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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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99 化学プラント5

 ミリーの件と転生を打ち明けたことでヒューストームとは仲良くなれたと思う。だが、弟子入りだけはなかなか認めてくれなかった。


 仕方がないのでグレアムはブロランカ島の地形調査とディーグアントの生態調査、そして仮想敵のエイグ率いる防衛隊の調査を進めた。


 全員を無事に島から脱出させるとミリーとの約束を違える気はない。ミリーには妙に懐かれてしまった気もするが。


 そうして、グレアムが二の村に来てから数ヶ月。調査の傍らに作っていた酒が遂に完成した。


「…………」


「どうですか、師匠?」


「まぁ悪くない」


 作った酒はりんごなどの果実を畑から失敬してきたものを単純発酵させたものだ。


 酒造りの経験があるという老人の助けと、前世の異世界転移部の活動が役に立った。


 部長の中村優の方針でインターネットや書物だけでなく、実作業で知識を身につけようということで、部に充てがわれた教室でこっそりと酒を作ったのだ。


 ちなみに、まともに作れば完全に酒税法違反である。


 田中二郎はアルコール度数が一パーセント未満のノンアルコールとするように中村優を説得した。


「不良のくせに、変なところ真面目だね。君は」


「ふ、不良? 俺はお前にそんなふうに思われていたのか……」


「身に覚えがないとでも?」


「……無いことも無いな」


「だろう」


「……とにかく、酒造りはダメだ。バレて退学になりたくない」


「仕方がない。君の言うようにノンアルコール飲料の生成に切り替えよう。ちなみに作りかたは分かるかい?」


「要はアルコール発酵を抑えればいいんだろう?」


 りんご酒の正規の作り方に、氷を入れたり、かき混ぜたりと本来の酒造りに不要な工程を加えた。


 そうして、出来上がったりんご酒は酷いものだった。ドロドロして白い粉のような物が浮かんでいる。そして、思わず鼻を抑えたくなるツンとした臭い。


 田中二郎と中村優に飲む勇気は無かった。二人は一口も飲むことなく闇に葬った。


 さて、前世では失敗したが、要はその逆をやればいいのである。アルコール発酵に必要なのは二十度以上の温度。そして、不要なのは酸素である。酵母は酸素の無い状態で発酵する。


 タウンスライムの亜空間は条件にピッタリだった。タウンスライムの亜空間は常に一定の温度に保たれている上に、空気は無い。


 そこで、タウンスライムの亜空間で酒造りを始めたのだが、これは失敗した。ほとんど発酵しなかったのだ。


 酵母は酸素の無い環境では発酵し、酸素のある環境で増殖する。甕一つ分の量を発酵させるには酵母の数が足りていないのだ。


 グレアムは亜空間にフォレストスライムが分離抽出した酸素を送り込んだ。酸素量を試行錯誤しながら、ようやく完成したりんご酒は素人ながら中々のものだと自負している。

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