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ロリな魔王と変態勇者  作者: 鹿鬼 シータ
13/21

決着 勇者 VS レーギス 



「……ぶち殺す!!」


 ブチンと、景気良く堪忍袋の尾が切れたレーギスはもはや、型とは言えない無茶苦茶な太刀筋で勇者に斬り掛かる。


「おおお、落ち着け!落ち着くんだ!」


 それを見て即座に回避行動に移った勇者だったが、気力体力、そして、運すらも底を付いたらしく足を絡ませ無様にも尻餅をついてしまった。

 迫り来るレーギスの刃。

 これを、防ぐ手立ては勇者には無い。


 だが、勇者には仲間がいる。


「うおぉぉりゃあぁ!」


 背後より飛来してきたのは少年戦士。

 身の丈以上の無骨な大剣。

 もはや、振り回すと言うより振り回されているのではと、問いたくなるような型もへったくれも無い動作で大剣を叩き込んできた。


「ギャー!!」


 勇者に。


「何すんだ!このアホ!!」


 間一髪、それを回避した勇者は少年戦士を怒鳴り付けた。


「ありゃ?リーダー、こんな所で何してんの?」


 大剣を振るった相手が敵ではなく勇者だと気づいた少年戦士は心底驚いた顔をした。

 それを見る限り、少年戦士は勇者のピンチにたまたま、偶然、勘違いで飛び込んで来たと言うこと。


「…………」


 何とも言えない心境の勇者。

 だが、その表情は1つの確信と安心に染まっていた。


「随分と余裕じゃないか勇者。」


 そんな勇者を見て、レーギスは低い声を出しながら構える。


「まさか、たかが一人、しかも、そんなガキんちょが来たくらいで形勢が逆転した……なんて、思ってないよな?」


 その言葉とは裏腹にレーギスは少年戦士に対して微塵も隙を見せず、怒りを押さえて冷静に対応出切る体勢を整えていた。

 理由は言わずともがな。

 名ばかりの勇者とは違い、勇者『一行』には確かな実績がある。

 それは、勇者以外の連中の実力の証明の証だ。

 それに、あの大乱戦の中、生き残り、あまつさえ戦場の端で戦っていたこの場所まで辿り着いたのだ。

 弱いはずがない。

 まぁ、何にせよ俺が負ける事なんて……


「……ぁ?」


「やっと、気がついたかよ?」


 勇者の声が嫌に響く。


「僕はガキじゃないもん!」


 レーギスの言葉に憤慨する少年戦士を勇者は頭を撫でて落ち着かせる。


「まぁ、実際に少年戦士とあんたが戦えばどちらに軍配が上がるかなんて火を見るより明らかなんだがな。」


 勇者の嫌味にレーギスは反応しない。

 それどころではない。

 勇者一行は囲まれていたはず。

特に狙われていたはず。

特に追われていたはず。

 なら、どうしてここに居る?

 なら、どうして、国王軍は誰一人として駆けつけてこない?

……どうして、こんなにも静かなんだ?


「へいへーい!いつまで、思考に耽ってんのさ?」


「っ!」


「わかってんだろ?」


 なにが?


「わかったんだろ?」


 なにを?


