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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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105 化学プラント11

 田中二郎がそれを知ったのは小さなネットニュースだった。とある研究機関で海水からリチウムの回収に成功したというものだった。


 海水には様々なレアメタルが溶存している。リチウム、鉄、タングステン、ニッケル、亜鉛、銅、銀、そして金。


 金の海水中の総量は百万トンと言われている。地球で現在まで発掘された総量が二十万トンに満たないと言われている中、海水には五倍以上の金が含まれているのだ。


 当時、田中二郎はそのニュースをサッと目を通した後、自分には関係ないことと忘れていた。


 だが、この異世界に来て初めて海を目にした時、そのことを思い出したのだ。衝撃を持って。


 グレアムの心臓が早鐘のように鳴り響く。


(落ち着け。まだ、この世界も同じとは限らない)


 そう。海水に金が溶存しているのは地球での話である。この世界でもそうとは限らない。グレアムは動揺する心を抑え、フォレストスライムに海水中からの金の分離・抽出を命じた。


 結果、スライム一体二時間ほどの遊泳で、砂粒ほどの金が手に入った。


 グレアムがほぼ無尽蔵の資金力を手に入れた瞬間だった。


 ◾️


(……へぇ、あいつが。意外だったな)


 グレアムが村の食堂でタウンスライムの亜空間能力と金の存在を明かした後のことである。


 狂騒に近い興奮も収まり、わずかな見張りを残して皆が寝静まった深夜、村の住民の一人が村から抜け出したことをグレアムは感知した。


<再生>の魔術を使えることを明かすことを決心した日からグレアムは村の住民一人一人にスライムを付けている。内緒で。傭兵に密告しようとする者がいれば始末するつもりだった。


(?)


 ところが、密告者と思しき人間は砦とは真逆の方向、北の森に向かっていた。


 危険な野生動物や魔物はディーグアントに駆逐されているとはいえ、そのディーグアントに襲われる危険は残っている。


 そこまでして、北の森に何をしに行ったのか疑問を感じグレアムはその人物の後をつけた。その人物の現在位置はスライムが教えてくれている。追跡は容易だった。


 その人物は森の中をしばらく進んだ後、森の開けた場所で止まった。周囲を見回し、警戒しているように見える。


 しばらくすると羽ばたき音が聞こえてきた。鳥が一羽、その人物のいる場所まで降りてきて腕に止まった。


 かと思えば、すぐにその人物は鳥を夜空に向かって放つ。


 大陸の方向へ飛び立つのを確認すると、その人物はその場を離れ村の方へ戻っていく。


 それを見届けたグレアムは<身体強化>した体で木を登っていく。その動きはまるで猿のようだった。


 数秒とかからず頂きに達すると、グレアムは視線を大陸方向に向けた。


(…………いた!)


 強化された目が月明かりの夜を飛ぶ一羽の鳥を捉える。


(範囲十倍。距離二十倍。<風刃>!)


 スライム達の魔力と演算能力を借りて底上げした攻撃魔術を鳥に向かって放つ。


 シュオオオォ!


 魔術で編まれた風の刃に切り裂かれた目標の鳥は、森の中に落ちていく。


 森の中にもグレアムが使役するスライムが多数生息している。ディーグアントはスライムを――というより一定より小さな生き物は獲物としないのだ。


 グレアムは森のスライム達に鳥の残骸の回収を頼み、自分も村に戻るのであった。

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