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お宝日誌【7/9】back to the 王都(の前にレベルアップ)

エクトル 「著者がうんうん唸っているんだよね?」

ノエル  「え?不気味……」

エクトル 「それは…俺たちに暗雲が立ち込めそうで、ってこと?」

ノエル  「いいえ?単に想像して不気味よね?っと」

エクトル 「やめて~!そういう事をちょしゃに言うのは~!不幸のフラグが建つから~!」


ブランシュ「著者はヘタレなので不幸なんて書けないのデース!」


 出発前に領主館にて、遅い昼食をご馳走になった。



「む、無念だわ……」


 こちら側も王都にいた時に焼いたパンを指輪から取り出して提供したのだが、マリアちゃんは不服らしい。


「パンは焼きたてが全てであり至高なのよ? ……でもこれ、美味しいわね」


 取り出したパンは湯気が出るんじゃないか?と思うくらい、まだ熱を保っていた。

 指輪に備えられた自在鞄の能力が更に上がっているらしい。


 マックス男爵もすっかりマリアちゃんのパンの虜になってるし、リピーターの獲得に成功したんじゃないかな?



 もう一つ。

 魔将カスピエルを倒した時にドロップした宝箱を開けてみた。


 中には、濃い黄金色の延べ棒が六本。


 解析してみたら、純度の高いアダマンタイトだった。アダマンタイトといえば伝説の武器の素材になるような希少魔法金属。


 王都価格で金貨四十万枚というお値打ちもので、その結果、俺たちは全員1レベルずつレベルアップできた。



 エクトル LV8 → 9 HP:48 → 54

 ノエル  LV9 → 10 HP:72 → 80

 ナタリー LV8 → 9 HP:72 → 81

 ブランシュLV9 → 10 HP:45 → 50

 ボル   LV8 → 9 HP:68 → 77

 マリア  LV8 → 9 HP:36 → 40



 俺とノエルちゃんとマリアちゃんはついに5レベル呪文が可能になった。

 とはいえ魔法使いは呪文を自分で探さないといけないので、まだ一つも使えないのだが…


 それから戦士二人は9レベルから、1ターンに二回攻撃できるようになる。

 そこらに出てくる雑魚モンスターなら瞬殺だろう。強くなったものだ。



 さて、この戦利品の延べ棒、どうしよう?



「魔法親和性と、何よりその硬度で有名な素材なので、武器や防具に使えると思うんだけど?」


「落ち着いたら、鍛冶屋に行ってみるデス」


 どうやらブランシュちゃんもやる気のようだ。

 昨日オリハルコンの素材も入手してるから、色々作れるに違いない。


「ボルフェンク達もそれでいいか?」


「ブランシュに素材を託す件か?構わないぜ?何が出来るか分からないのが面白いしな」


「こ、今度はちゃんと狙ったものを作るデス!」


 以前、剣を作ろうとして魔法効果のついた穂先が出来ちゃった事を言ってるのかな?



「どうせ、もう金には困ってないしな…あ、エクトル、あれ、どうするんだ?」


 ん?

 あれ?なにそれ?


「投資先の件ですわね?それなら見つかったじゃない?」


 ノエルちゃんには通じてた!

 投資先って、残金の使い道だよね?


 ノエルちゃんは改めて男爵さんに向き直ると、


「マックス男爵。わたくし達にはオークションでの残金金貨70万枚が手元にありますの。投資先が決まらなくて遊んでいたのですけど、これをこの街の復興に『投資』いたしますわ?」


 マックスさんは突然出てきた金の話に目をパチパチさせてる。


「お嬢、男爵はよしてくだせえ。それよか良いんですかい?結構な大金ですぜ?」


「ふふふ。わたくし達には使い道がないので指輪の肥しになってしまうのです。それなら今困っている人達の助けになりたい…かな…と」


 照れながらそう言うノエルちゃんはやはり神々しい訳で。大神官が聖女扱いするのもあながち間違いではないのかも。


「そういう事なら、あっしらにお任せ下さい」



 そう言うと、男爵さんはそばに居た執事さんに何やら耳打ちすると、こちらに向き直り深々と頭を下げた。


「街の領主として、皆様に御礼申し上げます。復興と、皆様の広報活動に有意義に使わせていただきますんで」


 広報活動は頼んだ覚えないけどね。



「姐さんの不始末を片付けて頂いて、子分として面目ねぇ」


「どういう意味だい?」


「『騒乱女王』がそれを言っちまいますか?……姐さんが来た以外にこんな街に魔将級の悪魔がやって来た理由なんてないでしょうに」


 後で聞いた話だけど、ベランジェールさんにはそんな通り名があって、とにかく試練とやらに周囲が巻き込まれるらしい。俺たちも今回巻き込まれた…のだろうか?


