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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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142 サンドボックス18

「私がヒューストームと叔母上の子? それでは私は一体、なんの為に……」


 茫然自失とするシャーダルク。


 グレアムは不味かったかなと思いつつも、

(まあ、いいか)とも思う。


 別にヒューストームから口止めされているわけでもない。シャーダルクも子供がいる歳である。自分の出生を知っても問題なかろう。


 それよりも、グレアムは今後のことを考えなくてはならない。


 グレアムはシャーダルクを置いて部屋を出る。


 今、グレアムがいるこの外朝から内廷に行くにはあらゆるものの侵入を阻む無限回廊を抜ける必要がある。


 当初の予定では内廷までソーントーンに引っ付いて行くはずだったが、シャーダルクを助けるために残ったのだ。プランを変える必要がある。


 グレアムはオーソンと連絡を取ろうとして、思い止まる。


(予定通りだと、オーソンはアリダ嬢と再会している頃か……。もし、うまくいっていたら今、連絡するのは野暮か?)


 久々の逢瀬に、どこかの連れ込み宿で盛り上がっている最中かもしれない。邪魔をして、部下のパートナーに悪印象を持たれるのは避けたいところではある。


(ええい! ままよ!)


 グレアムは懸念を押し殺しオーソンに連絡する。すると、すぐに応答があった。


(オーソン。今、いいか?)


『ああ、正直、連絡してくれて助かった』


(助かった?)


 どうやら懸念していた事態にはなっていないようで安心したが、助かったとはどういうことだろう。


(オーソン、今、何してるんだ?)


『アリダに正座させられている』


 オーソン曰く、アリダの幸せのために自分は身を引こうというオーソンの発言がアリダの怒りを買ったらしい。


 アリダは七年の歳月をオーソンが迎えに来ることを信じて待っていたのだ。であるのに、あの発言である。オーソンは私を信じていなかったのかと。アリダが怒っても仕方がない。


(あー、それは誠心誠意謝るしかないな)


 何だかダグネル家の今後の上下関係が推察できた気がした。


『で、何かあったのか? 予定では連絡はもう少し後のはずだろう?』


(不測の事態が起きた。詳細は省くが、()便()な方法は使えなくなった)


『ということは』


(ああ、力押しでいく。例のものの準備を頼む)


『了解!』


 この世界の海には、元の世界にはない超希少金属も水に溶けて漂っている。ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンだ。


 フォレストスライムを使って海水から分離・抽出したそれらのうち、ミスリルは多くをペル=エーリンクに売ったが、アダマンタイトとオリハルコンはこういう事態を想定して、例のものを作るために温存していたのである。


 グレアムは急ぎ足で内廷に向かう。大凡の方向はソーントーンにつけたスライムが教えてくれる。


 だが――


「迷った」


 王城が広すぎるのである。南北に1000メイル、東西に800メイル、部屋数は大小合わせて一万弱というのだから迷うのも無理はない。


 どうしたものかと悩んでいると――


「何もんだ?」


 槍を持った若い兵士に声をかけられた。


「ああ、すみません。内廷にはどういけばいいのでしょうか?」


「それなら、左の階段を降りた後、右の廊下を真っ直ぐにいけばいい」


「……ありがとうございます。助かりました」


「待てや」


 頭を下げて去ろうとするグレアムを兵士が呼び止める。


「何もんだと聞いている」


「いえいえ、名乗るほどの者では――」


 ヒュン!


 兵士の槍が空をきる。


 グレアムは顔に突き出された槍をバック転で躱した。


「……物騒だな。俺が他国の使者とかだったらどうすんだ?」


 完全に躱しきれず、頬から流れる血を指先で拭う。


「そんなに殺気を撒き散らして何言ってやがる。ちなみにさっきの道順は嘘だ」


「だろうな。内廷とは真逆の方向だ」


「暗殺者か? ガキとはいえ、容赦はしねぇ」


 油断なく槍を構える若い兵士。


「その予定だったんたがな。やはり真正面からぶち殺すことにした」


 グレアムは亜空間から二丁の魔銃を取り出す。二の村住民に支給しているものに比べ、銃身は短く、銃床もほとんどない。


 地球世界の銃の知識があれば、それはソードオフ・ショットガンと呼ばれる物に似ていると思えただろう。


「ほう。誰をだ?」


「決まっている。この国の元首、ジョセフ・ジルフ・オクタヴィオだ」


 グレアムの立てた三つの計画。

 島からの脱出。

 獣人の救出。

 そして、ジョセフの抹殺である。

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