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冒険日誌【6/24】オーブの街:遺留品の回収。あれ?まだ先がありますよ?

エクトル 「前回カッコイイとこ魅せたボルフェンクさんで~す」

ボルくん 「エクトル…お前なぁ…」

マリア  「ボルくん…おっぱいの夢見る人よりカッコイイと思うよ?」

ナタリー 「マリアちゃん~?エクトルくんの好物はおっぱいだけじゃないのよ~♪ 」

エクトル 「……フォローになってない……」

 強敵?ケルベロスを倒し、周囲の安全を確認したのち、暫し放心する俺たち。俺はミズハさまに命の素吸われてヨレヨレなだけだから放心してる訳じゃ無いんだが。



「マリア、エクトル、俺達ちゃんとレオンとルーカスの仇取れたかな?」


 寝転び満足げなボルフェンクが独り言のように呟く。


「ああ、そうだな。恥ずかしい念話と共に討ち果たしたな」

「やめろ、それは言うな!」


 自分で思っことがバレて恥ずかしいか?ふふふ

 今までそのポジションは俺しかいなくて苦労したんだ。ニヤリ


「えーボルくんはかっこよかったよ?」


 はいはいご馳走様です。俺もこういう目で周りから見られてるんだろうか?気をつけねば。


「しかし、お前達とやるとスゴいな。パーティで誰が何やるのか手に取るように分かるから連携も完璧だし、個々も鬼強い。その上、精霊さまの加護まであるとは…冒険者ってこういう奴らがやるべき物なんだなって今なら分かるわ」

「ボルフェンクはやっぱり冒険者辞めちゃうのか?」

「今めちゃくちゃ楽しいんだけど、でも格の違いも見せつけられたから、まぁ悔いはないかな。」

「そうか、俺も今楽しいんだが、惜しいな…」


 ぺたりと座り込んでるノエルちゃんが口を開く。


「ボルさんはこの潜りから戻ったら、そのまま故郷の村に戻るの?」

「そうだな、この三年色々あったけど、用事が済んだらとっとと帰った方が良いだろうな」

「そうですね、道中でプランを練らないと、ですから」


 お? 次が決まったのか?


「プランってことは、次にやる事きめたのかしら?」

「うん♪ 小さくても良いから自分たちのお店を持とうって♪ 」


 マリアちゃんはすっかり乙女って感じだな。


「何を売ってくれるの〜♪ 」

「姉さま、もうすっかりお客になる気満々ですのね?」

「マリアが焼くパンは絶品なんだ。だから俺もそれに合わせてコーヒーでも出そうかと。」

「おお〜♪ ノルデン村でも美味しいパンとコーヒーを楽しめるのか、良いな」


「どうもそれっぽい物がありましたの…」


 精神的な疲労で座り込んでる俺たちを尻目に、一人ケルベロスのドロップ品をチェックしていたブランシュちゃんが躊躇いがちに伝えてきた。


 みんなでブランシュちゃんのそばに近づいて見ると、そこそこ大きな宝箱と、焼け残った盾とメイスの残骸がいつの間にかそこにあった。倒した直後にはこんな物はなかったから、ドロップ品なんだろう。だとすると…


「レオン……ルーカス……」

「うううぅー……」


 ボルフェンクとマリアが一見残骸にしか見えないものを大事そうに抱えて涙している。


「こんな事って…あるのね……」


 目を真っ赤に腫らして、でもちょっと無理して笑うノエルちゃんを優しく抱きしめながら、俺たちは二人を見守っていた。


 ――――


 宝箱の中身は宝石やら金貨やらがいっぱい詰まっていた。宝石っぽい石の中に、一つ曇った水色の、他とは異なる石があったので眺めていると、


『そいつは水の魔石だな。それも、念じると氷の霧が出る特別品だ。こいつは珍しいもんを見た』

「茎さまが自分で喋り出すなんて珍しいね。そんなにレア物?」

「今の説明聞いて価値がわからないえっくんには持つ資格がありませんわね♪ 」


 あ、ノエルちゃんに馬鹿にされた〜!


「これはお店をやる二人が持っておくのが良いと思うの〜♪」

「そうですの。ご主人さまが同じことを出来ますの〜♪」


「おい、エクトル? お前…ホントに人間か?」

「失礼な!!そして、満場一致によりこの石は二人のだ!」

「いや、この石一個でこの宝箱の何倍になると思ってるんだ?」

『この宝箱はおよそ12,000 Gだな。そしてその魔石自体に貴石的価値はない。』

『それはそうじゃ、妾の氷の息吹がそのまま魔石化したものじゃからの♪ 』

「ミズハ…やらかしましたね…というわけで俺たちには価値がないし使い道もないから待っとけよ」

「俺たちはレオンとルーカスの形見が帰ってきただけで充分だって「まあまあそう言わずに」」


 暫しの押し問答の末無理やり受け取らせた。

 酒場で支払いを奪い合う接待オヤジか?

