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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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19 ソーントーン伯爵2

「ティーセ王女殿下を王宮に連れ戻せばよろしいのですね」


 ソーントーンは、その陰気な顔をさらに暗くした。


 帰れと言って素直に聞き入れる少女ではない。未来の苦労が想像できた。


 しかしーー


「放っておけ」


 意外にもジョセフの答えは放置であった。


「……よろしいので?」


「蟻退治をしたいというなら好きにやらせておけ。何なら一生、島にいても構わん」


 いくら嫌っているとはいえ、父親とは思えぬ冷たい言葉だった。


 実はジョセフはティーセを恐れているのだという噂がある。


 妖精と敵対し妖精を怒らせた権力者が、最後は悲惨な目にあう。


 そんな説話は枚挙に暇がない。


(まさか、そんなお伽話を真に受けているのか? しかも王女は単に妖精系スキルを持っているだけで妖精ではないんだぞ)


 ジョセフへの侮蔑の感情が表に出ないように努めるソーントーン。


 これ以上、ティーセの話題は自身の保身のために避けた方がいいだろう。


 幸いにもジョセフ自身が話題を変えてくれた。


「そんなことよりも、名は決めたのか?」


 ディーグアントを利用した魔物掃討政策ーー七年前、首席宮廷魔術師シャーダルクより提案されたこの政策は、五年以上に渡るブロランカ島での実験を経て、いよいよ本土で導入されることとなった。


 その際、ジョセフは自分の名で大々的に内外に発表するつもりであったが、「ディーグアント〜」では味気ないと考え、華美で壮大な名前をつけるように計画の実行責任者であるソーントーンに要求してきたのだ。


 正直、どうでもいいと思わないでもないソーントーンであったが、宮仕えの身として無視するわけにもいかない。家令からも意見をもらいどうにか政策名を捻り出してきた。


「"天龍皇の回帰"というのはどうでしょうか?」


 天龍皇によって心無き神が倒され、世界は魔物たちから人間の手に戻された。


 その神話に因んだものだ。


 我ながら良い名だと思う。だが、ジョセフは気にいらなかったようだ。


 色々、理由をつけていたが要するに、


 "天龍皇の名を出せばジョセフの名が霞む"


 ソーントーンは再考を約して、ジョセフの部屋から辞した。


 虚無感だけが残った。

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