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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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3 一夜明け

 ディーグアントとの戦いの翌朝、グレアムは焼け焦げた蟻の死体の始末をしていた。


 空堀から蟻を引き上げ台車に載せ、ある程度、積み上がったら島中央にある屋敷に運ぶ。そこで蟻を解体し港から本土に運ぶ。


 大抵の魔物はどこかしら素材として活用でき、ディーグアントも、その例に漏れない。


 だが、魔物からの素材採取は副業のようなもので、この島ーーブロランカの主な産業は農業である。


 王国の未来をかけ、極めて重要で実験的な試みをしているーーグレアムはこの島に来る前と来た直後に、そう説明された。


 まぁ、もっとも、どう説明されたとしても犯罪奴隷のグレアムに選択肢などなかったのだが。


 とにかく、グレアムのこの島での仕事は農夫である。


 表向きは。


 ◇


「ひでぇな。バラバラじゃねぇか」


 空堀の底で作業しているグレアムに軽鎧の男が話しかけた。


「こいつらの外骨格、いい防具になるんだぜ」


「どうも、エイグさん」


 グレアムは努めて無感情に挨拶した。


 エイグはこの島の防衛隊長だ。王国に雇われた傭兵団の団長でもある。


 本来、魔物と戦うべきは彼ら傭兵の役目なのだが。


「ずいぶん、遅かったですね」


「いや〜、すまん、すまん」


 口で謝りつつも、まるで悪びれた様子はないエイグ。


「一の方にも蟻どもが押し寄せてきてな。ここにまで手が回せなかったんだ」


 前半は本当だが、後半は嘘だ。


 昨夜、二の村から離れた場所で傭兵団が様子を見ていたことはわかっている。


 いつものように。


「そうですか。それは大変でしたね」


「ああ、大変だったよ」


 グレアムとエイグの間にピリピリした空気が走る。


 グレアムと一緒に作業していた子供たちは恐れて離れていった。


「それで何か御用ですか?」


「ああ、伯爵が呼んでいる」


「私を?」


 エイグは頭を振って肯定の意を返す。


「オーソンとヒューストームでなく?」


「もうバレてんだよ。ここのリーダーがあいつらじゃなく、お前だってな」


「……そうですか」


 別に隠していたわけではない。もともと村に役職はない。グレアムたちの上に奴隷頭はいたが、彼らが村に来るのは農作業の指示をする時だけだ。


 年長者のヒューストームはリーダーのような立場を面倒がり、オーソンは自身の体を理由にグレアムに従う姿勢を示している。


 結果的にそうなっただけである。


 ただ、伯爵の呼び出しには面倒ごとの予感がした。


 ヒューストームかオーソンに変わってもらいたい気もしたが、そうはいくまい。


 面倒ごとは()()の阻害要因になる可能性がある。


 また聴きするよりも自身の目と耳で判断した方がいい。


 それが計画立案者の責任だとグレアムは思っている。


「エイグさんは、それだけを伝えに? わざわざありがとうございます」


「なに、防衛隊長として村の被害を確認しておきたかったからな。ついでだ」


「そうですか。おかげ様で被害はありませんでした」


「そのようだな。……()()爆発はヒューストームが? 」


「他にないでしょう」


「そうか。魔力をほとんど封じられていて、ロクな魔法も使えないと聞いていたんだがな」


「そこは、流石は王国の次席宮廷魔術師としか言いようがありませんね」


「そういや、素行が悪くなけりゃ首席も夢じゃなかったとも聞いたな」


「確かに酒好きですが、ヒューストームの素行は悪くありませんよ。首席になれなかったのは興味が無かっただけです」


 そんなグレアムの師への擁護もエイグには響かなかったらしい。用事は済んだとばかりに肩をすくめて立ち去った。

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