 はあ〜まだ宝箱の中身が残ってるのに……あ、そうだ!


「なあ、ボルフェンク?君たちまだ冒険者まだ引退してないよな?」

「まぁ、そうだな…」

「この先も部屋が続いてるっぽいんだが、同行してくれないか?これは俺たちからの個人的な依頼だ。」

「うーん…俺たちが入っても足手まといなだけに思えるが…」

「さっき美味しいところを持って行ったのはどなただったかしら?」

「あははあれは運だろ。でもまあ…楽しそうだな。お前達となら。」

「よし決まり〜♪ 」

「じゃあ、この二人分四千Gは依頼の前払金な?達成後は拾った宝物山分けということで」

「おい、エクトル!!」


 またオヤジタイム突入。マリアちゃんが途中で止めてくれた。


「ボルくん?人の好意を断り続けるのは却って失礼だからね!」


 そうそう、素直に受け取っとけ。どうせ貰いもんだ。


「で、エクトル…さっき頭の中に知らない人の声聞こえなかったか?」


 あ、茎さまのこと言うの忘れてた。


「精霊様に続いて今度は知性のある魔法のロッドとは…もう突っ込むのも疲れた…」


 ――――


 部屋の奥は豪華な両開き扉があり、ガッシリと閉まっている。押しても引いても開かないし、鍵穴もない。魔法の鍵なんて呪文使えないしな…どうやって開ければ良いんだ?


「鍵穴がなければ盗賊にはお手上げですの…」

「あら?これは何かしら?」


 扉横に変な、でも凝った装飾の細長い台があり、そこに水晶玉がはめ込んである。


 ブランシュちゃんの見立てでは罠は無さそうなので、そっと触れてみると……水晶玉の真上に透明なガラス板のようなものが突然現れ、そこに文字が浮かび上がった。


『問題

 アルフレートパンは白パンの材料にある素材を追加して作られる。その素材とは何か? 制限時間10秒』


「え?パン?素材?」

「パンなんてみんな小麦粉じゃないの?」


 俺たち第五小隊は糸口すらつかめない。

 あ?!みんな一斉にマリアちゃんを見る。それはそれは必死な眼で。


 マリアちゃんは一瞬、良いの? って顔をした後で


「ヘビヘビの実と木苺!」


 なにそれ?聞いたこともない物出た!

 透明板の問題文に被さるように大きな赤い丸が浮き出た、と思うと、大きな扉が勝手に自動で開き始めた!


「やったね♪ 」


 マリアちゃんは小躍りして喜んでる。かわいいな。


「クンクン。ご主人さまから浮気の臭いがしますの!」

「いやいや、ちょっと踊りが可愛いと思っただけだから!冤罪だから!」

「エクトルや〜先行くぞ〜」


 やべ、置いてかれる!

 ブランシュちゃんを軽く抱きしめ、耳元で囁いてから扉の方に向かう。


「ご主人さま…ずるいですの…」


 ――――


 入った部屋は実験室と台所を合わせたような、とでも言うのだろうか。水場やコンロや窯のようなものがあるかと思えば、中央のテーブルにはフラスコやスポイトみたいな実験道具が置いてある。綺麗に清掃してあって埃一つ落ちてないのは魔法の効果だろうか?そういえば、部屋に入ったら光の魔石が輝き出したりして凝った作りだ。


「わあ!凄い窯だ!!」


 マリアちゃんだけ、俺たちには理解不能な物に心を奪われているらしい。


「なんだこのコーヒー豆、まるでさっき煎り終わった直後みたいに香りが落ちてない!なぜ?」


 ここにもいた(笑)

 しばらく動きそうにないので、先に俺たちは奥の部屋を捜索することにした。奥の部屋は、居住空間らしい私室で、ベッドと机とタンスが並んでいる。


『まあ、やっと人が来てくれたわ〜』


 ん?誰かいる?

 いや、姿は見えないし声も頭の中に直接響く。念話か…


『あら、あまり驚かないのね?』

「ええまあある意味慣れておりますので…私はエクトル。旅の魔術師で遺跡を探検するうちにここに流れ着いた者です。」


 姿が見えないから目線をどこに置いたら良いかわからない。とりあえず頭を下げながら、なるべく丁寧に話しかける。


『ご丁寧にどーも♪ 私は魔女のイルムヒルデよ? パンが大好きなの❤️』


 部屋の仕掛けとか凄いんだけど…なんか締まらないな…


『二千年振りに人が来てくれて嬉しいんだけど、貴方、あの扉を開けた割には、パン魂が足りないわね?」

「パン魂?」

『パンを愛する心、パンラブよ?知らないの?』


 なに?パンの魂?パンへの愛?

