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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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110 化学プラント16

「ふぁあー」


 グレアムは一つ大きな欠伸をした。


 オーソンとミリー付き添いの中で、ほぼ徹夜で生きたディーグアントの検証を行なっていたのだ。


「眠そうじゃな」


「師匠。おはようございます」


 ヒューストームが酒瓶片手にやってくる。


 グレアムは昨日一晩でディーグアントについて判明した事実を報告する。とはいっても新たに判明したことはない。推測されていた内容の裏付けが取れただけである。


「まず、やはりディーグアントは夜行性のようです。強い光を忌避しました」


 ディーグアントの襲撃が夜しかないことからも、それはほぼ確定事項だろう。


 他にもいくつか確認した事項をヒューストームに伝えていく。


「最後に、ディーグアントは雑食かもしれません」


 地球世界の蟻は肉食の他、草食、菌食、雑食の種もいる。グレアムは軽い気持ちで野菜をディーグアントの前に置いて、姿を消した。


 小一時間後、野菜はディーグアントの前から綺麗に消えていたのだ。


 恐らく、()()()と呼ばれる腹部にある器官に納められたのだろう。蟻は食べた物をそこに収納し、巣に持ち帰る。


「後で解剖して確認してみるつもりです」


「ふむ。すると処分するんじゃな」


「ええ。一晩で処分するのはもったいないですが、傭兵達の目もありますし」


 生きたディーグアントが村にいることを知られたら大問題となるだろう。そこから()()腹を探られるかもしれない。


 グレアムは自分達が島から脱出しようと画策していることを徹底的に隠すつもりでいる。事を起こすその日まで。


 二の村の生贄奴隷の管理はぬるい。それも今日まで明確な反抗をしてこなかったからだ。だが、一度でも反抗やその画策をしていることが明るみになれば、締め付けは厳しくなり、脱出もさらに難しくなる。


「多少ならワシの幻覚魔術で誤魔化せると思うが」


 ヒューストームの幻覚魔術は本当に凄いとグレアムは思う。オーソンの幻を目の前で作られたが本人としか思えない出来だったのだ。


 グレアムではこうはいかない。見せる幻の内容は言うに及ばず、日の光などの環境の状態、幻を見る者の視点など魔術起動時のパラメータ調整が複雑で、もはや職人芸の領域だった。


 グレアムが出したオーソンの幻は、ノッペリした二次元の絵が現出しただけで違和感だらけだったのだ。


「ミリーとの約束もありますので」


 グレアムは昨夜の出来事を語った。一瞬の油断からディーグアントに殺されかけたこと。それがミリーにバレて、ディーグアントの早期処分を約束させられたことをだ。


「……苦労しそうじゃな」


「そうですか? まあ、確かに今は過保護なところがありますが、成長とともに落ち着くと思いますよ」


「……自覚は無いのか?」


「何をです?」


 ミリーは兄が殺された事で多少神経質になっているだけとしかグレアムは思っていない。


 ヒューストームが何か言おうと口を開きかけたところで、突然、外が騒がしくなる。


「? 何でしょう?」


「ふむ? 傭兵どもが食事を運んでくる時間では無いはずじゃが?」


 日は登り切っている。ディーグアントの襲撃とも考えにくい。


 グレアムとヒューストームは揃って立ち上がり、戸口に向かう。


 突然の騒ぎに報告が中断された形となったが、既に報告すべきことは粗方終えていた。このまま終わってもいいだろう。


(ああ、そういえばアレがあったな)


 グレアムは一つ忘れていた事柄を思い出す。


(まぁ、いいか。大したことではないし)


 オーソンが捕獲したディーグアント。縄で縛り身動き取れなくしているはずだった。


 その縄にはナイフで切ったかのような切れ込みが入れられていた。


 ディーグアントの上半身の腕はピッケル型で縄を切れるようなものではない。大顎も布を被し固定されたままであった。


 どうやらグレアムに死んで欲しい人間がこの村にはいるらしい。


 中々、一枚岩とはいかない。組織運営の難しさにグレアムは思わず嘆息するのだった。

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