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冒険日誌【7/1】火竜との決戦!

エクトル 「今回は視点が入れ替わります」

ナタリー 「あたしの出番が来て~♪ 」

ノエル  「そんでわたくしの出番ね?」

ブランシュ「今回は、一人寂しく矢を射るのみデース……」

エクトル 「とりあえず、火竜編決着編?をどうぞ~♪」


※ 龍を竜に変えました。その他誤字とか。。。

  週明けには続きをスタートしますので。。。しばしお待ちを。。。(9/28)

冒険日誌【7/1】火竜との決戦!


(火竜は回復能力を持っていた!からの続き)


 世界の法典(ルールブック)によれば、魔物は人で言うレベルの代わりにHPダイス(HD)なるものにより、HPが決まる。人の場合はクラスにより使うダイスは様々だが、魔物の場合はどれでも八面体である。


 1から8までなら、平均は4.5。12HDなら、54。

 全部8なら、96、と言う具合である。



 これなら、97以上のダメージを与えたら、確実に殺れる、という事だ。俺たちはこうやって、必要なダメージを予測してきた。


 ところが、敵がHPを回復する場合は、単純に言って、回復された分余計にダメージが必要、となる。


 とはいえ、それだけ、といえばそれだけ。

 執拗に攻撃を続ければ良い。普通なら。



 今回俺が狼狽(うろた)えているのは、竜のブレス攻撃の特殊性だ。


 扇型、もしくは球状に範囲攻撃で、対象に『ブレス攻撃する魔物の現在のHP』と同じ値をダメージとして与える、という凶悪なものだ。(ST判定で半減は可能だが)




 何が凶悪なのか?って?

 俺たちの得意技である、変換(インチキ)が出来ないのだよ!

 固定値のダメージは消しようがない。



 だから、HPがたくさん残っている一番最初のブレス攻撃を食らう前に、少しでもHPを削っておかないと、あっけなく姉さんがやられちゃう。


 雷や弓矢で削って、これなら耐えられると予想して開戦したのに、ブレス直前に回復されるとは予想外だ!


 おまけに、予想HP96も外れた臭い…断定出来ないのは、やっぱり回復量とタイミングが分からないからだ。

 常時回復されるような奴だったら、毎ターンのブランシュちゃんの矢はほとんど回復されてるだろう。それなら96でも生き残る。回復してないなら、それ以上にHPが加算されてたという事だ…



「えっくん、回復するなら、それ以上に叩き潰せば良いのよ?簡単でしょ?」


 ノエルちゃんは笑顔で恐ろしいことを言う。


「戦闘中は、難しい事を考えてはダメですの!」

「悪速斬!」


「君らが狂戦士だから僕が悩むのだよ!」


 と、言っては見たが、ここは完全に奥さん達が正しい。

 短時間にダメージ稼ぐしか、方法はないのだから。


 そして、非常なことに、その前に姉さんにブレスを耐えて貰わないといけない。本当に祈ることしか出来ない。今は。



「ナタリーーー!!! 耐え切ったらなんだって一つ言うこと聞いてやるから耐えろーーー!!! …お願いだから…」



 ――――


 ナタリーは、冷静だった。

 難しいこと考える位ならやってみてから考える方だ。


 案外、世の中、上手く行くもんなのよ?

 大袈裟ねえ、あたしの旦那さまは…


『 それでも、それだから、

 大好きな人には笑顔で幸せでいて欲しい。 』


 ついこの間誓った、あたしの純粋な、人に知られたらちょっと恥ずかしい想い。



 あんなに自分の不幸を呪ったあたしが!!

 散々諦めてきたあたしが!!!

 世の中なんてツライだけ、そう信じてたあたしが!!!


 そんなあたしが、

()()()()()()()()()()()()()()()

 なんて、今普通に考えちゃってるのよ?



 可笑しいよね。

 エクトル…あなた、あたしに一体どんな魔法をかけたの?

 笑っちゃうわ。



 こんな、この程度のブレス攻撃(そよかぜ)

 あたしにかかった呪文の奇跡に比べれば。



 竜よ、お前はあたしの旦那の百分の1でも、

 こんなステキな魔法が使えるかしら?



 無理よね?

 所詮はトカゲだものね。

 あなたじゃ、あたしの胸はときめかないわ。



 それじゃ、ま、

 あんなにカッコよく決めたはずなのに、

 最後に人の良さがはみ出ちゃった、可愛い旦那様のため。

 あんな悲痛な顔をさせないために。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()


