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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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109 化学プラント15

 昆虫の蟻は大顎と触覚、複眼のある頭部。左右に三対、計六本の足が生えた胸部。胃や腸を納めた腹部という構造を持つ。


 ディーグアントは蟻を何千倍にも大きくし、頭部を取り払って、そこに人間の上半身を取り付けたような姿をしている。ただし、手は人のそれではない。ピッケルのような形状であったり、鎌や鍬のような形状を持つ個体など様々だ。


 頭部は人と蟻が合わさったような姿をしている。人間の禿頭に蟻の複眼と大顎が付いている。なぜか触覚は無かった。


 次に腑分けしてみる。


 グレアムは上半身には人間と同じような内臓があると思っていたが、その予想は裏切られた。


 口から腹部まで食道らしき管が一本通っている。人間に近しい内臓器官はそれだけで、後は体液と筋繊維らしきものが詰まっているだけだった。肝臓も腎臓もすい臓もない。もちろん心臓も。魔石だけがまるでそれの代わりのように胸の部分に埋まっていたが。


 脳は驚くほど小さい。というより大脳がない。上半身が人間のようであっても、それはあくまで見た目だけで、基本は昆虫なのだろう。胸部と腹部も解剖したが、極めて原始的な内臓器官があるだけで特筆すべきものはなかった。


 ◇


「で、生きたディーグアントで何かわかったのか?」


 オーソンの質問にグレアムは首を振った。


「とりあえず人間を襲うということはわかった」


「まぁ、魔物だからな」


<プラント・バインド>で雁字搦めにしたディーグアントを前にグレアムは言う。


 夜遅い深夜、オーソンの手によって捕獲され村の家屋の一つに運び込まれたディーグアントは縄を解き、一人観察していたグレアムに襲いかかってきたのだ。


(やばい!)


 焦るグレアム。突然の事で魔術の準備もしていない。 


 油断していたグレアムは突き出されるピッケルの前脚を掴み、咄嗟に巴投げの要領でディーグアントを投げ飛ばした。


 ドン! ガシャシャ!


 ディーグアントが壁に叩きつけられ、様々な道具を巻き込んで床に倒れる。


 すかさずグレアムは<プラント・バインド>でディーグアントを拘束する。


 騒ぎを聞きつけてオーソンが駆け込んできたのは、その瞬間だった。


「あと、意外と軽かった」


「……ああ、確かに。俺もそれを感じたな」


 ディーグアント自身の飛び込んでくる力を利用したとはいえ、グレアムの肉体年齢は十歳である。ディーグアントの上半身の腹に足をかけ、投げ飛ばせるほどには重くは無かった。


 死んだディーグアントは普通の成人男性ぐらいの重さはある。生きている時と死んだ後で質量が変わることなどあるのだろうか。


(まさか核反応でも起きているわけじゃないよな? いや、確かあれは反応後に軽くなる現象だっけ? 死んだ後に重くなるなら関係はないか?)


 思索に入りかけたグレアムに対し、オーソンが質問してくる。


「重さがそんなに大事なのか? ヒューストームと旅をしていた時、家一軒分くらいの大きさの魔物に襲われたことがあったが、そいつは空を軽やかに飛び回っていたな」


「その魔物、重さはどうでした?」


「見た目通りの重量だったよ。返り討ちにした後、重すぎて持ち運べないから魔石だけ取って放置したな」


「…………」


 空を飛ぶなら体重が軽いことは必須である。グレアムの常識では。古代に生息した翼竜プテラノドンも全長九メートルもあって、体重は二十kgと言われている。


 であるにも関わらず、家一軒分の重さを持つ魔物が空を飛んでいたという。


「……まぁ、そういうこともあるか」


 何せここは異世界。魔術やらスキルがある世界である。地球世界の常識が通用しない例はいくらでもあるだろう。


「――何事ですか!?」


 グレアムがそう納得するとミリーが駆け込んできた。


「グレアム? オーソンさんも?」


 家屋内を見回し、ディーグアントを目にして大凡の事情は察したのだろう。ディーグアントに冷徹な目を向ける。


(あ、まずい)


 グレアムを襲ったディーグアントを処分しようとするミリーを説得するのにグレアムは手を焼いた。

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