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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
50/440

32 蟻の巣穴にて1

「「「ギチギチギチギチ!」」」


 ディーグアントソルジャーの大群が、大顎を打ち鳴らし威嚇する。その音は巣穴の壁に反響し、耳と頭がおかしくなりそうだ。


「フッ!」


 ティーセは全身を外骨格で覆われたソルジャーの体を妖精剣アドリアナでバターのように斬り裂いていく。


 無視して、女王のところまで飛んでいきたいところだがソルジャーは働き蟻(ワーカー)の倍以上ある体で通路にひしめき、避けて通る隙間をティーセに与えてくれない。


 おまけに大顎の打ち鳴らしには仲間を呼び寄せる効果があるらしく、穴の四方八方からソルジャーやワーカーが飛び出してくる。


(邪魔!)


 結果、一匹ずつ斬り捨てて前進していくしかない。


 巣穴に侵入しておよそ二刻。女王の元へは遅々として進まなかった。


 いや、そもそも本当に女王の元へ進んでいるのかティーセにはわからない。


 巣穴は迷宮のように複雑に入り組みもはや入口さえもどこにあるかわからなくなっている。


(やはり無謀だったかしら?)


 一瞬、後悔の念が頭をよぎる。


「ーー」


 だが、ティーセはそれを振り払うようにソルジャーの四本の腕をかいくぐり頭部を斬り裂いた。


(余計なことを考えては駄目! 止まったら終わる! 動き続けるのよ!)


 そう自分を叱咤する。


 実際に動きを止めれば、八方から押し寄せる鎌のような蟻の腕がティーセの体をずたずたに切り裂くことだろう。


 絶望的な状況の中、遂にティーセは前方のソルジャーを片付け、広い空間に出る。


 ティーセは天井に向かって飛び、女王の姿を探した。地中奥深く、太陽の光は当然のごとく届いていないが、『妖精飛行』スキルの身体能力向上効果は闇を見通す眼をティーセに与えている。


(……いない。というか、またここ)


 先ほどまで押し通った巣穴の壁は茶色だったが、この大部屋は白い何かでびっしり覆われている。


 最初、ディーグアントの卵かと思ったが植物のようだった。


 ティーセはこのような大部屋に何度も遭遇し、女王の不在を悟って失望を繰り返している。


 ここが何の部屋かはわからないが、ソルジャーが守っていたということは蟻たちにとっては重要な部屋なのだろうか。


 いずれにしろ一息つけるのはありがたい。


 ティーセは蟻の腕が届かない中空でポーションを取り出し口に含む。効果はたちまち発揮され、巣穴に飛び込む前の体力が戻った。


(さて、どうするか)


 ポーションの残りは一本。


 この大部屋の出入口は一つだけ。ということは先ほど通ってきた道を引き返す必要があるのだが、出入口の周辺はティーセを逃がさないとばかりに蟻が密集している。


 "アドリアナの天撃"で一網打尽にできるチャンスだが、羽を消費すべきか。それとも体力を消費して斬り進むべきか。


 ティーセの決断は早かった。

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