表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
38/440

20 ソーントーン伯爵3

「機を誤ったな、ソーントーン。最近の陛下は機嫌が悪いのだ」


 帝国宰相コーは、そう言ってソーントーンを慰めた。


 ジョセフの後はコーへの実務的な報告である。


 ブロランカの実験農場についての近況を語った後、ジョセフとの会談を聞かれ、天龍皇の名を冠した政策名の件をコーに報告したのだ。


「理由はやはりティーセ王女の件ですか?」


「まさか。陛下にとって王女が王宮からいなくなるのは気分を害するどころか――」


 逆にジョセフの機嫌を良くする、コーは語尾を濁したがそう言いたいのだろう。


 ジョセフはどこか遠隔地にティーセを嫁にやろうと画策したが、コーと王国軍元帥レイナルドが反対した。


 ティーセの軍事的価値は大きい。おいそれと嫁に出せる存在ではなくなっていた。


「とにかく、陛下は王女に複雑な感情とお持ちだ。少し距離を置いたほうがいいだろう。しばらく、王女をブロランカに置いておいてくれ」


 ソーントーンは面倒なことを頼まれたと思う。


 自らの権勢を拡大することに汲々とする貴族が多い中、ソーントーンは野心を見せたことがない。実際にその気もない。


 だからこそコーはソーントーンに任せるのだが、こうなるならば少しくらいは野心を持っておくべきだったかと後悔を覚えないでもない。


「……承知しました」


「ふむ。名前の件は私からも陛下に口添えしておこう。陛下の機嫌が直った後の話だが」


「感謝いたします。……陛下の御心を乱す問題でも?」


 ブロランカ実験農場の本土導入は近い。必然的に実行責任者であるソーントーンが王宮に呼び出され、ジョセフと会談する機会は多くなる。


 ジョセフの機嫌を損なっている原因を知っておくことに損は無いはずだった。


「歳入不足でな。銀貨の純度を下げることが決まったのだよ」


 そう言ってコーはため息を吐く。


 それはコーにとっても頭の痛い問題だろう。他国から食糧を輸入するにも王国銀貨の価値が下がれば下がった分の銀貨を余計に必要とする。


 ジョセフにとっては自分の王国の価値が不当に貶められたと感じているのだろう。


「側室が三十人もいれば銀貨の価値が下がるのも当たり前――口さがない者がそう言って笑っているという話を聞いて、ますます陛下の機嫌は麗しくないというわけだ」


 王国銀貨には正妃の顔が彫られている。


 市井の者も、なかなかうまいことを言うじゃないか。


 口の端が上がりそうになるのを堪えるソーントーンだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 銀本位制で、通貨の銀の含有量が変わらないのに 価値だけを変えることが仮にできたなら 王国のみならず帝国・聖国の経済は混乱するのでは 魔術かなにかで鋳潰せないようになっている?
2020/08/04 11:30 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