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ロリな魔王と変態勇者  作者: 鹿鬼 シータ
11/21

魔王と勇者と偽装勇者



「いつまで呆けてやがるつもりだ?」


「ぶふぇっ!?」


 崩れ落ち、涙を流す勇者にレーギスは飛びかかる。

 放心状態だった勇者は何の抵抗もできず蹴りを食らってしまう。


 顔面に。


「いひゃい!てんめ~!よくもオレ様のイケメンフェイスに蹴りをくれやがったな!」


「は?イケメン?百歩譲っても普通の域は出れないだろ?」


「普通にメンタル傷ついた!」


 ブサイク呼ばわりされたのなら勇者も怒りを力に変換し反撃に移行しただろう。

 だが、あまりにも的を得た反論に勇者は両手両膝をつきさめざめと泣き出した。


「死ね!」


「あぶなっ!」


 落ち込む勇者にレーギスは一閃。

 首を落とす勢いで剣を振るう。

 対して勇者はその一撃を寸ででかわし、後退。

立て直す間を作る。

 だが、レーギスがそれを許す筈もなく一閃、また一閃と距離を詰めながら剣を振るう。


「ちょっと待ってちょっと待ってお兄さぶぉっ!?」


「くくくっ、貴様のツレ達は恐ろしいほどの実力を見せている。だからこそ、頭の貴様も警戒だけはしていたのだが…まさか、本当に呪い持ちだったとはな!」


 レーギスは愉快そうに笑うと剣を大降りで振り回す。


「難儀なものだなぁ!魔力の扱えない勇者とは!そして、それを支えるツレ達も!これでは足手まといもいいとこだ!」


「ぐっ、うおっ!」


勇者の呪い。

 詳しくはいずれ触れるとして、今簡単に伝えるならば魔力の制御が出来なくなるというもの。

 よって、勇者は身体能力を上げる魔法も、敵の攻撃から身を守る魔法も、何一つ使えない。

 それどころか勇者は人一倍、魔力を多く持っており、無意識に流れ出る魔力ですら辺りのものを傷つける。

 それを防ぐため勇者は特別な素材で作られた魔力封じのブレスレットを肌身離さず装備している。

 通常、人に限らず魔力を身に宿す生物は常に微弱な魔力を放出している。

 原則としてそれは絶対。

 そして、ある程度の実力者となるとその魔力を察知し、相手の実力さえ計れてしまう。

 よって、呪い持ちと自称する勇者から一切魔力を感じられなかったレーギスは勇者を『盲魔』の呪いであると判断したのだ。


  何はともあれ、申し訳程度の剣しかない勇者に国王軍幹部であるレーギスを倒すのは不可能ともとれる状況である。


「おらおら、どうした勇者!堂々と出てきた時の威勢はどこにいったよ!」


「ぐっ、ふざけんな!やたらめったら武器は振り回すわ、ポンポン魔法は撃つわいい加減にしろや!」


 強化無き肉体ではレーギスの剣に触れた瞬間抉り飛ばされるだろう。

 魔防無き肉体ではレーギスの魔法を受けた瞬間消し飛ばされるだろう。

 そんな、勇者だからこそレーギスを煽り、怒りに任せた単調な攻撃を誘い、カウンターを狙っていたのだが、勇者自信の失態によりその目論見は失敗に終わる。

 そして、絶対的優位な立場が大好きなレーギスはかなり機嫌が良いらしくわざとギリギリかわせるであろう攻撃をひたすら繰り返す。


「はぁ、羨ましい限りだぜ勇者様。」


「あん?うぉっ!」


 わざとらしくため息をつくレーギスに勇者はわざわざ反応する。


「お前が倒した魔王が一体なんの王かは知らんが、たかが一体倒しただけで勇者様、勇者様と持て囃されて、だが、どうだ?本当にお前は勇者なのか?その呪いをいつ、どうやって受けたかは知らないが実は偽装勇者なんじゃないのか?」


