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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷

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24 ソーントーン伯爵7

 リーは『危機感知』スキルを一旦、解除し目の前のソーントーンにスキルの力を集中させた。


 通常の『危機感知』スキルは、常時発動するパッシブ型スキルだ。


 だが、リーは修行によって『危機感知』の対象を任意に選択できるようになった。


 これにより漠然としか感じられない危機感知の精度を数十倍にも高められる。


 選択した対象以外からもたらされる危機は感知できなくなるというデメリットはあるが、一対一の戦いならまず負けることはない。


 この際、シャーダルクは無視することにした。


 シャーダルクから見れば、いきなり二人が理由もなく斬り合いを始めたとしか思えず、いまだこの状況に戸惑い介入してくる気配がない。


 ソーントーンもシャーダルクに加勢を求める気はなさそうだった。


(なめられてんのかね)


 シャーダルクの助けを借りずとも元傭兵など一人で切り捨てられるーーそう思われているなら心外だ。


 自身の剣は正規の騎士にも負けていない。


 それを証明すべくリーは自分からソーントーンに仕掛けた。


 キン!


 当然のように受け止めるソーントーン。


 お返しとばかりに、あの急所をねらった三連撃がくる。


 たが、今のリーには目をつぶっていても剣の軌道がわかる。


 余裕でかわし、ソーントーンの胴を薙いだ。


 キン!


 これも受け止められる。


(!?)


 だが、その動きに違和感を覚えた。


(なんだ? 何か変だ)


 その違和感の正体を考える暇も与えないかのように、ソーントーンが猛烈に斬撃を加えてくる。


 キン! ガギン!


 十数合の打ち合いの果て、鍔迫り合いになる。


 力比べで押し合いになり、自然と顔が近づく。


 リーの顔は汗に塗れ、ソーントーンは平然としている。


 いくら剣の軌道がわかるとはいえ、地力の違う相手の攻撃を何度も受け止めるのは骨が折れた。


(くっ! まずいな)


 体力が削られている。おまけに先程、ソーントーンの剣を受けた足が痛み始めた。


 この状態ではいくら剣の軌道がわかっても、ソーントーンの剣を受け止め続けることはできない。


 腰のポーチからポーションを取り出したいところだが、あのソーントーンがそんな隙を与えてくれるだろうか。


(!)


 鍔迫り合いの最中、気づいた。


 ソーントーンの目線はリーではなく、リーの剣を見ている。


(まずい! 奴の狙いはーー)


 慌てて剣を引くリー。


 すかさずソーントーンは両手で大上段から振り下ろした。


 リーは剣で受け止めるしかなかった。それが悪手だとわかっていても。


 ガギン!


 リーの剣が鈍い音を立てて中ほどから折れた。


 さらにソーントーンは振り下ろした剣を今度は振り上げた。


 リーの『危機感知』は発動していない。ということは狙いはーー


 ザシュ!


 リーのウェストポーチが中身のポーションごと切り裂かれた。


(やられた!)


 汗に塗れた顔を青くするリー。


「ふむ。やはりか。貴殿の『危機感知』スキルは貴殿の装備品には効果がないようだな」


 ソーントーンはただ事実確認するかのような平坦な声で告げる。


 違和感の正体はこれだった。ソーントーンはリー自身を狙うように見せて、その実、すべてリーの剣身の一箇所に斬撃を集中させていた。


「狙いは武器破壊だったわけかよ」


 サイドアームの短剣を構えるリー。息を整える時間が欲しく、半ば返事を期待せず聞いてみた。


「貴殿は一流の剣士だ。その上、スキルまで使われては勝つことは難しい」


 意外にもソーントーンは返答してきた。


「へっ! あの名高き伯爵にお誉めいただけるとは感激だね」


「皮肉ではない。私は貴殿を高く評価している。戦闘用スキルを持った者の大半は、スキルに頼りきり自身の研鑽を疎かにしがちだ。だが、貴殿はスキルも剣も鍛え続けている。その姿勢は好ましい」


「その両方をたった今、破られた身としてはやっぱり皮肉にしか聞こえんがね」


「……」


 ソーントーンの殺気が膨れ上がる。


 おしゃべりの時間は終わりということだろう。


「ま、待て! ソーントーン! 何をする気だ!? まさか、殺す気か!? それは困るぞ!」


 シャーダルクが部屋の隅にで喚く。


 だが、ソーントーンは


「これ以上の問答は無用」


 床を蹴ってリーに肉迫する。


(あの三連撃がくる!)


 眉間を狙った突きは体を捻ってかわした。


 首への攻撃は短剣で逸らす。


 だが、心臓への突き込みはもはや回避も防御も不可能だった。


 ソーントーンの剣先がリーの胸に吸い込まれようとした、まさにその瞬間ーー


「ソーントーン!!」


 部屋にティーセの怒り声が響いた。

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