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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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15  贖罪の王女2

 シュパ!


 妖精剣アドリアナが小気味良い音を立て、ディーグアントの体を外骨格ごと両断した。


 この妖精剣は物理的な防御を無視する。おまけに『妖精飛行』スキルの追加効果によりティーセの力は向上している。ディーグアントを紙のように切り捨てるのは容易だった。


 シュ! ザシュ! パシュ!


 ティーセの腕が振るわれるたびにディーグアントの屍が積み上がっていく。


 蟻たちも反撃を試みるがティーセは一瞬たりとも一つ所に止まらない。


『妖精飛行』スキルを駆使し暗闇の中、縦横無尽に飛び回るその姿はまるで川辺を乱舞するホタルのようだった。


 王都から一昼夜かけ飛び、ブロランカ島の上空に着いたのは深夜遅くになってからだ。


 地上では松明が煌めき、人が叫んでいる。今、まさに村がディーグアントに襲われている最中だった。


 位置的に一の村と思えた。島の隘路の大陸側にある村が一の村、山を挟んだ向こう側に二の村があると情報を得ている。


 "人が魔物に襲われている!"


 そう認識したティーセは頭に血が上り、ディーグアントの群れの真ん中に降り立った。


 剣を振れば当たるを幸いに蟻をなぎ払っていく。


 だがーー


「どれだけいるのよ!」


 いくら切っても蟻の数が減らない。暗闇の向こう側から無限に湧き出てくるかのようだった。


「うわぁー!!」


 村人が絶望の叫びを上げる。


 見ると土嚢の一部が崩され、そこから蟻たちが次々と侵入していくところだった。


(しまった!)


 ティーセは一息に村まで飛ぶ。


 土嚢と防御柵は二重となっている。その一つ目が破られただけだ。村人の多くは二つ目の土嚢と防御柵の内側に退避していたが逃げ遅れた人間が何人かいる。


 ディーグアントは既に事切れた遺骸を奪いあうようにその血と肉をすすっていた。


 すると、蟻が拘束系の魔術を受けたかのように次々と動きを止める。


(これが竜哮草の効果!?)


 動きを止めた蟻に村人が防御柵の内側から槍を突き立てていく。


 槍が届かない蟻には矢と石がその頭にぶつけられた。


 見る間に蟻の死骸が積み重なっていく。


 だが、いかんせん数が多すぎる。


 二番目の防御柵も、今にも破られそうになっていた。


(ならば!)


 ティーセは再び飛び上がり、二番目の防御柵の内側に降り立った。


 そこは村の中で二番目の防御柵が破られれば蟻を阻むものがない。


 いや、よく目をこらせば村の奥に石造りの建物が見える。左右に広く壁が築かれた砦のようだった。


「みんな! あの砦に逃げて!」


「何者だ!?」


 頭に獣の耳を生やした男が誰何する。王国では珍しい狼の獣人だった。


「私はティ、……傭兵ルイーセよ!」


「人間の傭兵が何しにきた!」


「決まってるでしょ! 魔物を倒してあなたたちを救うためにきたのよ! それよりもあの砦に! ここはもう持たないわ!」


「あそこに入れるのは人間の傭兵と俺たちの家族だけだ! 俺たちはここで蟻どもを食い止めなきゃならん! そう命令されて逆らうことができんのだ! 家族を人質にとられてるからな!」


「なっ!?」


 狼獣人からもたらされた情報にティーセは絶句する。


 よく見れば戦っているのは狼獣人のような亜人ばかりだった。


(ソーントーン! あの亜人差別主義者! 亜人ならいくら死んでも構わないってわけね!)


 ティーセは怒りに剣を握る手を震わせた。


 王国で亜人排斥主義を掲げる人間は少なくない。特に王侯貴族や裕福な商人にその傾向が多い。ソーントーンもその例に漏れなかったようだ。

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