冒険日誌【6/18】風の谷:女神の池の石碑の秘密
ナタリー姉「むか~し昔~♪ 」
ノエル 「あるところに~」
茎さま 『お?お話し始まった?』
ブランシュ「怖い姉妹と可憐な従者がおりましたデース♪」
エクトル 「台無しだよ!」
さて、今朝もいい天気である。
風がほとんど吹かないのでちょっと暑いくらい。
朝ごはんは宿屋の食堂で済ませることにして、
ついでに女将に聞いてみた。
「女将さん、この辺りに女神様の宿る池があると聞いたんだけど、どこだかわかりますか?」
「女神様なんて聞いた事ないねぇ…主がいるって噂の池なら町の北の外れの方にあったはずだよ」
「やっぱりヌシなのデース♪ 釣り上げるのデース♪ 」
ブランシュちゃんシャラップデース。
「とりあえず行ってみる?」
「そうだね」
「斧を投げるとザバーっと出てくるのよぉ〜♪ 正直者はいねぇか~?って♪ 」
姉さん…何かの物語と勘違いしてません?
それもどことなくブレンドされてるし…
「不気味な所らしいから、気を付けていくんだよ~」
「はーい、わかりました。ありがとうございます」
てっきり四方から流れ込む
川の合流地点が池なんだと思ってたけど
池は別に存在するのね。
小さな町なので10分も歩くと
北のはずれとやらに着く。
城壁があるわけじゃないので、
ここが境と思われるというあやふやなものだけど。
北の方の一角に、
高い木や蔦に覆われて見通しの悪い場所がある。
不気味ねえ。たしかにそうかも。
薄暗い木々の間を抜けて進むと、
唐突に視界が開ける。
周囲を芝に囲まれて
中央から懇々と清水が湧く
こじんまりとした泉だった。
「うわぁ〜♪ 綺麗〜な泉だわ!」
「薮の向こうにこんな綺麗な景色なんて…」
「早く斧を投げ込むデース♪ 」
一人悪ノリの娘がいますね。
「ここが目的地かどうか? 石碑探そうね?ブランシュちゃん?」
「はーいなのです」
そんな探す手間なく
目的の石碑っぽい物は見つかった。
思ったよりも苔むしていて
人が訪れた形跡もない。
「それではぁ〜♪ 」
「えっくん出番ですわよ? 」
「言われなくても!『言語理解』!」
こっちの石碑も古代精霊語だな。
内容は……
〜〜〜〜
請願
精霊術師ゴティアは、この池に宿る精霊ミズハノメとの盟約の成就あらん事を誓う。
成就する迄、精霊ミズハノメに於いては、我が願いをお聞き届け下さる事を願う。
〜〜〜〜
おお?
なんだこれ?えらい短いな。
「精霊使いさんは、ゴティアさんっていうのねぇ~♪ 」
「なんでこんな分かりづらい表現なのよ! 」
「成就するまでって何なのです? 」
三者三様で面白い。
ともあれ、思わせぶりな碑文だなぁ。
『マスター、くるぞ精霊様が。』
「え?茎さま、なんて?」
久々に登場の茎さまに話を聞く暇もなく、
泉の中央からスイカ位の大きな水玉が浮かび上がり、
怪しげに明滅したと思ったら、
『遅い!遅すぎるのじゃ〜〜!!!』
え?
水玉から女の子の声がする??
――――
『ゴティアが約束を果さんから待ちくたびれたのじゃ!いつまで妾を待たせれば気がすむのじゃ!』
なんか水玉さまがお怒りだ…
「あのぉ〜、俺たちゴティアさんではないんですが…」
『そんなの当たり前じゃ!』
まるで話が通じない…
「失礼ですが、貴女様はもしや、ミズハノメ様ではございませんか? 」
ノエルちゃんのフォーマル仕様である。
『そうじゃ、妾は水の精霊ミズハノメ。気軽に「ミズハちゃん」と呼ぶが良いぞ?』
精霊様にちゃん付けなんて恐れ多い。
「ミズハさま。私の名はエクトルと申します。我々に如何な御用でございましょう?」
怒らせないように…丁寧に…
『エクトル!そなた、ゴティアの子孫として、盟約を果たしに参ったのであろう?』
「は?俺?ゴティアの子孫?」
しまった。理解が追いつかない。
「えっくんにそんな名前の親戚いたかしら?」
「エクトルくんの…ご先祖さまが、ゴティアさん?」
「ご先祖さまどころか、父母の名前くらいしか知らないよ?うち、そんな大層な名家じゃないし…」
『ごちゃごちゃ往生際が悪いのぉ〜エクトル。妾が庵に招くゆえ、そこで話聞かせてしんぜようぞ?奥たちもついて参れ。いざ!』
水玉から目も開けられぬほどの閃光が迸り、
体が得体の知れない浮遊感に包まれる。
「きゃ!」「え?え?」「浮かんでるです?」
彼女たちも一緒らしい。
目も開けられず、足も地面に付かず、
漂い、一瞬ふっと意識が途切れた、
と思いきや、不可思議な建物の中にいた。
約6m四方で、天井は3mほど。
白く塗られた壁と朱の柱に囲まれて、
天井近くに小さな窓が二つあるだけの
変わった部屋の中にいた。
部屋の中央には、先ほどの水玉が浮かび、
その前に横並びで四つ、小さな折り畳み椅子がある。
何か促されたような気がして
その椅子に座った。
女の子たちも俺を見て慌てて座る。
『さて、エクトルは何も知らぬようじゃから、妾の昔話を聞かせようかの?』
事態の不可解さにも慣れたのか?