「俺の長ったらしいお話の真のオチが──」


 まさか……そんなはずないだろ。


「──てめぇの目で見て確かめろや。背後に広がるこの戦の結果を。」


「…………」


 レーギスはゆっくりとした動作で振り返る。

 ありえない。

 ありえるはずがない。

 これは、何かの間違いだ。

 きっと、振り返った先には魔物達が血に沈み、国王軍が勝利に舞い上がり叫ぶ事なく、気品を漂わせながら整列しているに違いない。

 となると、奴。

 勇者の言葉はブラフ。

 俺が完全に視界を外した瞬間に背後から奇襲を掛けるつもりなのだろう。

 そうは、いかねぇよ。

 レーギスは何時でも背後からの奇襲に迎え撃てる体勢を整えると静かに振り返った。


「っ──」


 そして、頭が真っ白になった。


「もう一度だけ言うぜ?この戦いから手を引け……って、もはや拒否権はおろか選択の余地すらないか。」


 勇者が鼻で笑いながら少し前の台詞を復唱する。


 それでも、レーギスは自分の正面に広がる現実から目を逸らせずにいた。

 地面に転がる、人。

 その全てが国王軍だった。

 その奥には勇者一行の残り二人が何の構えもなく自然体で立っており、その後ろには憎き魔王……そして大量の魔族。

 不思議と倒れた魔族は居ない……それどころか神官の仕業か小さな傷すらも見当たらない。

 どの魔族も怒りに顔を歪ませ、今にも襲い掛かってきそうな勢いだ。

 そうしないのは、正面に魔王が居るからなのか、それとも、その魔王より一歩前に立つ奴等が居るからか……


「なぁ、本当にいつまで待たせる気よ?さっさと、負けを認めてあいつらに謝って許してもらえよ。な?」


 ふざけんな。

 なにが『な?』だ。

 そんなんで終わる訳がないだろ。


「……終われるわけが無いだろ!!」


 レーギスはそう自分に言い聞かせるように叫ぶと体を反転させ、少年戦士と勇者に向かって駆け出した。


「……っ!」


「くっ!?」


 ガキンッ、と鉄と鉄がぶつかり合う音が戦場に響く。


「まだ、動けたか……勇者!」


「リーダー!?」


 勇者はもうフラフラだった。

 飲まず食わずで、睡眠も取らず、更には死にかけた上でのこの激戦。

 レーギスに切りつけられた傷からも止めどなく血を流しており、少し小突けば、倒れ二度と立ち上がれないだろう。

 何度も言うが勇者が今、自分の足で立ち、ましてや敵の刃をふらつきもせず受け止めるなど普通では無い。


「そうか……お前の答えがこれなら、仕方ないな。」


 それでも、庇うように構えていた少年戦士を押し退け、レーギスの刃を勇者はしっかりと剣で受け止めた。


「……っ!このっ!」


 違う。

 こいつはさっきまでの勇者ではない。

 鍔迫り合いに持ち込まれたレーギスは死に損ないめ、と剣に力を込めるもびくともしない上に勇者の纏う空気が変わった事に焦りを覚えた。


「これは、人質にされた魔物達……」


「ぐがっ!?」


 勇者が動いた。

 鍔迫り合いの最中、少々首を傾ければ額同士がくっつく距離にあったレーギスの額に向け勇者は自身の額を勢いよく打ち付けた。


「っ――――きさまっ!?」


 レーギスは勇者の頭突きに堪らず後退るとズキンと鈍く痛む額を手で押さえ、前屈みになりながらも勇者を睨み付けた。

 だが、その顔はすぐに驚愕へと変わる。


「これは、散々俺をいたぶってくれたぶん!」


「がっ!?」


 勇者のサッカーボールキックがレーギスの前歯をへし折る。


「そして、これが―――」


「フレイム・あぎゃあぁぁ!?」


 勇者が拳を固め駆け出すのに合わせてレーギスは左手に炎の球体を造り出す。

 だが、勇者は怯むことなく、空いた手でその魔法をレーギスの左手で包み込む様な形で握り潰した。

 これにはレーギスも堪らず悲鳴を上げ、勇者に無防備を晒す。

 そんな、レーギスに勇者の拳を防ぐ手はなく……


「―――これが、魔王たんのぶんだぁ!!」


「がっ!……っ!?」


 勇者の拳がレーギスの顔面に突き刺さる。

 だが、それによりレーギスが吹き飛ぶ事はなかった。


「まだまだぁ!!」


 勇者は魔法を握り潰した際に掴んだレーギスの左手を引き、拳の連打を叩き込む。


「うぐっ、かはっ!ぐぅっ!?」


 何度も殴られ意識が朦朧となり完成に無防備なレーギスを打ちに打って打ち据えた勇者は目一杯に腕を引き絞り、


「ラ・ス・ト!!」


 今日イチのストレートを炸裂させた。


「がっ!?」


 インパクトと同時に左手を離されたレーギスは踏ん張ることもできずに吹き飛び、何度ももんどり打って仰向けに倒れる。

 そんなレーギスを一瞥し、勇者は高々と右手を上げる。

 


「勝利」

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