四日目 魔道具屋(彼女の実家)
彼女の実家に行くってとんでもない勇気が必要ですよね?
彼女ができたらホイホイ家に遊びに行けちゃう友人を密かに勇者と尊敬してました。
今日は茎さまと出会って四日目。
ここ三日ほどノエルちゃんがうちに来ていたが、今日は彼女の実家、メルシエ商会に行くことになっている。
メルシエ商会は街最大の魔道具商として、各種魔法素材の買取、精製、魔道具・ポーション類の製造、納品、引き取り、オークション開催など魔法に関する品を一通り扱う大店である。
現当主パウロ氏には妻と二男二女がおり、その次女(四人中3番目)がノエルちゃんとなる。そう、大商人のお嬢様な訳だ。一方俺の実家は各地を飛び回り変なものを仕入れるちっぽけな骨董屋。幼馴染という奇跡のコラボは、パウロ氏と父が昔からの大の仲良しさんなことに起因する。
昔はよく遊びに行ったとはいえ、俺も素材納品をするようになってからは不必要に立ち入らないようになっていた。新人魔術師が我が物顔で出入りするのは気が引けたからだ。今日は改めてのご挨拶なのだがどんな顔して訪問すればいいのだろう。
さて身支度を整えると家を出て、五分ほどで店の前までついた。今日はお店そのものに用がある訳ではないので、裏通り側にある居館の門の前に移動する。ひと区画丸ごとだから十分過ぎるくらいでかい。
守衛さんに一声かけて門を開けてもらうと、ノエルちゃんが玄関前で待ってくれていた。
「おはよう、待った?」
「おはよう、ううん、今来たところよ?」
『またやってるよ…』
ノエルちゃんの案内で玄関を潜り、パウロ氏の待つ書斎へと足を踏み入れる。
「やあやあ、エクトルくん、なんだか久しぶりな感じだね。」
「パウロさん、ご無沙汰しております。」
挨拶もそこそこに本題に入る。知らない顔のメイドさんが上品な香りの紅茶を淹れてくれた。
俺は、ダイス神の天啓を受け(以前決めたストーリー通り)冒険者となるノエルちゃんについて魔術師として修行しながら同行すること、
この街にいる時は素材納品は続けるが代筆屋は廃業したことを告げ了承をもらった。すでにノエルちゃんから聞いているだろうから新しい情報も特に無かったのだろう。代筆屋をコネで紹介してもらった件に関する不義理を詫びるとそれも笑って許してくれた。
「代筆屋なんて繋ぎなんだから問題ない。むしろずっとやると言われたら、どうお尻を叩いて向かせるかと…」
ん?代筆屋でベテランになってはイケナイように聞こえるけど…
「いやー冒険者か懐かしいなー。エクトルくんも顔つきがサマになってきたし、楽しみだね。」
あれ?パウロさんも冒険者だったことがあるみたいな口ぶりだな。
「おう、そうだ、我が友人である君の父上から、君が一人前になる時に渡してくれ、と預かってる品があるんだった。」
と言って、豪奢な事務机の脇の引出しから小さな箱を取り出した。その瞬間、今まで無言だった茎さまがモゾモゾし始めた。棒だけなのにモゾモゾを表現できるって凄い。
箱を開けると、親指の先くらいある、七色に輝く透明な石が幾つか入っていた。なんだろう?これ?
