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最弱スライム使いの最強魔導  作者: あいうえワをん
二章 ブロランカの奴隷
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85 反乱14

 どうしてこうなったのか?


 エイグには分からなかった。


 赤い熱線がエイグの頭、目掛けて飛んでくる。


 これは避けられないと、エイグは直観した。


(ああ、くそ!)


 もし、グレアムが事を起こすとしたら、グレアムが村にいるときだと思っていた。


 今朝早く、グレアムは二の砦を通って伯爵の屋敷に向かったことは知っている。


 まさか二の村に残された奴隷達だけで始めるとは思っていなかった。だから、対応が後手にまわった。


(いや、言い訳か)


 誰に対して言い訳しているというのか、エイグは可笑しさが込み上げてきた。


「へへっ」


 音が口から漏れた瞬間、赤い熱線がエイグの頭を吹き飛ばす。


 パキュン!!


 そのはずの一撃は、ソーントーンの剣の一振りによって阻まれたのだった。


 ◇


(マジかよ……)


 グレアムは舌を巻いた。


 ソーントーンが<炎弾>を弾いたからだ。


 グレアムは<炎弾>を開発する際に、威力と共に弾速にもリソースをかけている。


 誘導魔術式がついている魔術ならば、ターゲットが多少移動したところで、追尾してくれる。


 だが、スライムが発動する<炎弾>はターゲットを指定できないことから誘導魔術式を組み込めず、魔杖の先からただ真っ直ぐ飛ぶしかできない。


 だからグレアムは簡単に避けられないように<炎弾>をかなりの速度で発するように開発した。


 その甲斐あって音速とは言えないまでも、普通の弓矢よりも速く飛ぶようにできた。


 その弓矢よりも速い<炎弾>をソーントーンは剣の一振りで弾いたのだ。およそ人間業とは思えない。


 グレアムは暗澹たる気分になった。作戦の流れによっては、ソーントーンと真正面から戦わなくてはならないかもしれないからだ。


(やはり、ソーントーンは計画の最大の障害になるかもしれない)


 かといって、すぐに殺すこともできない。ソーントーンは最大の障害者であると同時に最大の協力者でもあるのだ。


(まあいい。臨機応変に対処していくしかない。師匠からはそのための策もいくつか授けられている。それよりも……)


『今の<炎弾>はミリー、おまえか?』


 ミリーが装着しているスライムはグレアムからの思念波を音に変換した。


『……はい』


 バツが悪そうな声でミリーが返事をする。実際に音は出ていないはずなのに、声音がわかるというのは、何とも不思議な気がする。読書中に頭の中で声が聞こえる人がいるというが、こんな感じなのかもしれない。


『まだエイグは殺すなと伝えたはずだ』


『申し訳ありません。つい……』


 つい先日、エイグがグレアムに対して剣を振るったことをミリーは覚えている。その時は心臓が止まりそうになったほどだ。防いでくれたオーソンさんには感謝しかない。


 その一方で、エイグには並々ならぬ怒りを覚えた。その怒りがエイグの姿を見て再燃したのだ。盾にされているグレアムの姿も、もちろん目にしたが、グレアムに当てずにエイグを殺す自信はあった。


 その怒りと自信がグレアムの言いつけを一瞬忘れさせた。思い出したのは引き金を引いて必中を確信した後だった。


『少なくともジャックスたちから連絡が来るまで殺すな』


「はい」


『その連絡はいつ来るんだ? かなりの時間、ここで粘っているが一向に来ないぞ。連中、うまくやっているんだろうな?』


 リーが会話に割り込んでくる。


 ミリーのリーに対する心象は複雑だ。この場にリーダー格のグレアム、オーソン、ジャックス、ドッガーは不在。ヒューストームは幻覚魔術の維持で手一杯。必然、残ったミリーがこの場の指揮を執る予定であったが、突然、現れたリーにその役目は奪われた。


 その人事を決めたのはグレアムなのでミリーに不満は無かったが、やはり()()()のようなものは残っていた。


『信じて待つしかない』


 そう短く応えるグレアム。ジャックスたちには隠密行動のため作戦遂行中の通話を禁じていた。彼らから連絡が来る時は、作戦が成功したか、失敗したかのどちらかだ。


『だがよ、ソーントーンの奴も姿を現した』


『伯爵が怖いんですか? リーさん』


『ああ、怖いね。あいつはエイグ以上に殺してはいけないんだろう? ここに『転移』されると俺たちに打つ手はなくなる』


『だから、ヒューさんが苦労してオーソンさんの姿を魔術で作っているんじゃないですか』


『まぁ、そうなんだけどよ。いつまでもそれが通用する相手じゃないんだよ。あいつは』


 タイムリミットは迫っていた。

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