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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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95 化学プラント1

※食事中、注意

 グレアムが森で見つけ最初に使役したフォレストスライム。


 彼等の特殊な能力は空気から酸素のみを分離し低酸素濃度の空気を作り出すことができる。これを敵に吸わせることで、一時的に昏倒させるのは以前に説明した通りである。


 空気中から酸素を取り出す行為――あらゆる生物が「呼吸」という形でごく普通に行っているこの行為、実は空気から意図的に酸素を取り出そうとするのは難しい。


 科学が発展した現代の地球でも、空気中から酸素を取り出すには高度な技術と高価な資材が必要である。触媒を使ってオキシドール等から生成した方が簡単で安上がりなのだ。


 その難しいことを、魔物の持つ特殊能力によるものなのか、フォレストスライムは容易にやってしまう。


 では、酸素以外にも分離抽出できるのか?


 フォレストスライムの特殊な力に気づいた後、早い段階からグレアムはそんな疑問を持った。


 フォレストスライムを水の中に沈め、酸素以外を分離抽出するように命じた。最初に浮かび上がった泡を集め火を近づける。


 すると、すぐに消えてしまった。


 フォレストスライムの中に残された気体を放出するように命じ、それを同じように採取して火を近づけると今度はよく燃えた。


 おそらく最初の気体は空気中に八割近く含まれる窒素だろう。これでフォレストスライムは酸素以外も選択的に分離抽出できることが証明された。


 気体の次は液体である。


 塩水を作り、それをフォレストスライムに吸わせる。そして、塩だけを分離抽出するように命じた。


 最初はうまくいかなかった。「塩」というもとがどういうものかスライムにはわからないらしい。そこで、塩のザックリとしたイメージを思念波で伝える。


 しばらくすると、フォレストスライムの表面に白い粉が浮かび上がった。


 すくい取って舐めてみると、それは間違いなく塩だった。


 当時、孤児院にいたグレアムは歓喜した。


 海水から塩を作れば大儲けできると。


 だが、ムルマンスクの近くに海はない。


 ならばと、今度は蒸留酒を作ることを思い付いた。フォレストスライムにアルコール濃度の高い酒を作らせて売るのだ。


 そこでグレアムはふと気づいた。


 スライムの主食はゴミや汚物である。森に生きるスライムも例外ではなく、何らかの生き物の死骸や糞である。


 昔の中国では豚を食べる習慣は無かったという。それは豚に人間の汚物を食べさせて処理させていたからだ。


 スライムから出した物を口に入れる。


 グレアムはその行為にこの世界の人間が忌避感を持つか確かめる必要があると思った。


「あの、レナさん」


「どうしたの?」


「今日、ちょっと面白い話を聞いたんです。何でも遠い国ではスライムを食べる習慣があるんだとか」


「…………グレアム」


「はい?」


 レナはギュとグレアムを抱きしめた。


「大丈夫。そんなことしなくていいの。私、もっと頑張るから」


(あ、こりゃダメだ)


 レナの反応から蒸留酒販売計画は不可能を悟った。念のため、タイッサにも同じ質問をしたが、彼女は端正な顔を歪めて吐く真似をした。


 こうしてグレアムの孤児院財政再建計画は破綻したのだが、さらにちょっと困ったことが起きた。


 フォレストスライムのヤマトがグレアムの食事の終わった皿に、自ら乗ってきたのだ。プルプル震えながら。


「…………」


 どうやらヤマトに誤解を与えたらしい。


 スライムを食べる気はないから。


 そう説得するのに、少し時間がかかった。

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