「御義母様…これから飛竜で王都に向かうのですわよね?」


「そうだぞ?アンドロメダに生まれ変わったあいつは速いわよ?」


 ベランジェールはウキウキと話しているが、俺たちはこれからの自分の身を案じて微妙な笑顔で返す他なかった。


 知らない方が幸せ、という事は確かに存在するらしい。



 ーーーー



 思わず長居をしてしまったので、慌てて出発の準備を始める事になった。


 まずは男女に分かれてお風呂。

 領主の館だけあって、いつでも湯船にお湯がはってあるのは素晴らしい。


 なんでも男湯は、たまに街の人達にも開放するらしく、街の公衆浴場位の大きさがあって立派なものだった。


 その、十人は余裕で入れそうな浴槽の壁に寄りかかって、肩まで湯に浸かり満喫する。


「エクトル坊ちゃん」


「え〜?!坊ちゃん??」


「姐さんの息子さんですから坊ちゃんでさあ。それより、東門の城門に隣接してゴティア辺境伯家の別宅を建てるんでやすが、何かご希望の条件とかありやせんか?」


「え?別宅??」


「ええ。聖女爆誕の地としてここを町興しするのに、所縁の地の建設は外せないでやんすよ。そもそも復興には旗印が必要でやんすからね♪」


 あらら。言ってる事は分かるんだけど…ノエルちゃんには黙っとこ。

 ボルフェンクはさっきから笑いを堪えるのに必死で話に参加するつもりは無いらしい。



「えー、でも辺境伯家の別宅なんでしょ?ならベランジェールさんに聞けば…」


「その必要はないわよ?エクトル。私は余程のことが無い限り領都を離れる事は無いからね!むしろ貴方達が拠点の一つとして使うと良いわ」



 ……は?


 ガラガラと勢いよく引き戸が開いて、颯爽と登場した声の主はベランジェールさん。


 古式ゆかしく手拭いを頭の上に乗せてる以外は一糸纏わず、美しい裸体を晒していた。


「え??ちょっ…ここ男風呂…」


「細かいことは気にしないの。女湯は狭いし貴方達の奥方に占領されちゃったから!広いこっちを堪能しに来たまでよ?」



 まさかこの歳になって義理とはいえ母の裸体を拝む事になるとは思わなかった。それも、年齢を感じさせない、立派なモノを…


 救いを求めてマックスさんの方を見ると。


「坊ちゃん、姐さんは昔からこうなんでさ。慣れるのが肝心でやんすよ」


 と、まるで取り合ってくれない。


 逃げ出そうとするもタイミングを逸して固まる俺。

 ほう〜と鼻の下を伸ばしてるボルフェンク。

 あいつは絶対地獄を見せてやる。まずはマリアちゃんに報告……


 しまった!

 マリアちゃんに話すということは彼女たちにもこのハプニングを話す、ということか…

 その後が怖くて何もいえない…

 そこまで読んでのボルフェンクの余裕か…

 やられた…



 そんなアホな事を考えている間に、かけ湯も終わったベランジェールさんが浴室に足を入れ、歩いてこちらに近づいて来る。


 流石に正視できないのでボーッと天井を眺める。この浴室は香りの強い木で作られてるらしく、天井も複雑に組まれた木の模様が美しい。


 一定間隔で梁が張り出しており、端から1、2、3、4…思ったより面積広いんだな、この浴室は。毎日使うお湯の量も…



 その視界を遮るように、頬を少し赤く染めたベランジェールさんの顔のアップが現れた。と驚く間も無く、俺の顔は柔らかな膨らみにふんわりと包まれ、後頭部に彼女の腕が絡みつく。


「えあんえーぶあん!」


 義理母ベランジェールさんが俺に跨って顔を胸に抱きしめている、という事実を認識するのに3秒くらいかかった。慌てて声を出そうにも、柔らかなモノに包まれてまともに喋れない!


「エクトル…ずっと会いたかったんだよ?でも私も『モンペイユ』の街を離れられないから貴方に会えなくて…やっとこうして親子水入らずだね?」


 いやいや、確かに今は、水(お湯?)なんか気にならないレベルの非常事態ですが。



「貴方は神に愛された、辺境伯家の秘蔵っ子。でももう隠れる時期は終わったの。これからは存分に名を轟かせると良いのよ?」


 そういうと、ベランジェールさんは胸の膨らみによる拘束を解いてくれた。とは言え離れたわけでは無いので、少し目線を落とすだけで、膨らみや先っぽの小豆が見えてしまう。


 それから目を離そうとすれば自然と見つめ合うような格好になるわけで…


 そんな最中、さらなる混乱が巻き起こる。


「えっくん〜、ミズハさまが言うには、こっちにベランジェー……あー!!えっくん何してるの〜〜!!」


「親子丼?親子丼なのね〜?」


「このドサクサならご主人さまの素敵なサムシングを奪えるのデース♪」


「ちょっと〜貴女達!こっちは男湯なのよ〜!…ってボルくん!何鼻の下伸ばしてるのよ〜!!」



 式を明後日に控えた、うら若き娘達が、何故か素っ裸で四人も乱入してきたのでした。



 ーーーー



 リラックスのための入浴という習慣が、俺を混乱の極致へと導くのか……なんて悲嘆したふりをしながら、ここまでドタバタになってしまえばこっちのもの。アヤフヤにして準備を済ませ、出発のために見張り台へと舞い戻った。



