表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
53/441

35 蟻の巣穴にて4

(なぜ? なぜ? なぜ?)


 落下の衝撃で片眼はつぶれた。残った眼で女王の死骸を見つめながら、ティーセは自問した。


 女王はどう見ても、昨日、今日死んだという状態じゃない。体の柔らかい部分は小さな虫に食いつくされでもしたか骨しか残っていない。死んでからかなりの月日が経っている。もしかすると年単位かもしれない。


(でも、だとするとあの大量のディーグアントはどこから来たの?)


 正確に数えたわけではないが、ティーセが倒したディーグアントは千はくだらないはずだ。


 繁殖を一手に担う女王無しでどうやってそこまで増えたというのか。


(そもそもどうして女王は死んだ?)


 頭と腹に穿たれた穴から自然死ということはない。誰かに殺されたのだ。


(誰が?)


 押し寄せるディーグアントを蹴散らし女王を殺せるモノ。


 魔物か人間か。


 魔物ならたぶんドラゴン。だが違う。ドラゴンなら女王を食い散らかしている。こんなに綺麗な姿で残っているのはおかしい。よく見れば、素材として使えそうな部位は剥ぎ取られている。


 間違いなく、これをやったのは人間だ。


 人間ならーー誰がいる?


 ソーントーンでも流石に無理だろう。ワーカーならいくらでも蹴散らせるだろうが、ソルジャー相手に戦い続けることは難しい。


 他の八星騎士や知る限りの傭兵の顔を思い浮かべるがいずれも不可能に思えた。大群の前に女王のもとに到達することさえできないだろう。


 ふと、この島に罪人として送られた元ハ星騎士と次席宮廷魔術師を思いだした。


 全盛期の彼らなら可能かもしれない。話に聞く彼らーー特にオーソンは無敵だったという。だがーー


「……」


 そこまで考えて、ティーセの意識は遠くなっていく。


 いつのまにか、辺りは元の暗闇に包まれていた。妖精剣が発する光が消えている。


 ティーセはゆっくりとまぶたを閉じた。なぜか痛みはなくなっていたが、ひどく寒い。大量の血を流しているからだろうか。


 既にポーションはなく、あったとしてもどうしようもない。致命的なダメージを受けているかことは自覚していた。


 こうなるとポーションも治癒魔術も意味をなさない。


 昔、兄の一人が狩の途中、魔物の突進を受け、今のティーセと同じような状態になった。"再生"も使える一流の治癒魔術師も随行していたにもかかわらず、兄は命を落としたのだ。


 ティーセが助かる道理はない。自分はここで死ぬ。


 その事実にティーセは安堵を覚えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