「それは、魔石 と言って、魔道具の材料になったりお守りになったりする魔力が込められた宝石だ。結構貴重なものだが、君の父上が昔集めたもので家宝扱いなんだそうだ。旅のお供に持っていくといい。」
茎さまから興奮の波動が伝わってくる。
「そうそう、それからこれが我がメルシエ商会から君への餞別の品だ。」
もう一つ、大きさも見た目も同じような箱をもう一つ受け取った。中を開けると術式が刻まれたシンプルなデザインの銀の指輪が二つ入っていた。
うわ、お揃いの指輪!それってそれって…ブツブツ…
いかん!妄想退散妄想退散!今キョドってる場合じゃない。
「ウィザードリングの亜種だ。造った大魔道が余程凝り性だったらしく、機能面は破格だ。受け取ってくれたまえ。」
「そんな凄いモノいただいてもよろしいのですか?」
「他ならぬ君の門出だ。俗なものでセンスがなくて悪いね。」
「いえいえとんでもありません。ありがたく使わせてもらいます。」
ノエルちゃんもサプライズだったらしく瞳をキラキラさせてる!大丈夫だよ。二つあったらその内の一つは常に君のものだよ?ほら、心配そうにこっち見ないで。
貰うもの貰ったから、というわけではないが、長居してると余計なこと喋ってボロを出しそうだったので、そこそこに退散した。
ちゃんと鑑定をしたいから、と茎さまが急かすので、五分の道をとって返し帰宅する。
居間のソファーに二人仲良く並んで座り、茎さまに尋ねる。
「茎さま鑑定ってどうすればいい?」
「わしから見えるように鑑定したいものを並べてくれればええで?」
茎さま興奮の波動が伝わってくるのはいいけど、言葉遣い変になっとるで?
見えるようにと言われても茎さま目無いし!というわけで適当に二つの箱を並べて蓋を開けた。
スゥッと少し茎さまが輝いたような気がして、それから一瞬のような結構時間が経ったような、不思議な感覚の後、驚きの波動と共に淡々と話し始めた。
「俺には 鑑定って言うオリジナルスキルがある。俺は人ではなく意思もつ魔道具だから判定ルールがちょっと違うのだが、それでも自分より高位のモノには成功しない、という基本ルールは同じだ。その結果、指輪と魔石のうちの一つは成功、魔石の残りはわからない、だった。」
茎さまの鑑定結果は以下。
●生命の絆(種類:魔法の指輪ペア)
<通常機能>
・プロテクション+2 (ACに-2)
・器用+1 (能力値の器用の値を+1、ボーナス変動有)
・自在鞄 (物体を収納できる。容量未検証)
・サンバイザー (不意打ちではない場合、相手の酸による攻撃を防ぐ。5回/日)
<連携特殊機能>
・あなたの愛を感じたい
=> この指輪を持つ者がもう一つを持つものに自身の最大HPの1/3を最大値としてHPを譲渡できる。
=> 譲渡された者は自身の最大HPを最大値として譲渡されたHPを現HPに加算できる。
=> 発動はターンやイニシアチブ結果に影響を受けない(即反映)
・あなたなしには生きられない
=> この指輪を持つ者はもう一つの指輪を持つ者のおおよその状態を把握できる(命の危険度)
=> もう一つの指輪を持つ者が死に直面した場合に「HP譲渡」を自動起動するか決定できる(変更するまで有効)
「こ、これはすごいな...」
「これは素敵ですわ!」
何か二人の評価軸がズレているような気がするがまぁ良しとしよう。通常機能の最後のやつはネタだよね?
連携機能に関しては…凄いんだけど…これ念じるの?
『で、魔石の方なんだが、分かったやつは、知性を持ち精神感応可能なロッドに メッセージ というオリジナルスキルの術式を構築する外部部品のようだな。』
え?なにそれ?その対象がピンポイントな部品。とはいえ他に使い道があるとも思えないな…
「さあさあ棒さま、このおぷしょんとやらを食べるのです!」
ノエルちゃんのテンションが変よ。
ギラギラした目で魔石を茎さまの根元?に押し付けていると、すっと溶けるように根元に吸い込まれ見えなくなった。
『メッセージは、1回十分以内という制限はあるものの、パーティー内の任意の人数で念話出来るって呪文だな。範囲は30m。回数は3回/日、起動の参加人数は術者が決定みたいだ。』
「わたくしたちも頭に声を飛ばすことが出来るのですね?」
「用事が済んだら色々試そうか」
今日はもう一つ用事があるのだ。ギルドに行って小隊やその他諸々聞かないとね。
あらすじ 三十分の無料通話ゲットだぜ!
最後まで出すか否か悩んだとんでもアイテム。
恐怖心に勝てず出すことに…
だって掠って即死ですよ魔術師なんて。