皆静かに頷く。
『妾はこの湧き水の泉の精。精霊術師のゴティアに請われ具現化し自我を持つようになった。ゴティアの願いはただ一つ。妾が四方の川の水に対してやるように、風の流れ道を定め、風を導く事」
「精霊様は、ゴティア氏に請われることにより、自我を持つに至ったんですの?」
『左様。精霊は人の想いや希望を核に具現化するものじゃからの……そして風の精霊と協力して風を流し、竜巻も起きなくなったんじゃがの……」
水玉様は憂いに満ちた表情を…
あれ?水の玉なのになんで表情が??
『ゴティアは妾とは契約してくれなかったんじゃ〜〜〜o(`ω´ )o』
あ、瞳からハイライトが消えた(気がする)。
『風の小娘とは契約しておきながら、妾とは今度今度と先延ばしして、終いには「子孫で見込みのあるやつをここに来させるから、それまで待ってて?」などと謀りおったんじゃ〜〜(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ 石碑に証文まで書かせたのに、待てど暮らせど子孫は現れぬ…』
「酷い!なんたる仕打ちか!乙女の純情を弄ぶとは!」
はい、鬼が増えましたね…(遠い目)
「ミズハちゃん、かわいそうですの…」
「都合のいい事ばかり言って、乙女の敵よね?」
ゴティアさん…
うちの美少女たちを完全に敵に回しましたね…
『で、そこに現れたのが、エクトル、お主じゃ』
うん、俺、ここ来たね。
『やっとゴティアが約束を守ったんじゃ』
はい、ここからおかしい。
「ミズハ様、俺は話を聞くまで何も知らなかったし、そもそもゴティアさんとは何の繋がりもない一般人ですよ?」
『馬鹿を申せ。ゴティアの家紋のついたナイフ、ゴティアと同じ黒髪黒目の青年、魂の波動もゴティアと瓜二つ、そして何より、知性ある魔法のロッドの所有者ではないか!』
「家紋って?この紐の先にある印のことか?」
姉さん、槍振り回すと危ないですよ〜
『それじゃ、貴女らは奥でありながら知らなかったのか?』
ミズハ様、心底不思議そう。
水玉だけどね。
「黒髪はともかく、黒目は珍しいわよね〜。トリスタンさんも黒目だけど、二人以外見たことないわね」
ノエルちゃん、その発言は…
まぁいいや、そんなことより、
「茎さま、前のご主人はゴティアさんだったの?」
『いや、俺を作った魔導師以外、主人はマスターだけだぞ?あの魔導師、ある日突然祭壇に俺を差してどっかに行っちまいやがったからな』
ああ、茎さまからも目のハイライトが…
「ミズハ様、この魔法のロッドはゴティアさんとは無関係みたいですよ?」
『たわけ!ゴティアは去り際にこう言ったんじゃ。「知性を持つ魔法の武具を手にしてるから一目でわかるはずだ」と。』
それ、ゴティアさんの苦し紛れか、
もしくは別の茎さまですよ。
ひょっとしたら茎さまの兄弟姉妹かもしれないけど。
『というわけで、エクトルがゴティアとの盟約の証なのは確定的に明らかじゃ!さあ、エクトル。妾と契約するのじゃ♪(≧∇≦)』
え?え?
やっぱりそういう流れなの??
ノエルちゃんを見ると、苦笑い。
残り二人は…ワクワクしてるような…
「ミズハ様、いきなり契約しろと言われても……」
『泣くのじゃ…』
「は?」
『妾は泣いちゃうのじゃ…』
水玉からコロコロと涙らしきものが流れ落ちてる!
ミズハ様!身体?が減っちゃう!
何言ってるか自分でもわからないけど。
『…そして…ヤケになった妾は水の力を解放して暴れ廻ってやる……そして儚く消えるのじゃ…』
うわぁ、泣き落としの後は脅迫だよ〜
もう詰んでるじゃねーか!
