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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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31 贖罪の王女6

 王国宰相コーの意向を受け、一の村の防衛長となるようにティーセを誘導したソーントーンにとって一つ誤算があったとすれば、予想以上にティーセが傭兵ギルドに()()()()()()という点だろう。


 ソーントーンの思惑は、ティーセがディーグアントの襲撃を何度か撃退した後、無意味を悟り、失意の中、王宮に戻るというものだ。


 いくら撃退しても蟻は無限に湧いてくる。獣人たちは多くが終わりなき戦いに絶望し、自ら命を絶つ者もいる。彼らの絶望がティーセに感染するのは時間の問題と思えた。


 ソーントーンの見込みでは、短くて三カ月、長くて半年と見ている。それだけの期間、ティーセを島に留めればコーも納得するだろう。


 だが、ソーントーンはティーセを見損なっていた。


 王都の傭兵ギルドは、ティーセという有望な新人に二つのことを徹底的に教え込んでいた。


 まず一つは決して諦めないこと。そして、もう一つは情報収集である。


(一人で敵陣に乗り込むなんて姉さんたちに知られたら、叱られるだけじゃすまないわね)


 北の森に入って三日。ティーセの目の前にはディーグアントの巣と思える穴がある。


 上空からの探索では木々が邪魔して見つけられず、"姉"の一人に仕込まれたレンジャー技能を駆使して蟻たちが通った道を辿り、ようやく見つけたのだ。


 ティーセは島を訪れる前にディーグアントについて出来る限りの情報を集めていた。


 竜大陸という暗黒大陸にのみ生息する魔物であるため得られた情報は少ないが、その情報の中にディーグアントという魔物は女王を頂点とした社会性の魔物というものがあった。


 女王が繁殖を一手に担い、兵隊蟻が女王と卵を守る。そして、働き蟻が女王の繁殖に必要な魔力を持つ生き物を狩る。


 村を襲ってきたディーグアントは働き蟻だ。女王と兵隊は巣から出ることは、ほとんど無いという。


 ティーセは女王を殺すことに決めた。


 女王を殺せばディーグアントを活動を止めるかは、わからない。だが、増えることは止められる。


 ティーセは『妖精飛行』スキルを発動させた。


 背中に六枚の透明な羽が顕現する。そのうちの一枚は半分ほどしか無い。三日前に放った<アドリアナの天撃>、その際に消費した羽の一枚が、まだ回復しきっていないのだ。この状態の羽では<アドリアナの天撃>は撃てない。


(でも、まだ最大で五回撃てる)


 実際はバフの効果が落ちるのでバカスカ撃てるものではない。だが最悪、すべて撃ったとしてもティーセに戻る気はなかった。


(身内がしでかした不始末の責任は私がとる)


 悲愴な覚悟を固め、ティーセは巣穴へと潜っていった。

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