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12日目 夕方 戦い済んで日が暮れて……すべてが動きだす

ノエル 「わたくし今回、最初から最後まで大活躍いたしますの」

エクトル「……(顔真っ赤)」

ナタリー「お姉さんに話してみそ?」

著者  「お姉さん……いつの生まれですか???」

「えっくん…」

「エクトルくん? 」


ん?

心地よい声が耳を通り過ぎていく。


『エクトルーおいでーおいでー』

やばい、会ったこともないおじいちゃんの声が大きな川の向こうから聞こえる。

会ったことないのに誰だかわかる。

やばい。そっちには行けない。


――――


ガバッと起き上がると、

ん?ここは天国?


「えっくん〜〜 」

「エクトル〜〜」


美少女が2人、目を真っ赤にして抱きついて来た。

幸せだなぁ。

2人が鎧じゃなかったら。


ぐはっ…息ができない胸当てがイタイ…

やべ、また意識が…


――――


「ごめんねえっくん…わたくし…が……だったばっかり…に…」


この必死に謝るかわいい娘はノエルちゃんだな。

だんだん覚醒してくる。


ここはテントの中、

外は色調が赤いから夕方?

あれ?昼過ぎに裏から回って侵入、

毒食らって倒れて?

そんな時間経ってる?


「ごめん心配かけちゃったみたいだね」


ふんわりと抱きついたノエルちゃんの頭を撫でながら

(あれ?帽子ないな)

右手を握って切なそうにするナタリーさんに笑顔を向ける。


「助けてくれたんでしょ?ありがとう」

「えっくん…良かった…良かったよぅ……」

「エクトル…無事…なのね? 」


ちょっとまだフラフラするけど、

俺はもう大丈夫だよ。


『すまん…マスター。俺としたことが、ST(セービングスロー)の説明がまだだった』


茎さままで殊勝だと調子が狂うよ。

ん?殊勝でもないか?


『毒や魔法、ドラゴンブレスなど食らうとひとたまりもないピンチの時に、それから逃れられるかどうかの判定がSTだ。20面ダイスを振って基準値以上を出せばいい。低レベルのうちは正直言って厳しい数値だが、成功すれば、例えば毒なら無効にできる。やって損はない』


なるほど。

攻撃食らった時に茎さまが叫んでいたのはこれか。


この成否を分ける運命の基準値が、毒であれば13か…

成功率4割。

なかなかにシビアだ。


『本来、これに徹底的に有利に働くのが、お嬢の特殊神聖魔法というわけだな』

「お任せくださいな〜♪ 」


ノエルちゃんが安心したのか、ちょっと通常運行になってくれた。


『まぁこんな変換(インチキ)、お嬢くらいしか使えないけどな』


さりげなく、まーた爆弾を撒く茎さま。


――――


大分回復した気がしたので、テントを出る。


そうか、このテントは洞窟の入り口傍に

即席で建ててくれたのか。


「お~英雄さまのお出ましだ~」

「かわい娘ちゃん泣かせやがって~」

「わっしょいわっしょい~」


ん?なんだ?

板っ切れに棒を付けたようなものに

無理やり寝かされて担がれた。

担がれたままどこかに運ばれていく……


なんの罰ゲームだ?これ。

跳ねるな、イタイイタイ。


――――


きこりの村までずっと担がれ続け

着いたと思ったら村中お祭り騒ぎだった。


無事にゴブリンは一掃され、結構な金銀貨などが

出てきたようだ。


戦闘もケガを負ったものは多かった。

それでも、

ケガをしたものを下げ、

元気なものを代わりに繰り出す作戦で

ゴブリンたちと対峙している間に、

うちの女性陣二人が一掃したので死者は出なかった。


特に俺が倒れた後は

鬼神のごとく暴れまわったらしい。

見たかったような見なくてよかったような。


恐縮した隊長が、宝物庫の財宝を俺たちパーティに委ねようとしたのだが…

丁重にお断りした。

宝探しは山分けが基本にして絶対のルールだからね。

これを徹底できないと、チーム全体の勝利に向けての動きが取れなくなってヤバいから。


結局、参加者全員で山分けとなったのだが、

それでも一人頭、1,000G にもなった。

ノエルちゃんは3レベルに。

ナタリーさんも後一息のようだ。

俺はまだ遠いが。魔術師は辛い。

ギルドの中でも結構な人がレベルアップした。


金の件が皆に伝わったら、

尚更お祭り騒ぎが酷くなった。


俺たちのところまでやってきて、

律儀にも礼を言う人もいるが、

当たり前の事をしたまで、なので反応に困る。

俺は肝心なところで警戒を怠り、

倒れてただけだし、余計にね。


――――


隊長が俺を呼んでるらしいので、

ノエルちゃんとナタリーさんを連れて

作戦本部のテントに向かう。

(こっちのテントは常設で、壁がなく屋根しかないものの広い)


