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六日目 午後 装備品鑑賞会

冒険者ギルドも実情は中々に世知辛いようです。

冒険ギルドの模擬戦は、部隊の組み合わせを替え、岩場風の地形でもう一戦行われた。


俺はさっきのような見せ場は作れなかったが、女性陣は相変わらず鬼と化していた。

それ以上にリーダーのエンゾさんが岩陰から暗殺しまくりで凄かった。


こうして最初の合同訓練は無事に終わった。

第五小隊は大活躍といってもいいと思う。


個人的にも、

こうやって後ろから見ていると、連携の練度や状況判断のいい訓練になる。


だけど……

冒険者ってこういうものだったっけ?

これ、小規模の軍事訓練だよね?

冒険者って冒険してお宝ウハウハじゃないの?

どうしても気になったので【岩崩し】隊長であり、ギルド副団長でもあるアーチャウさんに疑問をぶつけてみた。


「まぁ普通そう思うわな。」


隊長はそう切り出した。


「冒険者は本来、魔物を狩って報酬を得たり、宝を探して一攫千金を狙うものだ。だが、この街はちょっと特殊でな……」


何か事情がある?


「街の周りは危険な魔獣やモンスターがほとんどいない。街から離れればそれなりにヤバい奴がいるポイントはあるし、街道沿いの村からは討伐の依頼もちょくちょく来る。」


確かに街の周囲は安全だ。

魔道具の素材集めで魔物を見たこともない。

街から離れたらそれなりにいるようだが、何しろ俺は見たことがない。


「人間はひ弱な生物だ。魔物と相対するとすぐにやられて死んでしまう。強くなろうにも、近くに手頃な魔物がいる訳ではないから成長もできない。」


街の近くに弱い魔物、離れた奥地に強い魔物という生態なら都合が良いのだが、そうは問屋が卸してくれない。育成のために神様が配置してくれる訳じゃないのだ。


「ベテランの冒険者は討伐依頼をこなせるかもしれないが、何せ人も少ない貧しい村の依頼だ。依頼料が高いはずがない。力のある冒険者にとっては、そんな依頼は魅力が無いのだよ。」


世知辛い話になって来たが、まぁそうだろう。


「依頼は溜まる、若い連中は経験を積めず燻り、討伐に行っても返り討ち。これではギルドは存続できない。そこで、若手集団で数を頼りに依頼された魔物を討伐する事にしたのだ。これなら依頼料が塩っぱくても元々食うに困る連中なら耐えられるし、その経験で強くなれるならば、指名依頼で儲けるにせよ宝探しに出るにせよ、将来の自分に投資してるのだから納得もいく。ギルドも依頼をこなせるので面目が立つ。」


一人で倒すような魔物を四人がかりです倒すのなら安全度は増すだろう。その積み重ねで強くなれるなら文句は出ない。村の人も退治してくれるなら掛けた人数はどうでもいい話だろう。


「で、集団で魔物を狩る訓練に模擬戦を始めたのだが、これが思わぬ副産物を生み出した。合同訓練を数こなしたベテランは、高給で兵士や用心棒に雇われるようになったのだ。今はこの強者養成所としてのニーズがギルドに求められるようになって来た。皆知っての通り、兵士や護衛は安定した人気職だからな。」


こう繋がるのか……


「訓練にせよ討伐にせよ、たまにしかやらないのは、暇な時に副業で生活費を稼いでもらうためだったりする。最近は訓練だけ出席して討伐には参加しない者も増えてきた。エクトルが疑問に思うのには、こういう背景があるわけさ。」


