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ロリな魔王と変態勇者  作者: 鹿鬼 シータ
12/21

勇者が伝えたかったことは……特にない



「あんたは勇者になって何がしたい?」


「はぁ?」


 勇者になって知った多くの闇。

 それは、大抵の者は抵抗出来ず呑まれしまうであろう巨大な闇。

 だから、勇者問う。

 レーギス。

 この男が何を思い勇者を目指すのかと。


「くくく……」


 それに対し、レーギスは笑う。


「何を言うかと思えば……まぁ、いい。どうせ、お前はここで死ぬんだからな。教えてやるよ!」


 大乱戦の中、似合わない真面目な表情で語りだした勇者にレーギスはただならぬ何かを感じ黙って聞いていたが……そんなことか。

 こんなだが奴は勇者だ。

 俺が勇者になって何を望むって?

 奴は俺が糞真面目に民を守り、民のために働くなんて、偽善者の模範解答を望んでるんだろうが……

 禿散らかした国王相手ならまだしも、どうせ死ぬこいつにくらい教えてやるか………


「何がしたい?聞くまでもないだろ?国の為、民の為。我が身を粉にして死ぬまで繁栄の礎になること―――」


「っ…………」


 レーギスの答えに勇者は目を見開き言葉を失った。


「──なわけねぇだろ。」


「がはっ!」


 一瞬の油断。

 それがなくとも、心身共に限界の勇者がかわせるはずもなくレーギスの一閃を受け、一文字に切り裂かれた勇者はその場に突っ伏した。


「くはははっ!勇者になっただけで富も名声も欲しいがままだぜ?誰が働くかよ!どっか、適当な町で女を侍らせて豪勢に暮らすに決まってんだろ!!」


「ぐっ……」


 レーギスはうつ伏せに倒れた勇者の後頭部を踏みつけ高笑う。

 偏見だ。

 勇者だからと言って、無償で何かを手に入れることなんて出来ない。

 勇者だからと言って直ぐ様受け入れられる事なんてない。

 勇者だからこそ、やらされる仕事がある。

 それを、生きて、こなし続けてこそ、認められて、称えられて、求められる。

 奴の言うあれは偏見と妄想に塗り語られた夢物語でしかない。


「……くだ。」


「あ?」


 顔を地面にめり込ませながら勇者が何かを呟いた。

 勇者になった後の大変さを身を持って知っている勇者が何かを伝えようとしている。


「なんだって?ほら、言ってみろよ負け犬が。」


 レーギスが勇者の後頭部に置いた足の力を緩める。

 その時だった。

 勇者がバネ仕掛けのように跳ね起き、力の限り叫んだ。











「合格だぁ!!」




「っ!……ぇ……はぁ?」


 流石のレーギスも勇者のこの行動には意表を突かれ、間の抜けた表情と声を出す以外無かった。


「いやぁ。だよな?あんたが、国の為、民の為。何て言ったときにはこいつ、頭おかしいんじゃね?って、思ったけど、よかったわぁ、あんたが、まともで腐った奴で!」


「あ゛?」


 挑発としか取り様の無い勇者の発言にレーギスも我に返り表情を歪める。


「おぉっと!勘違いしないでくれよ?オレはあんたを馬鹿にしてるんじゃないんだぜ?」


 それ以外に何がある?

 とでも言いたげな表情で睨むレーギスに勇者は続ける。


「オレは勇者だ!」


「…………」


 レーギスの額に青筋1つ。


「だから、知っている。勇者になる前となった後の世界を。360°変わるぜ?自分を取り巻く環境がな。」


「………………」


「………………突っ込めよ。」


「一周したら変わらねぇだろ。」


「あざっす。……んじゃ、続けんぞ。」


 勇者の言おうとしていること。

 レーギスは薄々わかっていた。

 今の自分を取り巻く環境。

 レーギスの現役職が良いが故、良い事ばかりではない。

 よって、勇者の戯言も流すに流せなかった。

 アホでムカつくが、続きが気になってしまった。

 ツッコミも流れで入れしまった…………もはや、流れは勇者が掴んだ。



「今まで見下していた奴らがあからさまに媚びへつらい、今まで、仲の良かった奴らが一歩引く。それは、まだいい。」


 流れを掴んだ勇者。

 だからと言って、直ぐ様ボケ倒す訳ではなかった。

 勇者は、勇者なりにレーギスと言う敵に語りだした。

 例え、嫌いな相手でも、伝えなければならない何かが勇者にはあったのか……


「…………」


 そんな、空気を感じ取ったレーギスも静かに勇者の話の続きを待つ。


「オレの場合、一番変わったのは村だよ。」


「村?」


「そっ。オレの生まれ育った大好きだった村さ。」


「…………」


 真面目だ。

 真面目過ぎるほど真面目な話だ。

 展開は読めている。

 どうせ、貧しい村から勇者が出たんだろう。

 それを利用しない手はない。

 レーギスの中で何かが冷めていく。

 それで?