テントに入ると、隊長とギルド長が深刻な顔をして待っていた。


目の前のテーブルの上には、

ボロボロになった背負い鞄、

盗賊ギルドのネームプレート、

破れた帳面の一部、

ギルドの焼印が押された紙に包まれた薬草

が置いてあった。


ギルド長は、


「これらは、ここにある鞄に入っていたもので、この鞄はゴブリンの宝物庫から出てきたものだ。ネームプレートから察するに、盗賊ギルドの者、そして今回我々の街との連絡役を兼任していたやつだ。不幸にもゴブリンに襲われ、彼らにとって価値のわからないものを一緒くたに纏めたんだろう。」


「これで済めば、この盗賊も無念だったろう、という話で済んだのだが、薬草があったから、この者の横流し疑惑が発生してな。それでこの帳面を読もうと思ったのだが、我々には読めない言葉だった」


隊長が続く。

ん?もしや西方語?


「そこで、エクトル君の出番だ。君は代筆屋をやっていたそうだし、その手の言葉の問題には強いのではないのかな?」


ギルド長が俺にその帳面を手渡す。


確かに俺は色々な言葉を扱ってきたから見れば大体どこの言葉かわかるし、最悪『言語理解』の魔法もある。


幸いなことに、今日二つ使える呪文の一つは言語理解を覚えてきたのだ。

(もう一つは眠りの霧、使用済み)


村に戻ったら、何か手掛かりでもあるかなぁと

漠然と思って覚えてきたのだが、

こうも都合よくいくとはね!


『言語理解!』


いや、別に呪文名唱えなくても発動するんだけど、

こういうのは雰囲気が大事、というか…


文書の最初は、


【獣人研究所の真の目的とは】で始まっている。


「獣人研究所って知ってます?隊長」

「いや、知らんな…」


【我々、「常闇の聖峰」の顧客の希望は、常に清純且つ従順なる奴隷(しもべ)である。奴隷解放の悪法が施行された今も尚、この聖宝には無限の価値と可能性がある。顧客のニーズは絶えることがないからだ。】


「なにそれ! 奴隷取引なんてとっくに禁止されてるじゃないの!」

「まぁ、先を聞こう。続けてくれ」

ナタリーさんは既にご立腹だ。


【生娘をさらうやり方では、年々厳しくなってきた。また、顧客の中には、魔術の生贄として買い求める者もおり、それには魂の清純さも必要とされる。そこで設立したのが「獣人研究所」。獣人の人間化と魂の洗浄を研究し、ゆくゆくは人間への魂の洗浄適応を目的とする】


「「「………」」」


あまりの酷さに全員絶句する。


そのあとは断片的にしか残っていなかったが、山の獣人村を襲い実験体として確保した、とか、固有能力の抽出と物質化に成功した、とか、魂の洗浄が名前にまで及ぶと発狂して失敗だ、とか、暴れる実験体の抑え込む手立てが必要、とか、生々しい日誌形式になっていた。ゴブリンの襲来で拠点を破棄、なんてものもある。


「……酷い…ですわ…」

「こいつら全員槍の錆びにしてくれよう…」


ナタリーさん、気持ちはわかりますが、

落ち着いてください。お願いします。

怖すぎて冷静になっちゃいます。


あれ?

この記述にしっかりくる現実をどこかで

目にしてないか?俺たち。


『ブランシュ、だろうな』


俺たちは一斉に気がつく。

彼女の境遇や状態は…まさか……


隊長は相変わらず首をひねったまま。


「お前たちは何か心当たりがあるようだな。俺が分からないのは、この紙切れをなぜ連絡員が持っていたのか?だ」


そう言われると…

もう一度、その観点で日誌を見直すと、

街との間を往復する男の名前が浮かび上がった。

別のページには、地図のようなものもあり、

俺たちが知ってる洞窟も印が付いている。

街の中の印は研究所本体だろうか。


「こ奴…このおぞましい組織の一員だったのか…」

「我々の連絡要員に推薦したのは確か……」

「第五小隊リーダー、エンゾです…」

「盗賊ギルドも噛んでおったか……」


ギルド長と隊長が沈痛な面持ちで確認し合う。

溢れる憤怒を隠そうともしない。


俺たちは別のことで動転していた。

こっそり茎さまがメッセージ機能をONにする。


『この印、わたくしたちが行ったあの洞窟よね? 』

『街の中のやつが本拠地だろうな』

『ブランシュちゃんの謎を解く鍵も…』

『叩き潰して謎を解くしかないな…ふふふふ』


ナタリーさんが憤怒のあまり、

ドスの効いた低音ボイスになっていらっしゃる。


ナタリーさんは普段はあんな感じだが、

本性は秩序やルールの鬼だ。

今リアル鬼と化してるのはまた別の話だ。


俺とノエルちゃんが可愛い女の子の不幸という

個人的な憤りを感じているのと違い、

いやそれ以上に、

社会の秩序に対する挑戦に怒り心頭である。

まだ知り合ったばかりだがわかる。

そういう人だ。


「我が冒険者ギルドは、不甲斐ないが正面から事を構えても勝ち目がないから裏から調査と工作をする。エクトルたちは別に事情があるようだし、我々に出来ることなら手を貸そう」

