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有栖と伏木乃神社の巫女達

「悪霊退散!」


 夜の町に巫女の少女が発する声がする。お祓い棒を一閃し、有栖は目の前にいる悪霊を退散させた。

 悪霊といってもファンシーな小動物の姿をした下級霊だ。上級になると恐ろしい姿をした悪霊もいるようだが、下級の霊は弱いのでザコっぽいいかにも弱そうな姿をしている物が多い。

 力の弱い下級霊など有栖にとっては敵では無かった。赤子の手を捻るよりも簡単に退治する。


「さすがね、有栖ちゃん」

「あんたもやるじゃない」


 だから、こんな程度のことで、一緒に働いている仲間達から褒められても照れてしまうのだが。

 パチパチと拍手してくれる黒髪ロングの綺麗なお姉さんは花菱舞火はなびし まいか。ぶっきら棒で少し不良っぽい見た目だけど根は優しくて世話好きのお姉さんは東雲天子しののめ てんこ。二人とも巫女装束を着ている。有栖の雇った伏木乃神社の巫女だ。

 働いている巫女は他にもいて、


「ほげー!」


 下級霊の間の抜けたような断末魔がした。長い蛇のような姿をした霊が消えていく。


「またつまらぬ者を切ってしまいました。終わりましたよー」


 笑顔で手を振る金髪少女はエイミー。有栖の父、権蔵が雇った外国人だ。最初は舞火や天子を排除しようと火花を散らしていた彼女も今ではすっかり仲良くなって、伏木乃神社の後輩巫女として頑張っている。


「さすが有栖ちゃんの雇った人達だね。上手くやれてるじゃない」


 のんびりとした余裕のある様子で空き地の石垣に腰かけていた巫女が立ち上がる。彼女は有栖が雇っているわけではなく別の神社の巫女だが、クラスメイトで友達として仕事を手伝ってくれている。

 その少女、木崎芽亜きさき めあは今回は経験者である自分が出るほどの悪霊では無かったので、有栖と一緒に戦うみんなの働きぶりを落ち着いて見ていた。


「悪霊は全部片付いた?」

「はい」


 有栖は自分の霊力で悪霊がいないことを感じ取り、懐から取り出した時計型のレーダーでも確認した。


「今日のところはこれで全部ですね。お疲れさまでした」

「お疲れさまでした」


 悪霊は明日になればまたどこかに現れるかもしれないが、今日のこの場所のお祓いは終了した。


「じゃあ、帰ってシャワーでも浴びますか」

「ミーはご飯にしたいです」

「わんわん」


 有栖達が帰ろうとしていると、そこに犬が走ってきた。いや、犬ではない。彼は式神だ。伏木乃神社の式神のこまいぬ太だ。


「あ、こまいぬ太来てくれたー」

「あんたの戦うような悪霊はもういないわよ」


 有栖に頭を撫でられて、仲の良い天子に声を掛けられて、こまいぬ太はとてもご機嫌そうだ。機嫌良さそうに息をハアハア吐いている。


「有栖ちゃんのところの式神って」


 本当に犬みたいだねって言おうとした言葉を芽亜は止めておいた。言わなくても分かることをわざわざいう必要もない。

 悪霊を退散させた道を、みんなで神社に向かって歩いていく。


「一時はてんてこまいよーとどこかの誰かが言ってたけど、状況も大分落ち着いてきたわね」

「はい。でも、悪霊はまだこの町に来ると予報では言っていました」


 舞火の言っている誰かの言葉とは天子の言葉だ。天子がてんてこまいよーと言っていたのを有栖も覚えていた。

 今度はその天子が話しかけてくる。


「王がいなくなったからって自分がその土地を取ろうだなんて、随分とせこい悪霊達ね。お兄ちゃんが言ってたわ。気を付けろって」

「はい。でも、今のところは下級霊しか見ないので大丈夫だと思います」

「中級や上級って強いんですか?」


 エイミーが興味を持った爛々とした瞳をして訊いてくる。


「それは……」


 有栖は言いかけ、神社の階段の下までたどり着いたので、上を見上げた。

 階段を昇った所には鳥居が立っていて、伏木乃神社は変わらずに山の中腹に立っている。


「ご飯の用意をしてから話しましょうか」


 有栖は歩みを進め、みんなと一緒に我が家である神社へと向かった。

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