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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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90 反乱17

「ほらほら、逃げないと捕まっちまうぞ!」


 下卑た笑いが巻き起こる。


 傭兵達の中心には首輪を嵌められた猫獣人の少女が一人。首輪は床と鎖で繋がれている。鎖の長さは三メイルほどで、その範囲内ならば少女は自由に動けるようになっていた。


 少女に引っかかれたり、噛みつかれたら負け。逆に無傷で捕まえたら最初のお楽しみの権利を得るという傭兵たちの()()()である。


 売春婦を買えるほどの給金も貰えていない彼らは、鬼の居ぬ間にとばかりに人質の少女を慰みものにすることに決めた。


 反乱のきっかけになるからと無体なことはするなと家令のジュリアから戒められ副長もそれに従っていたが、彼らは今、ここにはいない。


 珍しいことに何やら二の村で反乱が起きたらしく、一線級の傭兵達は全員出払ったのだ。


 せっかくのチャンスである。多少ハメを外してもバチは当たるまい。


「ほらほら、捕まえちまうぞ!」


 背後から迫った男に振り向きざまに爪を振るう少女。


「おっと!」


 それを間一髪で避ける傭兵の男。


 爪を無我夢中で振り回し男達を近づけまいと頑張る猫獣人の少女であったが、このお遊びが始まって既に半刻。身体能力の高い獣人といえど流石に疲れが見えてきていた。


「はぁはぁ」


 荒い息遣いに、滝のような汗。それでも少女は爪を振るうことをやめない。脅威的な体力と精神力と言える。


 だが――


「あっ!」


 周りを取り囲む男の一人が少女の足を払う。


 体を支えるため床に手をついた瞬間、背後から少女の腕ごと抱き抱えた。


「よっしゃー! 捕まえたぞ! こいつは俺のもんだ!」


 興奮して叫ぶカーキ色の服を着た男。


 早速とばかりに少女を床に押し倒す。


「くっ! 離せ!」


「へへへ、観念しな! エリオを悲しませたくないだろ!」


「なっ!?」


 自分を組み伏せる男の口から突然出た弟の名に戸惑う。


 そして同時に周囲の傭兵達も戸惑っていた。


「誰だこいつ?」


「こんな奴いたか?」


 少女を捕まえ一番乗りを果たそうとしている男に誰も見覚えはなかった。


「へへ。今、いいところに連れてってやる」


 周囲の戸惑いもどこ吹く風で、男は自分の下帯を解き始めだ。


「なぁ、お前」


 たまらず傭兵の一人が男に声をかけた。


「ん? なんだ? なんか文句あるのか?」


「お前、誰だ?」


「ああん? 俺を見たことねぇのかよ? まぁ、無理もねぇか。一の砦に来たのは初めてだからな」


「あ! そういえばお前、二の砦で見たことがある!」


 傭兵の一人が今、思い出したというように声を上げた。


「なんだ、お仲間か」


「まぁ、人を増やしたからな」


「ってことは新参か? おいおい、まずは古参への礼儀ってもんがあるんじゃないか?」


「そうだ! 無効だ、無効!」


 お遊び(ゲーム)をやり直せ!


 そう主張する周囲に男は


「やなこった」


 と少女の上から退こうとしない。男は左手で少女の両腕を抑えているので、下帯を上手く外せないようだった。


「おい。誰か手伝え。こいつの腕、抑えた奴が次だ」


「おい! 何を勝手に――」


 周囲が喧々諤々とする中、一人だけ何かを思案げに佇んでいる。


「どうした?」


「いや、あいつ、二の砦で確かに見たことはあるんだが、それがどこだったか思い出せない」


「別にどこでもいいじゃねぇか」


「いや、結構、重要なことのような気がしてな」


「地下牢だろう」


 少女を組み伏せる男がおもむろに答えた。


「あ! そうだ! その通りだ!」


 それをきっかけに思い出す。この男は確かに地下牢で見た。ボコボコに殴られた姿で檻の中に入れられて――


「え!?」


「遅いんだよ、バカ」


 下履きから取り出した一体のスライムをジャックスは宙に放り投げる。スライムに咥えさせていたピンを抜いて。


 すかさず、ジャックスは猫獣人の少女の全身に覆いかぶさった。


 サンダースライム。グレアムが電気実験の果てに偶然生み出した新種である。


 スライムから発せられた大出力の稲妻が傭兵達を襲った。

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