「槍術、盾業師奥義 『薙ぎ払い』」


 ――――



『消え去れ、小さきもの達よ!!!』


 火竜が己に残った生命力を紡ぎ、炎を姉さんに吐き出す。


「…お願いだから…」


 生き残っておくれ。

 HPが1さえ残ればいい。

 俺たちなら全快にできる。


「槍術、盾業師奥義 『薙ぎ払い』」


 姉さんが聞いたこと無い技名を告げる。


 如意棒の先に付いた、ブランシュちゃんの作成した穂先が、狂ったように輝き出す。色は蒼。姉さんの瞳から抜け出たような、真っ青な蒼。


 両手で構えてた姿勢が一瞬ブレる。

 ブレたんじゃ無くて、一閃したんだ…


 技名が盾業師の奥義なのに、薙ぎ払い。

 全然盾っぽく無い。

 おまけに、払いと言ってるのに、動作は突きそのもの。

 謎だ。



 吐き出された炎の塊は、

 一呼吸遅れて姉さんの奥義の衝撃波とぶつかり、多くが霧散したものの、幾らかは姉さんに襲いかかる。



「この程度の温風ーー!!!人間を舐めるなーー!!!」



 やばい。

 姉さんのHPがゴリゴリ削れるのが指輪越しにわかる。

 ノエルちゃんが即座に自分の(HP)を姉さんに飛ばす。


 俺のHPは30。三分の一の10までしか渡せない。

 そもそもHPの低い俺とブランシュはこの技は禁止だ。


 ふふふ、だが、今から禁止なのはブランシュだけだ。

 俺も姉さんにHPを送り込む。耐えてくれ~!


 二人分の命を飛ばしても、まだ完全回復では無いのに驚く。

 この竜のHP、『ちょっと多い』くらいじゃ済まないのでは?

 嫌な汗が出る。目測を誤ったか?



 やっとブレスが止んだ。

 姉さんは不敵に微笑んで「カウンター」と呟くと、

 如意棒が一瞬で伸びて火竜の下顎を穂先が貫く。

 しこたま不意打ちダメージを食らって竜が暴れる。

 姉さんはがっちり如意棒を掴んで離さない。



 しかしなぁ…

 次またブレスが来たら今度はマズイ。

 止めないと…




「ミズハ! 今ならブレス止められるかい?」

『ナタリーが槍で口を縫い止めてる間なら。それでも妾が顕現化しないと無理だの。』


 さっき作戦会議中にミズハに、ヘルハウンドみたいにブレス止められるか聞いてみたが『無理』だった。生命力が強すぎる、からだろうな。



 かなり減らした今ならチャンス。ならば悩む事はない。



 ――――

『第5ターン』運命の時。先行はこちら。



「俺が行く!」


 この一言でみんな自分の手順を後回しに。

 余計な解説なんかしなくても、俺のやる事がわかればみんなそれに合わせてくれる。出来たメンバーだ。



 俺はミズハさまの分身である水玉を抱き寄せて口付ける。

 大きな水玉に吸い付くように見えるのだろうか?


『ミズハ、全部吸うなよ?』

『無論じゃ。お主が死んでしまうからの♪ 』


 え?命の素吸うだけだよね?

 全部吸いとられたら死んじゃうの?

 ブランシュちゃんあたりにはちゃんと言っておかないと、命がいくつあっても足りないかも?


『ふふふ、今回だけは、契約者殿の命も分けて頂くからじゃ。普段は問題ない。』


 おーい!!聞いてないですよ〜!



 そんな俺の魂の叫びなんて御構い無しに、いつもの強烈なのが来る。背骨を走る電撃のような快感とともに、体の奥底が空っぽになる感じ。今回はそれに加えて身体が重い、めまいがする。なんだこれ?こんなの今まで体験してないぞ?


 ふと嫌な予感がしてキャラシートを見ると、HPが1!

 数字見なきゃ良かった。立ってるのも辛い。


 隣には…巨大な幼女姿(全裸)のミズハさまが、

 俺の頭上に顕現していらっしゃる。



 あははは。幻を見てるのだろうか…

 幻じゃなかったら…ミズハさま…頼んだよ…

 もう立っているのがやっとで状況なんてサッパリ分からなかった。


 なんかノエルちゃんが叫んでるな…心配しなくても大丈夫だよ?多分…



 ――――



 ノエルは、自分に『傷回復(小)』をかけようとしていた。

 この呪文はまさに神の奇跡なのだが、接触しないと癒せない。

 でも指輪持ちならばHPを転送できるので、自分が前線に出なくても回復出来る。


 お父様ナイスな品ですわ。これ。



 エクトルが巨大ミズハさまを呼び出すみたいなので、自分の手順を遅らせて様子を見る。


 水玉が突然巨大化して、えっくんの頭上に浮かび上がりながら変形して行く。


 池のほとりで会ったミズハさま、だけど身長は10mくらいあって、姿が幼い……



「巨大な幼女…」


 ボルくんが驚いて呟いてる。

 そうよね、彼らは水玉のお姿しか見ていないもの。



 それにしても……


「ミズハさま!!服着て服!!全裸はダメーー!!」


 えっくんの望みがこんな姿なんて!あとでお説教しないと!



 一瞬で布を身体に巻きつけたミズハさまは、表情を変えずに右手のひらを前に突き出すと、氷柱のようなものを手のひらから連射して、次々に火竜に突き刺していく。


 次はどうする?


 混乱する頭をどうにか回転させ、えっくんを見ると呆けてる。なんでよ?こんな時に!!



