52 三文聖1
肘が痛いため今回は短いです。
MRI検査によれば、炎症を起こして水が溜まっているとか。
症状が治まるまで更新はひかえさせてください。
―― エリュシオン中央管制室 ―-
縦に細長い巨大な水槽、その前に白衣を着た男がいた。水槽に収められた人の頭ほどもある魔石、それを真剣な目で見つめ、時折、笑みを浮かべながら手元のボードに何かを書きつけていく。
何かを観察し研究する。この男にとって、それは至福の時間である。
だが、その幸せを壊す騒音が室外から響いてきた。
「「博士博士~」」
「……どうしました? ネオ、オル」
バタバタと騒がしく部屋に飛び込んできた二人の少女。その外見は瓜二つ。男のそれよりも袖と丈を短くした白衣を身に着けていた。
「「お客様で~す」」
「おや、これは珍しい。"聖者"様と"聖人"様がそろって何用で?」
(うわぁ~。"三文聖"がそろい踏みだよ)
(眼福、眼福~)
少し離れた場所で三人の枢機卿を見つめる双子の少女。
彼女達が「博士」と呼んだ白衣の男が"聖賢"ヴァイセ。
長髪で僧衣姿の美丈夫が"聖者"ガイスト。
そして白のシャツに黒のズボンと上着に鍔付き帽子を被る男が"聖人"シャルフである。
彼らは文官を管理・統括する立場から"三文聖"と呼ばれている。ただし、彼ら自身がまったく戦えないというわけではない。特にガイストはその見目麗しい容姿に反して武闘派である。
「貴様が城の文官に出した指令についてだ。聖国の中枢を一時的にオルトメイアに移すとはどういうことだ」
ガイストは不満気だった。
「勝手なことをする。何か考えがあるにしろ、あのお方に奏上すべきであろう」
そう詰問されてもヴァイセに悪びれた様子はない。
「あのお方は今、あれでしょう? まともに話を聞いてもらえるとは思えません」
「そうであっても、せめて我々に一言あっても良かったのではないか?」
六人の枢機卿に順位はない。とある至上の目的のために共に邁進する同志である。"聖賢"の名に相応しい知性は、かの"大賢者"ヒューストームすら凌駕するとガイストは信じている。ゆえにヴァイセの指示に疑問を感じれど撤回することはない。ただ、その理由を知るべきだと思った。
「ああ。それはすみません。急いだほうがよいかと思ったので」
「"聖賢"殿がそれほど危機感を覚える事態ってのは何だい?」と黒服のシャルフは興味深そうに訊ねた。
「16%です」
「何がだ?」
「グレアム・バーミリンガーによって、聖都がメテオ攻撃される確率ですよ」