なるほど、これは夢がないわ……堅実で……

冒険が楽しそうだからと答えた俺たちは変わり者なんだろうな。


「お前達には期待しているよ。昔の物語に出てくる冒険者のようだ(笑)」


――――


ギルドの予定が終了したので、俺たちは昨日の防具屋に再び向かう事にした。

エンゾさんはまたどこかに行ってしまった。


今日はナタリーさんの鎧が出来上がってるハズである。昨日完成したノエルちゃんの鎧は引き取らずそのまま預けてあるので今日纏めて引き取る手筈だ。


お金を払う必要があるので、私の部屋に途中立ち寄る。


「うーん、いいなぁいいなぁ〜♪ 二人の愛の巣か〜♪ 羨ましいな♪ 」

「あ、愛の……巣?!」

「やだなぁ、俺が借りてる部屋ですよー。愛の巣だなんてまだまだ……」


まだまだって何だ?自分で言ってて意味わからないな。


『そう言いながらお嬢もマスターも顔真っ赤じゃねーか』


茎さまは意地悪だ。


「あらあら、愛の巣じゃぁないの〜?」


そんな艶っぽい瞳で聞かないでください。ナタリーさん。


なんか居たたまれなくなって、早々に金袋を掴むと、防具屋に向けて歩き始めた。

ナタリーさんとノエルちゃんが何かコソコソ話してるけど気にしない。敢えて気にしない。


防具屋に着くと店主が笑顔で迎えてくれた。

ウキウキした女性陣が店主と一緒に奥に消えていった。


出されたお茶を堪能しながら、飾ってある鎧を眺める。


盗賊の鎧は隠密を要求されるから皮鎧しか着られないんだよな。

全体的に暗い目立たない色合いが多い。


音がしない、なら今度の二人の鎧も使えると思うんだけど、そこは世界の法典(ルールブック)の制限を超えられないんだろうな。

魔改造して効果そのままって戦士優遇されてない?

魔術師の僻みですか、そうですか。


そういえば、

ノエルちゃんの鎧は白地に赤のアクセントだけど、ナタリーさんはどういう色遣いにするんだろう?

後、盾も買うんだよね?

鎧があれだけ凝ってるのに盾が普通だと釣り合わないよね?


そんなことをボンヤリ考えていると、奥から二人がきゃーきゃー賑やかに戻ってきた。


ゴクリ……

思わず見とれて言葉を失う。


かたや……

身長160cm、大きな双丘とお尻をお持ちの、全体的に柔らかなイメージの美少女ノエルちゃん。白地に赤の鎧は女神の御使いにぴったり。

かたや……

身長170cm近い長身ながら、スレンダーでシャープなイメージの美少女ナタリーさん。同じく白地に青のアクセントに仕上げてきました。青み掛かったブランドの髪にもマッチしクールな印象。本人が平時は割とホワホワしてるのでギャップ萌え?


二人、全然タイプが違うのにどちらも甲乙付けがたい可愛さで似合っている。


「改めて、どうかしら?」

「組み合わせも考えたのよぉ〜似合う〜?」


「はい……とっても……」


ぽーっと顔が赤くなるのが自分でわかる。


「きゃ〜やったねノエルちゃん〜♪ 喜んでもらえたよ〜♪ 」

「わかりましたから……くっつき過ぎですわ〜」


ナタリーさんがノエルちゃんに抱きつく恒例の姿を見て幸せに浸る。


「そういえば、盾はどうしたの?」

「ほら、これですわ?」


ノエルちゃんが左腕を前に突き出して、右手で左腕のポコっと少し飛び出た突起のようなものを押す。

カシャンと音がして、棒が飛び出して扇のように勝手に広がり、気がつくと円盤のようになっていた。


「こちらもお嬢様にリクエスト頂いた、収納型バックラーとなります。一見弱そうですが、ちゃんと機能する、不思議物です。お嬢様に言われるまで考えた事もありませんでしたが……」


盾って固い金属でがっちり造ってあるからこそ盾として仕事するんだなと思うよね。誰でも。

でも実際は、ルールに則った物体のみが盾として認識される、という直感的とは言えない落とし穴がね……

でも、店主は新たな稼ぎ口を見つけてウハウハな雰囲気だ。商人の鏡。


ナタリーさんの分の金額を支払い、防具屋を出た。

ノエルちゃんの分は商会同士で支払い済みらしい。


――――


外界で見る二人は眩しくて天使だった。

ノエルちゃんは想定のうちだが、ナタリーさんにここまでやられるとは……


「えっくん、どう?わたくしに見とれてるんじゃなくって♪」

「エクトルくん~♪ ホントにありがとう♪ 大事にするからね~♪ 」


二人に腕を組まれ、呆ける俺。


このまま、二人の新しい鎧のお祝いにと晩御飯に繰り出したのだが、

見たことのない鎧をまとった美少女二人を引き連れた俺への周囲の嫉妬や怨嗟の視線は凄かった。

ちょっと居たたまれない……というわけで早めに切り上げてしまった。


「ねぇ~♪ 二人とも明日暇~? この鎧来てお外に修行に行きましょうよ~♪」


特に俺たちも用事があるわけではないので、OKする。


「じゃぁ~ 明日の朝二人の愛の巣にお邪魔するわね~♪」


あ、いや、アタフタアタフタ……

相変わらず免疫のない二人である。




あらすじ 主人公だけ美味しい

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