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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
四章 オルトメイアの背徳者
388/442

90 傾国の美姫 2

●ユリヤ・シユエ

 シユエ公国の第一公女。スキルは【完全記憶】。月末試験の実技において第四位。総合第四位。グレアム曰く、『ヒューストームに匹敵する大魔術師』。見た目はジャ〇・ザ・ハット。


●ジョスリーヌ・ペタン

 ユリヤの付き人。侯爵令嬢でユリヤの年上の親友。


●ヒューストーム=ハーバード

 元王国宮廷魔術師。【大魔導】スキルを持つ。医療魔術の使い手。


●デオ

 大司教の甥。ユリヤの昔馴染みでジョスリーヌの主治療術師。"神霊術"の使い手。

※ユリヤ視点


―― Mルート シユエ公国 ――


 ▽月◇日


 入浴をすまして就寝直前になっても心のざわめきがおさまらない。

 日記を書く指が震える。

 今夜は眠れるだろうか。


 私には三人の昔馴染がいる。


 大司教様の甥のデオ。

 宰相閣下の息子のサム。

 騎士団長殿の弟のダット。


 小さいころからの顔馴染みで、ジョスリーヌの次に仲のいい友人たちだ。その三人があろうことか、ヒューストーム先生を追放するように父に進言したのだ。しかもあろうことか公衆の面前で先生を罵倒して。


 だめだ。思い出すたびに新たな怒りが湧いてくる。

 とりあえず三人との会話を記すことにする。


「あのヒューストーム=ハーバードはもとは王国の宮廷魔術師とのこと!」

「それが何だと言うのです? それをわかっていて亡命を受け入れたのでしょう?」

「姫! ご存知でしょうが、王国はかの"勇者王"によって簒奪されました! その勇者王の師が、ヒューストームなのです! これは王国を裏切ったに等しい!」

「王位は一滴の血も流すことなく、勇者王に禅譲されたと聞いています。公国の者が王国の政体に口を出す筋合いはありません」

「ですが姫! ヒューストームは勇者王に厚遇されていたと聞きます! にもかかわらず、勇者王が帝国遠征中の亡命! なにやらよからぬ企みをもっているとしか思えません!」

「先生がこの公国を陥れるために亡命を偽装したと」

「帝国はもはや青息吐息! 帝国が滅んだ後、勇者王の食指の伸ばし先が聖国とこの公国であることは自明の理!」

「ばかばかしい! ヒューストーム先生のような逸材を、敵国の破壊工作のためだけに送り込むほど勇者王は愚かだというのですか! そんな愚か者に王国は跪き、帝国は屈服しようとしているというのですか!」

「姫! どうか目をお覚まし下さい!」

「目を覚ますのはあなたたちです! 特にサム! あなたも魔術師ならば先生の薫陶を受けるべきです!」

「下賤な者から受けるべきものなどありません!」

「なっ――!」


 ここで父王と宰相閣下の制止が入った。これ以上は感情的な罵り合いになると思われたのだろう。

 幸いお二人はデオ達の進言を取り入れる気はなさそうだった。

 当然だろう。先生一人、敵地に送りこむなど不合理極まりない。


 "三人は嫉妬したのよ。あなたと先生、最近、ずっとべったりだったから"とはジョスリーヌの言だ。


 意味がわからない。先生と私が男女の仲にでもなると三人は思っているのだろうか。

 私の体は私だけのものではない。

 私はいずれ公国のために嫁ぐ身だ。

 公国は天然の要害の地にあるとはいえ、大国に囲まれている。

 民の平穏がいつ脅かされるか知れたものではない。

 その平穏を守るためなら、たとえどんな存在にでも身を任せるつもりだ。

 彼らの好意には気付いていたが、私は自由な恋愛を楽しめる立場ではない。

 そのことを昔馴染の三人もわかってくれていると思っていたのに……。



 ◎月▲日


 デオは各地の巡回、

 サムは地方の魔術局で魔道具の作成任務、

 ダットは帝国との国境にある要塞への出向を、それぞれ命じられた。



 ■月●日


 先生 と ジョスリーヌ が




 城の  お堀に   




 浮いていた。

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