 予想通りだったのは、飛竜改めアンドロメダ(ちゃん)がその場に待機していたこと。

 予想外だったのは、なんか大きな箱やら樽やらの荷物がその手前に積んであったこと。

 予想を通り越していたのは、眼下に広がる人々の群れと熱狂。



 荷物の方は、


「これ、王都に持っていく分と途中で楽しむ分だから、エクトル仕舞っといて?」


 というベランジェールさんの説明も何もないかるーい指示に従い解決。



 予想を上回る人々については。


「きゃ~!聖女さまよ~!」

「聖女さま~ありがとうございました~!」

「聖女さま~これからもこの街をお守りください~!」

「聖女さま~お早いご帰還を~!」

「聖女さま~はぁはぁ」


 なんか最後に変態が混じっていたような気がするが……

 とにかく俺たちの想像を絶する歓迎っぷりだった。



 そんな中、ちょこんとお辞儀をしながら恥ずかしそうに手を振るノエルちゃんは、聖女というのとはちょっとイメージが違うものの、可愛かった。


 そのノエルちゃんを含めた俺たち6名とベランジェールさん、皆アンドロメダの背に乗り、飛び立った。

 最初の馬車もどきの時にいたお供のような二人はなぜか一緒ではなかった。


「姐さん~皆さん~お達者で~!」


 マックス男爵や館の人たちは見張り台の上で、敷地内の市民の皆さんと同じように手を振って見送ってくれた。

 アンドロメダは領主館の周囲を2、3周回ると、凄い速さで街を離れて行った。



 ――――


 アンドロメダがパワーアップしたと聞いていたので、背に乗って移動するのにおっかなびっくりだった俺たちだが、いざ乗ってみるとその乗心地に驚くばかりだった。


 空気の見えない防御壁のようなものが張られているのか?凄い速さで飛んでいるにも関わらず、俺たちにはそよ風すら感じない。上空に上がると温度も下がるはずだが、春の心地よさのような適温っぷりである。


 また、落下についても、同じように見えない壁に阻まれるので、落ちるどころか、見えない壁に寄り掛かることすら可能だった。


 まるで、床以外のすべてが異常な透明度のガラスで覆われているかのような。ガラスと言っても固い訳ではなく、程よい弾力があるので体をぶつけても痛くない。


 床というか背もフカフカの毛に覆われていて、飛行中はなぜかほぼ平らになるので、絨毯の部屋に寝ころんでいる感じ、というのが一番近いと思う。


 あえて難癖をつけるとすれば、高い所が苦手な人には苦行だろうな?と思うくらい。それもこのメンバーにはいないので杞憂だ。



「うわ~♪ まるで空を飛んでるっていう気がしないわね~♪ 」

「風もないので、魔法の映像を見せられてる気分デスね」



「ねえ、あれ、『墜ちた都市』の遺跡じゃないかしら?」

「そうね、オーブの街も道すがら見えるはずよ?」



「じゃあ俺たちのノルデン村も見えるかな?」

「あんな小さな村、この高さからじゃ無理じゃない?」



 アンドロメダは何時までも飛べそうな雰囲気だったが、人間には食事とか息抜きとかトイレとかの問題があるので、定期的に安全なポイントに着地をして休憩を取った。



 夜もアンドロメダは飛び続けられるらしいので、背に乗りながら夜景や星空を楽しむ、という贅沢な時間を過ごした。

 なぜかベランジェールさんが「みんなでシャワーを浴びよう」とか言い出したせいで、一時だけ大変だったが。うん、持てる魔力全部使ってお湯を提供しましたよ。しかし全員一緒にって……



 朝日が昇るところを上空から迎えるのも、これが表現に尽くしがたい美しさだった。

 俺たちはひたすら北上しているので、右手から上がった太陽がだんだんと背後に上がっていき、少し左手に移動してきた頃、王城が遠くに見えてきた。


 今日は7/9。結婚式は明日。

 なんとか俺たちは間に合ったみたいだ。



 これでやっとゆっくり出来る、と思ったんだ、この時は。

 でも、これこそが『嵐の前の静けさ』という奴だったのだ。


あらすじ:やっと王都が見えてきた。


※ 一つの頂点が近づいてきました。が、展開を未だに迷っております。

  ちょっと次の更新まで間が空くかもです。


ブランシュ「今も十分更新が滞っているのデース!」

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