目はクエストに参加できるだけの体力がレナにあるかを見るための試験を受けること。試験内容はそうだな……、王都までの商隊に同行し帰ってくるというのはどうだ?」


「まさか、レナを亡き者に?」


「傭兵ギルドに喧嘩を売るような真似はせんよ。レナを孤児院から遠ざけることが目的だ」


 自身のスキルをエサに傭兵ギルドから金を引っ張るなど小娘の発想ではない。


(誰かに入れ知恵でもされたか? 調べた限り、あの親子の周りにそんな知恵が回る奴はいなかったはずだ。いずれにしろ、小賢しい娘であることには変わりない。これからトレバーをはめるのにレナは邪魔だ。

 仕込みが終わるまで街から離れていてもらわんと)


「それでどうなんだ? 条件はつけられそうか?」


「一つ目の条件は問題ないと思います。ですが二つ目は難しいかと。レアな『治癒魔術』に比べれば体力不足などたいした問題ではないとギルド長は判断すると思いますね」


 その他人事のようなギルド職員の言葉にデアンソは激高した。


「簡単に金を貸しては他の傭兵に示しがつかん。そうでも言って説得しろ! 何のために高い金を払っていると思っている!」


 これまで既に相当の金を使っている。


 デアンソも引くに引けなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