 さっき、顕現された時、恐ろしい勢いでえっくんのHPが減ったのだけど、大丈夫かしら?


 即座にブランシュちゃんがHPを転送していたから、死にはしないだろうけど。司令塔が呆けてるなんて……




「みんな、叩き潰すわよ!!!」


 叫んで戦況を確認しながら、自分の呪文で自分を回復させる。

 これで次のHP転送も余裕よ?



『ビーーーーーーーーーーーーーーーン!!』


 ブランシュちゃんが、竜の顎に刺さった姉さまの槍を避けて、その横に刺さった氷柱のど真ん中に発火矢を命中させる。発火矢は氷柱ごと、竜の顎を吹き飛ばす。


 これでしばらくはブレスは怖くないわね。


 もうここからは一方的だ。



 槍が自由になった姉さまは、首を狙って薙ぎ払い。竜の血が噴き出してる。あー勿体ない…あれだけでどれだけの高価なポーションが作れることか…


 と思ったら、姉さまは槍を伝わって落ちてきた雫を指輪に収納してるわ!ナイスアイデア!私もやろうっと。

 遠くの血飛沫を指輪に吸い取るのはグロテスクね。



 マリアちゃんは魔法の矢を、ボルくんは直接剣で、エクトルが貫通させた脇腹の傷に集中攻撃してる。

 いくら竜のウロコが硬かったって、傷を狙えば関係ない。



 もうヨレヨレの火竜は、

 反撃を諦め、逃げ去るつもりのようだ。



 翼をはためかせ、地上数mまで浮かび上がった。

 ここから一気に飛び去るつもりなんだわ!!

 こんなに傷だらけでも逃げる体力がまだ残ってるなんて!!



 ――――

『第6ターン』仕上げ。こちらの先行。



 火竜はまさに飛び立とうとしている。


 そうはいくかと、ブランシュちゃんが、発火矢で左翼を破壊する。吹き飛ばすこそできなかったが、飛行の邪魔には成功。



 姉さまはカウンターからの連続技でそのまま首を狙い更なる一突き。それでも首は繋がってる。しぶといわね…



 マリアちゃんが、追撃の魔法の矢を。傷口に刺さるが倒れない!なんて頑丈なのかしら?



 ボルくんも続けて斬りつける。もう、なにその腐った出目は!ダイス変換(インチキ)で20で埋めてあげる。これで3回目。


 ボルくんの斬撃は会心の一撃に変わり、火竜に襲いかかる。派手な血飛沫が上がるが、まだ倒れない。剣じゃ首には届かないから攻撃が分散しちゃうのは仕方ないな。



 おっと、血飛沫の収納、収納。

 姉さまのような必死さには負けるけど、お宝は逃さない。



 あとは、わたくしとエクトルだけね。

 わたくしが前に出るとえっくんはすっごい嫌そうな顔をするのよね…可愛いんだけど、あんな顔させるのもかわいそうか。



 じゃあ…

 後ろに庇っている、えっくんに振り向き、


「あとは頑張ってね?あなた♪ 」


 そう囁いて、彼の頬にキスをする。

 前からイメージしてた通り、わたくしの胸の奥の方の、乙女のドキドキする気持ちをたっぷり込めて。


 あん…流れてく…

 わたくしの、あなたを想う気持ち、が…



 えっくんの瞳に意志が篭る。


「任せて!可愛い俺の奥さま♪」


 もう、なにをニヤけてるのよ!こんな時に!



「ミズハ!タイミング合わせるよ?」

『妾はいつでも大丈夫じゃ』


 真剣な顔に戻ったえっくんが、魔法の矢をクビに刺さった氷柱にまっすぐ飛ぶ。命中の瞬間、ミズハさまの身体から光が溢れ出る。



『ガガーーーーーーーーーーーーーーーン!!』

 魔法の矢は氷柱を巻き込んで大爆発を起こした。

 魔法の矢ってこんな威力ないでしょ?

 ミズハさまと何かまたやらかしたわね?


『我が名は古代火竜(エンシェントドラゴン)『イェロニーム』。よくぞ倒した、冒険者よ』



 首から先を大爆発で吹き飛ばされた火竜はそのまま倒れ動かなくなった。火竜の頭から小さな赤い珠が飛んでいき、えっくんに吸い込まれていった。なにあれ?大丈夫かしら?


 えっくんにちゃんと聞いておかないと。

 あの人って、わたくしに心配かけそうな事、全て内緒にしようとするんだから。

 聞いた方が安心する事、結構あるのよ?


 ――――


 こうして、なし崩しに始まった火竜退治は終わったのだった。


m(__)m

キャラクターがひと段落した所で最初の頃の話を読むとまるで別人?なことに気が付きました…

ちょっと今後を続ける前に、1章からリファクタリングしようかと思います。

大筋を変えるつもりはありませんが、しばしこの先も含めて練り直します。。。。


※ 第六話までは修正・加筆完了です。(9/28)

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