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南溟の断証(ゴリアール)  作者: 雅夢
第一章 八坂激闘譜
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八坂激闘譜 閑話 或る米砲術士官が見たソロモン海戦Ⅱ−Ⅱ

続きですが未だ完結していません、すみません。

八坂激闘譜 閑話 或る米砲術士官が見たソロモン海戦Ⅱ−Ⅱ



 各艦の艦長が勝手なことを叫び、助けを求める声で充満したスピーカーからの声は、酷く音質が悪く雑音に埋もれていて内容が聞き取りにくいが極めて不味い状況に有ることは理解できる内容だった。

 しかし、任務部隊指揮下のリー少将はこの海域を動くことに難色を示した。

「西方海域を監視中の哨戒艇から、敵の後続部隊がこの海域に近づきつつ有るとの連絡を受けた。

 この部隊には多数の輸送艦が目撃されている事からガダルカナル島への上陸部隊を載せている考えられる。

 最終的に、こいつらを沈めるか追い払わない限り、この海戦に勝利したとは言えん。」

 救援を求めた部下に対して、リー司令はここに留まって敵の上陸部隊を迎撃するのが先決だと主張して救援の為の移動を否定した。

 その判断は正しかったが奮戦する駆逐艦隊を見殺しにするには忍びないのは正直なところであったが、しかし、事実として主砲弾もそろそろ心細く成りつつ有る事実からも不要な戦闘は避けるべきとの判断もあったのだ。

 こうして次の一手を躊躇する我々の司令部であったが、その我々のを嘲笑うかのよう戦況は再び急変した。

 それに最初に気がついたのは艦橋上部、防空指揮所に配置されていた見張り手であった。

「前方に艦影、方位012、距離約12000。」

 レーダーの稼働状況が思わしくない現状では敵艦が発砲してから気がつくと言う事態も予測できたが、幸いにも見張り手が気がついてくれたお陰で不意打ちだけは免れた形に成った、間髪入れず艦長が両用砲に星弾を打ち上げるように命じたが、それに対して先手打つように吊光弾が投下され少しの間を開けて互いの姿をその朧気な光の中に晒すことと成った。

「敵は巡洋艦、数は1です。

 敵艦発砲!」

「艦長、攻撃を!」

「アイ!OpenFire!」

 この時点でワシントンはこの海域を逸脱しないように方向転換をしていたため、艦首を敵巡洋艦に向けていた。本来ならこうした状況下では前部砲塔の6門を使っての攻撃が出来るのだが先の敵戦艦との砲撃戦で第二砲塔が被弾により旋回不能に成っていた為に第一砲塔の3門のみでの攻撃と成った。

 3連装の主砲の内、外側の1番と3番の2門が交互撃ち方で砲撃を開始すると、その直後に入れ替わる様に敵の砲弾が落下してきた。

 これまでの敵戦艦のものより明らかに小さな着弾位置を意味する水柱は、然しながら大きく逸れること無くワシントンの比較的至近に吹き上がった。

 対する此方の着弾位置は、お世辞でも至近とは言い難いい位置であったが、砲術長は素早く着弾データから修正値を出して第2射を命じた、今度は中央の2番砲の一門のみの発砲だ。

 第一砲塔のみでの砲撃は、予想できたことだが手数が足らず敵巡洋艦を追い詰めるには至らなかった、出来る事であるなら敵巡洋艦に対して舷側を向け第一第三の2基の砲塔6門を使用しての砲撃を行いたところであったが、日本海軍の重巡洋艦は未だ雷装を保持しており、そこから発射される無航跡魚雷が先の海戦での大損害の要因に成っている以上、敵に舷側を向ける危険は冒せなかった。

