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巫女てんてこまい ~巫女の仕事は悪霊退治~  作者: けろよん
悪霊達の祭典 霊大祭

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第一章 エピローグ

 大きな事件が解決し、悪霊も多く退散させて、みんなしばらくは静かな日々が来るものだと思っていた。

 たが、そうはならなかった。

 今、神社ではひっきりなしに依頼の電話が掛かってきていた。

 天子がそれを取って、依頼の内容をメモに書き付けていく。

 エイミーが走り回って、いろいろな雑用を片づけて回っている。

 舞火は仕事に出ている。もちろん悪霊退治の仕事だ。

 有栖はみんなのまとめ役だ。父ほどのことは出来ないが、自分の出来る範囲で出来ることをやっている。

 何回目かの電話の後、受話器を置いた天子は根を上げていた。


「どうしてこんなに忙しいのよ。もうてんてこまいよ!」

「まあ、そう言わずに。これももう少しの辛抱ですから」


 有栖が占ったところによると、この町は悪霊王と多くの霊達を一気に倒したことによって一種の空白地帯のようになっていて、開いた場所になだれ込むように周囲から霊が押し寄せているようだった。

 それもしばらくしたら収まるだろうと占いには出ていたが、しばらくは忙しい日が続きそうだった。

 天子が電話の鳴っていない間にぐったりしていると、そこに舞火が帰ってきた。


「ただいま。三丁目の用件を片づけてきたわよ」

「ご苦労様です」


 有栖は舞火を労う。次に舞火の視線は天子に向いた。


「だらしないわよ、天子。そんな姿をお兄さんが見たら悲しむわよ」

「忙しいのよ。仕方ないじゃない。それにここにはお兄ちゃんいないし」

「仕事があるって良いことですよ」

「そうだけどさあ」


 天子は愚痴る。有栖は困った笑みを浮かべた。

 有栖は最初は父の依頼だけを片づけるつもりだった。舞火や天子やエイミーにもそのことだけをやらせるつもりだった。

 だが、町の状況がその判断を許さなかった。今、町では悪霊によると思われる案件が多発していた。

 町は巫女を必要とし、有栖達には仕事が出来る能力があった。だから、やるしかなかった。

 天子が有栖に向かって言う。


「芽亜はどこに行ったのよ。あいつがいれば少しはマシになるのに」

「芽亜さんなら山田さんのところに謝罪に行っていますよ」


 自分の過ちを認めて心を入れ替えた芽亜は、巫女さんキラーをしていた間に迷惑をかけた人達に謝罪して回っていた。

 許してもらうのは大変なことかもしれないが、本来の芽亜は優しいみんなに好かれる性格をしているし、きっとみんなは許してくれるだろうと有栖は思っていた。

 その思いが通じたのか、ちょうど芽亜が帰ってきた。彼女は大きなダンボール箱を抱えていた。


「どうしたんですか、その荷物?」

「山田さんがお野菜をこんなにくれたんだよ。みんな良い人だよ。あたし、あんなに悪いことしたのに」


 どうやらみんな許してくれそうだった。

 芽亜はもらったお野菜をしまいに台所へと歩いていった。

 天子は愚痴る。


「謝罪なんかよりこっちを手伝って欲しいんだけど」

「けじめは大事よ。これが次の依頼ね」


 そんな天子の横から、舞火が天子が付けていた依頼書の一つを取って眺めた。


「これは大変そうね。有栖ちゃん、手伝ってくれる?」

「はい」


 言われて有栖は立ち上がる。それを天子が呼び止める。


「ちょっと待ってよ。あたしだって運動がしたいのよ。舞火、電話番変わってよ」

「うーん、わたしは電話の取り方ってよく知らないのよね」

「こんなのもしもしハイハイご苦労様って言っておけばいいのよ」


 それはどうかと有栖は思ったが、有栖自身も仕事の電話を取った経験というのはそれほどあるわけではなかった。

 仕事の段取りはいつも父が付けていたからだ。その父もそのうち帰ってくるだろう。そうなればこの町もさらに安定する。

 物思いにふけろうとする有栖。

 そこにエイミーが挙手の名乗りを上げた。


「それだったらミーがやっておくですよ。こちらの整理はあらかた終わりましたし」

「そう、ありがとう」


 電話番をエイミーに代わってもらって、天子は立ち上がる。


「じゃあ、行きますか」

「はい」


 有栖達は向かう。町へと。巫女の仕事を果たしに。

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