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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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137 サンドボックス13

 グワン、グワン。


 グスタブ=ソーントーンの頭の中で鐘のような音が響く。


「……であるからして……」


 見渡せば謁見の間。いつの間にここに来たのか、問われるまま何かを喋ったような気もするが、何を話したのかもグスタブには覚えがない。


 いつもよりやけに広く感じられるのは、普段なら謁見の間の両端に並ぶ貴族がいないためだろう。


 ここには等間隔に並ぶ近衛兵と先ほどから何かを喋る宰相のコー、そして玉座でグスタブを無感情に眺めるジョセフのみである。


「――聞いているのか? ソーントーン」


「……は?」


「であるから、今回のブロランカ喪失の件は不問にすると言っている。陛下の寛大な御心に感謝するがよい」


「…………不問? 感謝?」


 惚けた頭では言葉の意味がいまいち入ってこない。それにも関わらず、コーは話し続ける。


「島の喪失は兎も角、<白>の運用ドクトリンは早急に見直すべきかと。今回の件は良い教訓となりました。<白>発動についての最終決定は陛下にのみ委ねられるべき――」


 パキュ


 何かを潰すような奇妙な音が謁見の間に響いた。


 それは、自分がコーの喉仏を握り潰した音だと気付くまで、少し時間がかかった。


「――っ!?」


 コーは信じられないものを見たかのように目を見開いて倒れる。


 それからピクリとも動かない。


(死んだ?)


 グスタブはコーを殺そうと思ったわけではない。ただ、先ほどから不快な音を発するこの生き物を黙らせたいと思っただけである。


 そう思った時には手が動いていた。


「――!? 謀反!! ソーントーン謀反!!」


 にわかに近衛兵達が騒ぐ。


(謀反? 私が?)


 ああ、そうかとグスタブは思う。


 自分は今、謀反人になったのかと。一方でそれがどうしたとも思う。既に自分は罪人である。幾度、地獄に落ちても贖えない罪を犯したのだ。一つ罪状が増えたところで何だと言うのか。


 目の前の霧が晴れたような気がした。


 剣と槍を構え居並ぶ近衛兵。その奥に座すジョセフに向かいグスタブは言い放つ。


「陛下。このようなことになって誠に残念。爵位はお返ししましょう。ですが、ソフィアは返していただく」


「…………ソフィア?」


「私の妻ですよ」


「ああ、あの不愉快な女か。まぁ、返せというなら返してやろう。好きに()()()()()持っていくがよい」


「………………………………ソフィアは死んだのですか?」


 グスタブの発する声が震える。


「ああ、仕方がなかったのだ、ソーントーン。余に抱かれている時に他の男の名を呟くなど無礼にもほどがあろう。手打ちにするしか――」


「黙れ、下郎!!!」


 落雷のようなグスタブの声が謁見の間に響く。


「どこまで人を愚弄すれば気が済む!! かくなる上は貴様の首をソフィアと領民の墓前に供え、彼等への詫びとする!!」


「戯言を!」


 近衛兵長が叫ぶと同時に、続々と控えの近衛兵が謁見の間に流入してくる。


 その数、およそ200。


「陛下! お下がり下さい!」


「無用だ」


「相手はあのソーントーンです!」


「問題ない。例え、近衛兵が全滅しようとも、ソーントーンを相手にする限り、余に負けはない」


 ジョセフの説得は無理と見た近衛兵長は立て続けに部下に命じる。


「陛下の前を固めろ! ソーントーンに【転移】させるな! 重装兵、前に出ろ! ソーントーンの剣は速くても軽い! 押し潰すのだ!」


「何が軽いだと?」


 グスタブは近衛兵から奪った剣を重装兵の脳天から振り下ろす。


 ズバシャァァァアアア!!!


 グスタブの剣が鎧ごと兵士を真っ二つにした。


「か、兜割り?」


「命惜しくなくば、かかってこい」


 返り血で真っ赤に染まるグスタブ。


 その姿はまさに"剣鬼"であった。

<白>の起動スイッチを現場の人間に持たせるなよと思うかもしれませんが、初めからベストの状態で運用できるとは限りません。この点はクリムゾンタイド(核を撃つかどうかで潜水艦内でゴチャゴチャする話)という映画を参考にしました。

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