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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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111 化学プラント17

 エーランドとヨーン。


 二の村の年少組の中で取り分け悪戯好きの少年二人である。


 その二人がオーソンの目の前で、揃って正座をさせられていた。(古代魔国の名残で王国には正座の文化があった。古代魔国が滅んで以降、椅子に座る習慣が根付き正座の文化は廃れつつあるらしいが)


「どうした?」


 グレアムが説教中のオーソンに尋ねる。


「ああ、実はこいつらがな――」


 エーランドとヨーンがやった悪戯に興味を持ったグレアムはディーグアントが拘束されている家屋に入る。ちなみにヒューストームは悪戯の内容を聞いて二人の説教に加わった。


 ディーグアントの上半身は縛られ柱に繋がれている場景はグレアムが最後に見た通りのままだが、大顎に被せていた布が取り払われている。


 そして、ディーグアントの頭部がユラユラと揺れているように見えた。


 グレアムは床に落ちていた布を拾って大顎に被せようとする。食性を調べるために何度か大顎を自由にさせたが、そのたびにいつも噛みつこうとしていた。


 だが、今回は大人しくされるがままにグレアムに大顎を固定される。


 そうしてグレアムは柱とディーグアントを縛りつけている縄を解いた。


「――――」


 屋内だけだが移動が自由になったディーグアントは、グレアムに向かってくることなく部屋の中を動き回る。その動きに規則性はなく、まるで――


「酔っ払っている?」


 ◇


 それから一週間、グレアムは寝る間も惜しんで調査に没頭した。その結果に確信を得たグレアムはその夜、二の村住民全員を集めて宣言する。


「脱出計画の概要はまとまった。それを実現するための場所として森の中に新たな村を作る」


 グレアムの言葉は戸惑いを持って迎えられた。


「何か突然だな。脱出計画が決まったのは目出度いが、森の中に新しい村を作るって? この村じゃダメなのか?」とジャックスが質問する。


「ああ。この村は砦との距離が近すぎる。タウンスライムの収納能力にも限界がある。この計画は最後まで秘密裏に進める必要があるんだ」


「かと言って、森の中に村なんか作れんのか? あそこは魔物が生まれる森なんだぞ?」


 魔物は繁殖もするが自然発生もする。心無き神の瘴気が濃い場所が世界の所々にあり、そこから魔物は発生すると言われている。


 ブロランカ島北部の森もその一つである。


「森の魔物は夜の間にディーグアントが片づけてくれる。そして、そのディーグアントも日中は巣の中に籠もって出てこない」


「つまり、日中はその新しい村で過ごし、夜になる前にこの村に戻るってことか?」


「もっと正確には傭兵が運んでくる最初の食事の後と、最後に運んでくる前だ」


 傭兵が最初の食事を運んでくるのはおおよそ朝の九時頃。最後の食事は夕方の五時頃である。


「新しい村は二の村から歩いて半刻――一時間ほどの距離に作るつもりだ。つまり、六時間ほど新しい村――仮に三の村と呼称するが、そこで活動できる」


「不意の訪問にはどうするつもりだ?」


「その気配があれば、全員すぐに戻ってもらう。もちろん、間に合わないだろうが師匠に幻覚魔術で時間稼ぎしてもらう。だから師匠は二の村に常駐だ」


「で、俺たちは具体的にその三の村で何をすればいいんだ?」


「色々やってもらうつもりではあるが、主に戦闘訓練だな」


 そう言うとグレアムは歪な形をした細長い棒を取り出した。


「何だそりゃ? 棍棒か? まさかそれで俺たちに戦えと?」


「魔銃だ。最近、師匠と作り上げた。まだ、改良が必要だが、とりあえずこいつの使い方を説明しよう」


 グレアムは外に出ると、あらかじめ用意していた的に向かって<炎弾>を撃った。


 三十メイル先に置いた的が粉々になる。


 だが、二の村住民はしらけ顔だった。グレアムが魔術を使えることは誰でも知っている。ヒューストームを師として様々な魔術を身につけていることも。


「ミリー、来てくれ。俺が今、やったように的に狙いをつけたら、ここの引き金を引くんだ」


「はい」


 ミリーは戸惑いつつも言われた通りにする。


 すると、グレアムの時と同じように<炎弾>が発射され的を砕いた。


「!? どういうことだ!?」


「ミリー! おまえ、魔術系スキルを持っておったんか!?」


 ミリーの起こした結果に騒然とする住民達。


「この魔銃は魔術系スキルを持たない者でも魔術を使えるようにしたものだ。一種の魔道具だな。そして、これを全員に支給し、これの取り扱いに慣れてもらう」


 ざわつく住民達。一種、異様な熱気に包まれる。村の全員が魔術を使える。そのアドバンテージに聡い者は気づき、そうでない者もその有用性を感じていた。


「ま、待て! だが新しい村を作るといっても、そんなに簡単な話ではない。二の村にある資材と道具だけではとても足らんぞ!」


 ドッガーが声を上げる。


 森を切り開き、必要な家屋を建てるのだ。二の村にある資材と道具は、柵や堀の補修用のものだけで、新しい村を作るにはとても足りるものではない。


「それについても考えがある。

 外部協力者を作る」

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