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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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88 ダイナマイト・プランジャー

 ダイナマイト・プランジャー。


 いわゆる起爆装置だ。箱にT字型の棒が付いており、その棒を押し込むと爆弾が爆発するイメージのアレである。


『スライム使役』が使えるグレアムと異なり、二の村の住民はスライムとコミニュケーションが取れない。スライムの力を借りたい時には工夫が必要だった。


 例えば、引き金を引くことによって起こされる特定の刺激。それを合図として<炎弾>や<銃盾>を発動するというように。


 ダイナマイト・プランジャーもその工夫の一つだ。


 発想の元は、冬の乾燥した日。羊毛の上着を着たグレアムがスライムの一体に何気無く触れた時のことである。


 パチ!


 グレアムとスライムの間に小さな閃光が発した。


(静電気? ごめんな。痛くなかったか?)


 電荷を帯びた身で不用意に触れたスライムにグレアムは謝罪する。


 一方のスライムは


(?)


 なぜ、謝られたのかわからないようだった。


 何か刺激は感じたようだが、痛みは無いらしい。


 それならばと、グレアムは色々と実験してみることにした。その結果、どうやらスライムはコンデンサとしての性質を持つらしい。体内に電気を貯めておくことができるのだ。


 ダイナマイト・プランジャーは電気を使った起爆装置である。爆薬と電線で繋ぎ、電気で発火するのだ。


 グレアムはスライムとスライムを電線で繋ぎ、電気による刺激でスライムとコミニュケーションを取れないかと発案した。


 そうして、ドッガーに作ってもらったこの世界のダイナマイト・プランジャー試作一号機が完成したのだ。


 試作一号機の箱の中には羊皮と琥珀を入れ、箱のサイドに取り付けたハンドルを回すことで、羊皮と琥珀が擦りあわされて静電気が発する。そして、その静電気を箱の中のスライムが蓄電する。


 充分に電気が溜まったところで、電線を繋ぐためのスイッチを入れれば、電気が流れるという仕組みだ。


 ちなみに、必要な材料は砦の傭兵や酒保商人から拝借した。


 傭兵たちからは銅線を作るための銅貨を。酒保商人からは琥珀を。傭兵がお気に入りの売春婦にプレゼントする為の宝石類を酒保商人は一通り取り揃えていたのだ。


 銅線を覆う絶縁体にはディーグアントの体皮を使用した。色々な材料を試したが、ディーグアントの皮の一部が電気を流さないことを突き止めた。比較的、加工と入手の容易さから採用を決めたのだ。


 そうして、そこそこ苦労して作りあげた試作機だったが、結論を言うと失敗した。


 電気が上手く流れてくれなかったのだ。


 原因を調べるが、グレアムこと田中二郎の電気工学の知識は高くない。


 もしかすると静電気が駄目なのかと思い、動電気を発電する方法を思案する。


(確か、銅板と亜鉛板で作るんだったか。レモンに板を差し込んで豆電球を光らせたことがあったような)


 グレアムが必死に前世の記憶を呼び起こし、電気を作ろうとするグレアムとドッガーの悪戦苦闘を眺めていたヒューストームがおもむろに疑問を発した。


「なあ、グレアムよ。さっきから光っとるそれは雷の一種か?」


「ええ、そうです。実際の雷の何万分の一の規模ですが」


「ふうむ。見たところ雷を発する方法で苦労しておるようじゃが」


「ええ、なかなか上手くいかなくて」


「魔術を使えばよいのでは?」


「……」


「……」


「……」


「というか、電気というのか? そんなもの使わずに思念波を使えばよいのでは?」


「……」


「……」


 数日後、箱の中のスライムが魔術で発した電流を、電線を通して受けたタウンスライムが亜空間を発生させる実験に成功する。


 電流にこだわったのは、ドッガーと年少組の一人が電気に並々ならぬ興味を示していたからで、グレアムが悔しかったからではない。


 多分。

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