  この世界には魔王と呼ばれる魔物が実は何体も存在する。

 人に、肌の色や、生まれ育った国、部族などいくつにも者類があるように魔物にもある。

 なんせ、遠目で見てすぐにわかるほど種族により大きく違いがあるのだから。

 そして、その種族内もまた一枚岩とはいかない。

 個々に意思がある以上、必ずズレが起きる。

 それらもあり魔物達も幾つもの集団に別れ生活している。

 そして、その集団の頭はほぼ間違いなく集団内で一番強い者が選ばれる。

 その中でも数々の戦いや補食により特別、知能や生存、戦闘能力が高い個体。


 それらを人は魔王と呼ぶ。


 次に勇者が勇者と呼ばれるために必要な事。

 それは一体以上の魔王を討伐し、どこでもいいので国に認められること。

 これだけだ。

 魔王によって強弱は確かにあるだが、大概の魔王は強い。

 言葉で言うほど楽ではない。

 一般的な知識としては人間の国なんぞ暇潰し程度で落とすほど。

 それが魔王。

 だが、魔物達の間でも争いはある。

 人間にばかり構っていられないため魔王による被害はそう耳にすることはない。


 そして、レーギスの言った偽装勇者。

 これはそのままの意味で、嘘、偽りの報告で国に認められ勇者と言う役職を手にした者のこと。

 正直、この手段で勇者を名乗るものは少なくない。

 だが、勇者とは勇者になってからが大変なのだ。

 勇者になれば商売仇として傭兵やギルドの者に睨まれたり、嫌がらせを受けたり、障害を排除しようと魔物に襲われたり……

 一番の壁は依頼だ。

 勇者だからとそれはもう無理難題の依頼が押し寄せてくる。

 その分、成功報酬は目が眩むほどの額になるのだが。


 だからこそ、それに見合うだけの力の無い者は勇者になっても直ぐに死ぬことになるだろう。


 話を戻そう。

 偽装勇者呼ばわりされた勇者。

 だが、これと言ったリアクションはない。

 まぁ、実際のところレーギス自身も勇者が偽装勇者だと思っているわけではない。

 ここ数ヵ月、勇者達は、王国ではそれなりの量の依頼をこなしている。

 レーギスもそれは知っている。

 仮に勇者が偽物だったとしても、強さが化け物じみたあの仲間達を従えるだけの人望はあるのだ。

 まぁ、勇者にせよ、勇者御一行にせよ、無理難題に果敢に挑み、確実に実績を残している。

 そんな奴がただの偽者とはレーギスは思っていない。


「どうした?なにも言い返せねぇのか!そうか、図星だったか!ハハハハッ!」


 まぁ、レーギスが偽装勇者呼ばわりしたのは単純に勇者のプライドを傷つけたいだけで深い意味はない。

 悔しさに歪む勇者の顔が拝めたら満足程度だ。

 だが、勇者にそんなプライドがあるはずもなく…


「あれ?もしかして嫉妬してる?」


「っ!なんだと貴様ぁ!」


 心の狭いレーギスは見事に返り討ちにあってしまう。


「あまり図に乗るなよ偽装勇者が!…っかは!」


 ついに、勇者の当初の目的通り頭に血を上らせたレーギスら単純な一撃を繰り出す。

 それを勇者は待ってましたとばかりに受け止めるとそのまま背負い投げ。

 レーギスは訳もわからず地面に叩きつけられると肺の空気を吐き出した。


「っはぁ…はぁ……あぁ、しんど。」


「やりやがったな……くそったれが…」


 だが、その程度の衝撃など魔法で強化されたレーギスにはなんのダメージにもならない。

 それどころかやっと攻撃を成功させた勇者の方がフラフラだ。

 なにせ、飲まず食わずの3日を置いてのこれ。

 ただの強化すら使えない勇者はすでにいっぱいいっぱいなのだ。


「なぁ……あんたは勇者になりたいのか?」


「はぁ?当たり前じゃねぇか!何のためにこんな所まで軍を引き連れて来たと思ってやがる!」


「…そうだよな。」


 聞くまでもない。

 だが、敢えて勇者は問うたのだ。

 これからする質問の本当の答えを知るために。

 勇者は楽じゃない。

 生半可な気持ちでは体の前に心が壊れてしまう。

 勇者はそれが言えるだけの経験をしてきた。

 17歳と言う若さで勇者と言う役職を持ち、活躍しているだけあって、この青年は多くの闇を見て、そして、背負って来たのだ。

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