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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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40 ヒューストーム魔術講座4

 ーー 二年前。ブロランカ島、二の村 ーー


 聖国魔導学院での講義中に起きた酒にまつわるエピソードを聞いて、グレアムは意外と師匠も大人気ないなと思った。


「師匠、大人気ないです。師匠の三分の一も生きていないような子どもをやり込めるなんて」


 グレアムが抱いた感想を正直に伝えたところ、ヒューストームはさも傷ついたというような顔をした。


「ふ、ふん。酒を嫌悪する者、即ち儂を嫌悪するに等しい。あの小娘も、そんな人間の講義など受けとうなかろう」


 そう言うとヒューストームはグレアム特製密造酒をあおった。


 スライムたちのおかげで治癒魔術を使えるようになったグレアムではあったが、早くから独学に行き詰まりを感じていた。


 治癒魔術は確かに強力ではあるが、それだけでこの厳しい世界を生き抜くことはできない。身を守るための力が必要だった。


 グレアムは自分が治癒魔術を使えることをヒューストームに明かすまで秘密にしていた。


 治癒魔術を公にしていれば、もっといい待遇を得られたかもしれず、魔術も正式に学べたかもしれない。


 だが、グレアムはこの島に来た当初にちょっとしたトラブルを起こし、厄介払いされるようにすぐニの村に配属された。


 明かすタイミングを逸した上に、『スライム使役』のスキルしか持たない人間が魔術を使えることに周囲がどのような反応をするか読めなかったのだ。


 だから、配属先の二の村に元次席宮廷魔術師がいたことの幸運に、グレアムは戸惑いを覚えた。


 前世から不運や悲運と親しくしていたグレアムである。


 そして、案の定、事はそう上手くは運ばない。


 嫌な予感がすると言ってヒューストームがグレアムを弟子にすることを渋ったからだ。


 だからといって諦めるグレアムではない。不運や悲運と親しくしていたからといって、そのまま受け入れ嘆くだけでは状況は悪くなる一方だ。


 治癒魔術で体を癒したことで、オーソンと仲良くなったグレアムは、彼からヒューストームが無類の酒好きだと聞いた。


 そこでグレアムは酒を作ることにした。作り方は杜氏の元で働いていたという農奴の老人に教えを受けた。


 グレアムはついでにある実験を行った。その検証のため、タウンスライムの亜空間内だけで外に一度も出すことなく酒を作ってみた。


 試行錯誤の末に完成した酒の味は前世の記憶を持つグレアムにはとても満足いくものではなかったが、ヒューストームには喜ばれた。


 こうしてグレアムは、酒を作り続けることを条件に弟子入りを果たした。

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