「ふふふ…えっくん、諦めが悪いですわよ?」
「エクトルは高貴なるものに好かれる体質なのだな」
「さすがご主人さまなのです!」
うん、ダメだわ、四面楚歌(笑)
「わ、わかりました、ミズハ様。不肖この私めで宜しければ契約者となりましょう」
『うむ!盟約は果たされたのじゃ!』
「ところで、契約とはどのようにすれば?」
代筆屋なんてものをやっていたから、
契約にはうるさいのだ。俺。
なんかもう何年もやってない気もするが…
『簡単な事じゃ!うーむ…せっかくエクトルが好みの殿方だから、これでは雰囲気が出ないのぅ…』
そういうと、
目の前にいた水玉だったものは
少し大きくなってもにょもにょ姿を変え、
全裸の美女に姿を変えた。
黒髪黒目は俺と同じ。
身長は俺よりちょっとだけ低いくらいの長身。
ボンキュボンで目のやり場に困る
ナイスなプロポーション。
吊り目気味でちょっとだけキツそうだが
文句なしの美女である。
俺たちがあまりの変身っぷりに呆然としていると、
さっきまで水玉だったはずのミズハ様は
俺の首の後ろに手を回し、全身密着しながら
唇を重ねてきた。
「ん!…」
何か身体の奥から吸い出されるような感覚とともに、
尾てい骨あたりから背筋をなぞるように
電撃のような快感が走り抜け、思わず声が出る。
数秒の後、静けさがやってくる。
うーん、この感覚、一番近いのは賢者タイムだな…
『ご馳走さま…なのじゃ…』
ミズハ様はウットリしながら、唇に着いた何かを舐めとるように舌を這わせている。
「「「 あ゛あ゛あ゛〜〜〜〜〜!!!」」」
我に返った女性陣から悲鳴のような叫び声が挙がる。
『ちょっとエクトルの「命の素」を分けてもらっただけじゃ。これで契約は完了じゃ。宜しくな契約者殿♪ 』
なんかヤバイもの奪われたんだろうか?
この手のお話では代償にとんでも要求されたりしない?
『心配には及ばぬぞ?そなたの煩悩を吸っただけじゃ。すぐにまた溜まるであろう?』
溜まるって…
あの吸われた感覚といい、やはりあれだろうか…
ミズハ様はいつのまにか、
キャーキャーうるさい女性陣の元に行き
小声でヒソヒソ何やら話しかけている、
ピタっと静かになり、真剣に聞く彼女たち。
なぜ顔を赤らめているのだろう?
ノエルちゃんは何か葛藤してる雰囲気だが、
二人はニコニコニヤニヤ嬉しそうだ。
こういう時はロクな事が起きないんだよな…
「そんな事より、服着てくださいお願いします」
まず起きてる問題から対処しないとね。
『契約者殿は小うるさいのぉ…』
ミズハさまがくるりと回転すると、
いつのまにか裾が広がったガウンのようなものを
着ていた。
これでも悩殺過ぎるんだが、
まぁさっきまでよりはマシか…
『さて、契約関連は片付いた事だし、これからの事じゃの。妾に魔力が戻ったのでこの町の仕組みは元に戻るだろう。エクトル達はまた旅に出るのか?』
「はい。王都に向かう途中なのです。」
『そうか…妾はここから離れられないからな…』
少し寂しそうな顔をして、俯く。
意外だな。てっきり一緒についてくるもんだと思ったけど。
そうだよね、この泉に宿った精霊さんだもの、
ここから離れられないよね。
『そうだ、妾の分身を連れて行くのじゃ♪ 』
そういうと、ミズハ様の指先から
ピンポン玉くらいの水玉が現れた。
ミニ水玉は俺の前までフワフワ飛んできて、
目の前でパチンと弾け、霧になって消えた。
「ミズハ様、消えてしまいましたが…」
『ミズハじゃ』
「は?」
『ミ・ズ・ハ・ と呼ぶのじゃ。契約したのだからな…』
「ミズハさま?」
『(シーン)』
「ミ、ミズハ?』
『なんじゃ?(ニッコリ)』
あー面倒くさいな。この脅迫女神さまは…
「分身が消えちゃいましたが?」
『大丈夫じゃ。名前を呼べばすぐに現れるぞ?分身は具現化に魔力を使うからな。普段は霧になってせーぶするのじゃ。』
なるほど、わかったようなわからないような。
『分身は妾と繋がっているから、妾も旅に同行するようなものじゃ。気軽に呼び出すが良いぞ?魔力供給も分身越しでバッチリじゃ』
え?あれ?契約の儀式じゃなかったの??
あらすじ 女神降臨。