「まずはエンゾ近辺から洗うことにしようかの。奴は今や仮想敵だと思われるしな」


隊長とギルド長が特に詮索をせずに

協力してくれるのはありがたい。

正解に近づいているとは思うが、

謎がまだまだ多い。


「敵も事態に気づいていると考えた方がいいだろう。なるべく急いだほうがいい。本拠地に向かうのか?」


隊長が俺に尋ねる。

二人に目線で確認を取る。


「はい、そのつもりです」

「では、明日朝早く立つとよい。夜はまだまだ危険だし、魔法の補充もあるじゃろうしな」


残念だがその通りだ。

気は急くものの待つことも必要だ。

油断してやられたのはついさっきのことだ。


「それまではこのお祭り騒ぎを堪能するとよいぞ。人間緊張ばかりでは続かないもんじゃ」


ギルド長はそう言うと笑って去っていった。


「まずはご飯よぉ~♪ 」

「鋭気を養わないと、ですわね」


俺は苦笑いしながら、

努めて平静でいようと心がけ、

テントを出てお祭り騒ぎへと向かった。


――――


ノエルちゃんはレベルアップに伴い、

HPが増加してナタリーさんを超えた。

どうも失敗して特殊神聖魔法(インチキ)のお世話になったらしい。

普通の魔法もLV.1が2回に増えたのが

心強い。

傷回復小の他、水食糧浄化や耐寒など

他の使える魔法に振り分ける余裕も。


―――― 変更点はこちら ――――

(キャラクターネーム)ノエル=メルシエ

(レベル) 3  <= レベルアップ

(ヒットポイント)24( 18+6)<= MAX増加

(呪文)

●神官魔法 LV.1 × 2(/日)<= 1回増加

(装備)

メイス、バックラー、バンデッドメイル(特注)、聖印イヤリング、帽子 <= 帽子が増えた

(特殊装備)

●天使の羽(種類:帽子につけるアクセサリー・神官用)

 <通常機能>

 ・祝福(1回/日)

  => 1戦闘中全ダイスの出目に+1 or -1(効果が高くなる方)

(特殊能力)

●特殊神聖魔法:ダイス変換 Lv.3(3回/日)<= レベルアップ&回数増加

→ 視認したダイスの目全てを任意の数で上書きする。ターンに関係なく任意のタイミングで実行可能

―――― ここまで ――――


帽子は普通だったが、

それについている羽が魔法の品だった!


あれ?同じような羽がナタリーさんにも

ついていたよな?あっちも魔法の品かな?


「うふふ♪ レベルアップした時に教えてあ・げ・る♪ 」


インチキ魔法もパワーアップ。

回数が増えただけじゃなく、

発動が任意ということは通常戦闘中問わず

イニシアチブ判定の順番も無視して

発動できる規格外さ。


――――


夜も更けてみな酔いつぶれて

ごろ寝を始める。


俺は、殊勲者で病み上がり、

ということで簡易テントを与えられた。


今日も色々あったなぁ。

反省もいっぱいだ。


疲労に負けウトウトしていると

テントの入り口からゴソゴソ

天使が一人侵入してきた。


「えっくん…今日はごめんね…守ってあげられなかった…」


今更起きてますとも言えず

目を瞑ってじっとしている。


「次は頑張るから……絶対傷つけさせたりしないよ?」


いやいや、俺は

ノエルちゃんが傷つく方が嫌なんですけど。

俺が守るさ……って言えないのが辛い。

装甲ペラペラだからな。魔術師……


「ご褒美もお預けだけど……」


ノエルちゃんの手が俺の頬に添えられる。

ん?何事?


ちゅっ♪

唇に柔らかなものが触れる。


ドキドキドキドキ

え?え?え?え?

体は硬直し瞼も開けられないが、

開けられないけど、あれだよね~!!!


「うふふっ♪ このくらいはいいよね? 」


ドキドキドキドキ


「おやすみ♪ 愛しい人……」


ばれたかな?

起きてるのばれたかな?


人生初の出来事を楽しむ余韻もなく

ばれたかどうかが気になる俺だった。

ヘタレまっしぐらだな。


『おいマスター、【未獲得経験値一覧】に1行増えているぜ?』


さらに台無しだよ、茎さま~~!


――――


「音信不通か、やられたかな?」


窓から外の景色を眺め、エンゾはつぶやいた。


「召集かけて今後を決めるとしようか」


呼び鈴を鳴らし誰かを待つ。


「探りを入れないとな…状況によっては……」


ドアがノックされる音がする。

夜は静かに更けていく。




あらすじ 初●●の記念すべき回なのにエンゾにかき消される

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