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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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39 ヒューストーム魔術講座3

「ヒューストーム先生」


 眼鏡をかけた女生徒が冷たい声で呼びかける。先程、ヒューストームが王国で実績に見合った評価を受けていないのではないかと疑問を呈した生徒だった。


「わかりやすく説明していただき大変有り難いのですが、例を変えていただけませんか。先程から酒、酒と正直申しまして大変、不快です」


 大講堂が水を打ったように静かになる。


「ふむ、君は聖教徒かね?」


「はい。我がリンスター家は建国以来、代々の聖教徒です」


「そうか、それは失礼した。この国の慣習に不慣れなゆえ気を悪くしたのなら謝罪したい」


「いえ」


 女生徒は鷹揚に頷き、席に座る。


 一方、ヒューストームはおもむろに懐から酒瓶を取り出すと、それを一口、あおってから講義を再開した。


「さて、"道順"と"環境"は馬車の車輪のようにーー」


「ヒューストーム先生!」


「……なんじゃ、大きな声を出しおって」


「今、何をお飲みになりましたの!?」


「これか? これは『聖女の鉄槌』という口あたりまろやかでありつつも、パンチのきいたーー」


「そういうことを聞いているのではありません! 今のはお酒ではありませんの!?」


「……いかんのか?」


「当たり前です! 神聖な講義を何だと思っているのです!」


「それは失礼した。この国の慣習に不慣れなゆえ気を悪くしたのなら謝罪したい」


 ヒューストームは先ほどとほとんど同じ文句で謝罪した。


 大講堂のあちこちから苦笑が漏れる。


 ヒューストームが女生徒をからかっていることに気づいたのだろう。


 国民の大半は聖教徒ではあるが、厳密に教義を守っているものは少なく、教義の一つである禁酒を守る者はさらに少ない。


 聴講生の大半はヒューストームの例えにまでクレームをつける女生徒に辟易していた。


「この国の酒飲みは肩身が狭いのぅ」


 そう言ってヒューストームはまた一口、酒を飲む。


「なっ!?」


「"道順"と"環境"というのはーー」


 かまわず講義を続けようとするヒューストームを眼鏡の女生徒が制止する。


「なんじゃ? というか、まだおるのか? 謝罪はしたじゃろう」


 女生徒は怒りで顔を紅潮させて、その言葉の意味を訊く。


「……どういう意味でしょう? 謝罪をしたのなら飲むのをやめていただけるのでは?」


「謝罪したのは儂が講義中に飲むことがあると事前に伝えなかったことじゃ。そのせいでヌシを不快にさせたのじゃから謝るのは当然じゃろう。後はヌシが謝罪を受けいれたのだから、席を立って出ていけばよい。儂は君たちに頼んで聴いてもらっているのではないのだからな」

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