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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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21 ソーントーン伯爵4

「トラップ型魔方陣の進捗具合はいかがでしょうか?」


 ソーントーンはコーに尋ねた。


 年々、二つの村に襲撃をかけるディーグアントの規模が大きくなっている。回数も右肩上がりだ。


 いずれ農奴や傭兵だけでは対処できなくなる。


 そう考えたソーントーンはコーを通してシャーダルクに、設置しておくだけで所定の位置に入った蟻を自動的に攻撃、殲滅する魔方陣の開発を依頼していた。


 これが完成すれば農奴に竜哮草を食わせて戦わせるなんて非効率ことをしなくても済む。


 農奴を無限に供給できるわけもなく、傭兵も金がかかるのだ。


「せっついてはいるのだが、シャーダルクのあの様子ではな」


 開発の遅れはコーにとっても忸怩たる思いだろう。


 コーがこの政策に賛同したのはアシュターにただ迎合したからというわけではない。コーにはコーで別の思惑がある。その一つが魔石の安定供給だった。


 魔石は魔道具やポーション作製など様々な用途に使える。


 だが魔石は魔物からしか取れない上に、ある一定以上の大きさでなければ使いものにならない。


 そこらのゴブリン程度の魔石では魔道具にもポーションにもできないのだ。


 その点、ディーグアントの魔石は優良だった。


 コーの部屋を辞し、広大な廊下を歩きながらソーントーンはブロランカのことを思う。


 あの島の実験農場は様々な人間の、様々な思惑が複雑に絡み合った集大成だった。


 もはや、この政策を止めることはできない。


 そう、ソーントーンはこの政策を止めたかった。


 初めてこの政策を聞かされた時、嫌な予感がした。その思いは薄まるどころか年々強くなっている。


 だが何が問題かと言われても明確に説明できない。ゆえに与えられた仕事を粛々とこなすしかない。王国と自身の家のために。


「ソーントーン!」


 後ろから誰かに呼び止められた。


 振り返ると、シャーダルクが大股で歩み寄ってくるところだった。


 自分が言うのもなんだが顔色が悪い。眠れていないのかもしれない。目の下のクマが酷かった。


「ソーントーン!」


 シャーダルクが再び自分の名を呼んだ。


 本来、呼び捨てにされるほど身分の開きはないが、ソーントーンはスルーすることにした。


「何か御用ですか?」


 ソーントーンはシャーダルクとシャーダルクの後ろにいる男ーー最も新しい八星騎士"剣静"リーを見る。


 リーは肩を竦めただけだが、その顔には倦怠感がわずかに浮かんでいた。


 彼が八星騎士に任じられたのは二ヶ月前の武闘会でのことだ。


 リーは思うところがあり、傭兵稼業をやめて自身と己のスキルを鍛え直した。


 その修行の成果を見るため、リーは武闘会に参加する。すべての試合に目隠しをして。


 リーは決勝まで勝ち上がり、決勝の相手ーー八星騎士"千突"のサザンと戦った。


『分体』スキルを駆使したサザンの槍の乱れ突き、それさえもリーは目隠しですべてかわして見せて勝利したのだ。


 その場でジョセフに八星騎士に任じられたリーの顔は誇らしげであったが、今は見る影もない。


(これは時間の問題か)


 リーが宮仕えに嫌気がさして、いずれ王宮を出て行くだろうと思えた。


それを羨ましいと思わなくもないソーントーン。


王宮へ『転移』できるソーントーンが出奔など決して許されることではない。


王宮は物理的、魔法的に幾重にも守られ、部外者を無断で立ち入らせることはーーソーントーンを除いてーー不可能だった。

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