 やばいところに足を踏み入れたんだろうか?


 ペタペタ(足音)


「わかります〜パンラブ!あの窯、パンオリエンティッドな吸熱岩で敷き詰められてて、あの排熱演算の術式の美しさったら…」

『貴女!演算術式の方式(プロトコル)解析できるのね!』


 なんかよくわからない世界に迷い込んだんだろうか?


「ねえ、ボルくん…マリアちゃんって…」

「言うな…昔からパンが絡むとああなるんだ…」


『私の技法が廃れて失われるのが怖くてずっとここに居たけど、二千年も待った甲斐があったわ♪ マリアちゃんになら私の研究を引き継いで貰えそう♪ 弟子にならない?』

『はいな♪ 喜んで♪ 』


 軽い、軽すぎる!

 二千年もの時を経た邂逅がこのやり取りかい!


 と思ったら、何もない空中から煌びやかな黄色のドレスに身を包んだ美女が現れた。ちょっと透けてるし宙に浮いてる!幽霊?


『妾の新たなる弟子となるマリアに証となる指輪を授けます』

「有り難く頂戴いたします」


 打って変わって厳かな雰囲気に皆呆然とする中、幽霊の魔女様が右手を振ると、マリアちゃんの右手の中指にルビーのハマった指輪が現れた。指輪に左手を添えて恭しく頭を下げるマリアちゃん。綺麗だな…


「今度は大人の女性〜?お姉ちゃん妬けちゃうな〜♪ 」


 姉さんが俺の腕に手を回し、耳元で囁く。姉さん、瞳からハイライトが消えてます!怖いです!


『さ〜て、私はもうここには用がないから、ここにあるものは持って帰って良いわよ〜♪ 幽霊には必要ないものばかりだしね〜♪ 』

「ありがとうございます!」


 俺たちを代表して新弟子のマリアちゃんが礼を述べる。


『マリア…あとは任せましたよ?パンロードを突き進むのですよ? 』

『承知致しました♪ お師匠様」

『パンラブ、フォーエバー!』

「パンラブ、エターナル!」


 そう言うと、美しい魔女のイルムヒルデさまは煙のように姿を消した……

 なんだこの挨拶!普通なの?パンラブには常識??


「お師匠さま…マリアはパンロードを爆走してみせます!」


 両手をぐっと握って力強く宣言する。


「良かったな、ボルくん?」

「ニヤニヤしながら言うな、エクトル」


 こうして俺たちの追加の冒険は終わった…


 ――――


「マリア、これら、貰ったは良いがどう運ぶんだ?」

「えーっとどうしましょう…パン以外はエクトルさんたちに差し上げるとして…この窯とか必須ですしね…」

「え?これ、持ち運べるの??」


 二人が新婚さんのような初々しい会話で盛り上がってます。

 俺たちはそれに対するソリューションを持っているのだが…なぜか幸せそう過ぎてイラッとするのは俺の人間性が小さいのだろうか?


「えっくん♪ 運んであげましょ? 二人の愛の巣まで、ね」


 ノエルちゃんに言われては否応はない。


「ボルくん?引っ越しなら、わたくし達、エクトル運送屋にお任せよ?」


 いつから俺たちは運送屋になったのだろうか?いやまぁ、並みの運送屋には負けないスペックを持ってるとは思うけど…


「ノエル?申し出はありがたいが、こんなの持ち運べないぞ?うちのマリアは窯とか言ってるし…」

「うちのマリア?(ニヤニヤ)」

「もう二人の雰囲気が〜(ニヤニヤ)」

「新婚さんですの〜(ニヤニヤ)」


 ボルフェンクが茹で蛸みたいで面白い。とりあえず一仕事しますかな?


「マリアちゃん、持ってくのどれ?」

「えーっと、この窯と〜」


 研究室にあった大きな謎物質で出来た、多分パン焼き用の窯を俺の指輪に格納する。


「おわ、自在鞄(ホールディングバッグ)か!なんでもありだなエクトル…」

「ま、そう言う訳だから……あ、そっか。全部仕舞って、改めて仕分ければ良いのか?」

「はーい、じゃあお姉さんが残り仕舞っておきま〜す♪ 」


 次々に部屋からものがなくなっていき、空っぽになった。なかなか得難い経験だな…


「はぁ…もう何にどう突っ込めば良いのかわからない…疲れた…」

「今日ボルフェンクは一生分驚いたかもな。マリアちゃんはあまり驚かないね?」

「精霊さまやお師匠様まで出てきたら、もうそうそう驚かないですよぉ〜」


 そらそうだ。

 こうして俺たちはイルムヒルデさまの隠れ研究所?を後にした。




あらすじ イエス!パンロード!

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