 そんな話をして結局、あいつは何を伝えようとしてるんだ?


「まぁ、ここまで言えば誰でもわかるよな。村の装飾にされて馬車馬みたいに働かされて……結局、村は滅びたとさ。めでたしめでたし。」


「っ!……」


 意外にも重いオチにレーギスは息を呑んだ。

 これで、終わりじゃないだろ?

 まだ、話には続きがあるはずだとレーギスは待った。

 でなければ、勇者なったばかりのあいつはまだ幼かったはず。

 これで終わりなんてあまりにも酷すぎる。


「…………」


「…………えっ、オレの話は終わりだぜ?」


「なっ!」


 そんなの、あんまりだ。

 その程度の同情心はレーギスにもあるらしく少々表情が沈む。

 それに、勇者の質問から始まった話のオチとしては余りにも歯切れが悪すぎる。


「まぁ、なんだ。付け足すとするなら、一人になったオレはそれから暫く、行く先々で勇者としてコキ使われた挙げ句、精神を病んだり、仲間と出会い、なんやかんやで幸せにすごしましたって所かな。」


 もう、話には飽きた。

 とでも言うように勇者は適当に話を終わらせた。


「ふ……ふざけんな!」


 まぁ、それでレーギスとの下りまでも終わるはずも、納得するはずもなく、当たり前のようにレーギスは吠える。


「なんなんだよ!訳わかんねぇ質問したり、合格だのなんだの言ったり……てめぇの昔話なんて知ったこっちゃねぇんだよ!」


 その通りである。

 レーギスからすれば無駄な時間をただただ、ダラダラと過ごしただけ。

 だが、勇者にとっては実に意味のある時間で、ちゃんと、オチも用意されていた。


「そんなに怒んなって。これからちゃんとあんたが納得できるオチを話してやるからさ。」


「……おもしれぇ。だが、もしつまらねぇ事を言ってみろ……楽には死なせねぇからな?」


 こわや、こわや。

 勇者は大した感情も無い表情で呟くと、再び語りだした。


「付け足した部分に、更に付け足すわ。」


「…………」


「滅んだ村を出たオレは生きるために職を、国を探した。まぁ、その時すでにオレが勇者だとは近隣の国にも伝わっててな。道中、行き倒れななっていたオレはある国の遣いに拾われたんだわ。」


「…………」


 勇者の話にレーギスは聞き入っていた。

 自分が勇者になったら。

 あながち、奴の戯れ言も無駄じゃいかもしれない。

 そんな面持ちのレーギスに対し、勇者は思わずにやけてしまわないか気が気ではなかった。

 まぁ、得意の詐欺師染みたポーカーフェイスで難なく乗り切るのだが。


「結論から言うと……その国も滅びたんだよな。」


「っ!」


「まぁ、欲張りすぎた結果、身の丈に合わない富と力で自壊しちまっただけの自業自得なんだがな。」


「で?」


「急かすなよ。オレはその国で仲間と出会った。生きる楽しみも見つけた。狂っちまった世界でオレが狂わない方法を見つけたんだ。」


「…………」


 ある意味、話の流れを読み、レーギスが求めていた答え。

 それが、もうすぐ聞ける。レーギスは急かしたい気持ちを押さえ続きを待つ。


「オレが狂わない方法。それは、どんな流れや決まり、周囲や世界にも揺るがせない1本の芯だ!」


「…………あ?」


 拍子抜け。

 様は自分の信念を強く持ち、貫き通すと言うこと。

 それが答えか?

 レーギスの額に再び青筋が浮かぶ。


「大切な事だぜ?幼女を思うこの気持ち!仲間が、周囲が、村が、町が、国が、世界が!!全てが敵でも幼女さえ近くにいればオレは狂わない!常に正常でいられる!オレでいられる!幼女バンザーイ!!!」


「……メテオ──」


「待て待て待て!それは、さすがに消し飛ぶから!」


 楽には殺さない。

 そう最初に言った割には勇者に即死コースをお見舞いしようとした辺りレーギスの殺意は本物だ。


「オーケー、オーケー。ここからが大切なんだ。オレが一番伝えたかった言葉。もう、1も2も無い。即オチだ!良いか?言うぞ?」


「………………」


















「この戦いから今すぐ手を引け。」

初のブックマーク者確認!


感謝です( ノД`)…


ぜひ、これからもよろしくお願いします!

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