 その後、互いに5回ほどの砲弾のやり取りをしたが、共に挟叉弾を出さないまま敵艦が反転して逃走に移った為に中断することとなった。

 敵巡洋艦は急に煙幕を展開すると反転して、自らが出した煙幕の中へ消えていった。

 敵は何の戦果もなく反転離脱していった、その動きは恣意的で不自然なものでもあったので艦長は速度を落とし反転するように命じた。

 おそらく敵艦はワシントンを現海域から釣り出しを意図したようであった、それは先にリー提督が指摘した本艦が後続の輸送艦隊の障害に成ると考えての行動であったと思う。

 当然であったがこの様な児戯にも似た誘い手に乗る程我々は未熟ではなかった、故にその動きを無視ししてワシントンは現海域に留まる判断をした。

 その判断が正しかったのか?その答えを我々が見極める前に、敵は動いていた。

 敵の意図を計りかね現海域に留まる判断をした我々に対して、既に敵は新たな一手を打っていたのだ。

 最初にそれに気が付いたのは又しても見張り手だった、但し発見したのが艦影ではなく発砲炎であると言う違いはあったのだが・・・。

 そして報告の後、僅かな時間を置いて砲弾が落下してきた、今回も先程変わらないサイズの水柱が噴き上がった。

「本艦右舷海上に着弾!」

「前方026に艦影、距離14500。」

 見張り手やレーダー室へ通じる艦内電話の受話器を握った伝令達の報告が重なり艦橋内は騒然とした状態と成った。

「今度は北側からか?

 回り込まれたのか?」

 カニンガム主席参謀が禿げ上がった額に汗を浮かべながら独り言には大きな呟きを口にした。。

 先ほどの巡洋艦は南側である南南東の方向から接近してきた、これに対して新たな敵は正反対の北側、北北東の方角から現れていた、おそらく今回の敵も巡洋艦であろう、着弾に伴う水柱がそう語っていた。

 但し主席参謀が言うように先ほどの敵艦が回り込んで攻撃したと考えるのには無理があった。タイミンが早すぎるのだ。

 そしてこの敵も3斉射の後、確たる戦果も上げないまま反転離脱をして行った。

 更に予測した通りに、南側の敵艦、仮名アルファが現れた、先程よりもやや東にズレたポイントからであったが再び4斉射してアルファは反転していった。

 そうなると当然であるが北側の敵艦、仮名ブラボーが離脱したアルファに変わって現れて砲撃を始めた。

 こういった攻撃が其々3回程行われた、損害は受けないがその都度針路を変更しつつ現海域を離れないよう気を使っての砲撃戦は、戦果も無くストレスが溜まる戦いであった。

 但しそれは敵方も同様であるようで、追撃を行わない我々に苛立っている様子が着弾精度の荒れようから伺い知れた。

 そして、焦れた敵が動いた、アルファが砲撃の後、反転せずに接近のコースを取って来たのだ、目的はおそらく雷撃。

 敵艦は左舷側を此方に向けるために右に転舵し始めた。

 艦長はこの時を狙っていた。彼の命令を受けた砲術長は躊躇せずにこれまでの射撃データに修正を加えて挟叉したいないのに拘わらず第一砲塔の3門に一斉打ち方命じた。



 結果的に艦長の判断は正しく、40センチ主砲弾の一発が魚雷発射のために左舷側を晒した敵巡洋艦のど真ん中に命中した。

 巨砲弾の艦の中央に受けた敵巡洋艦はそのショックで右舷側に大きく傾きその後の砲弾の炸裂で巨大な炎と黒煙を上げて船体が真っ二つに断ち切られて海面下に没していった。

 まさに会心の一撃と言える攻撃であった、私は安堵の息を吐くと周囲を見回した。

 非常用の赤色灯のしたで皆が同じ様な安堵の表情を浮かべているのに思わず私も笑み語こぼれた。皆が不安の中で必死に耐えての一撃だったのだ。

 しかし、敵を撃沈して空気が緩んだ艦橋内に新たな報告が飛び込んできた。

「右舷、敵戦艦に動き有り。」

「敵艦、傾斜戻って居ます。」

 それはこれまでと同様の露天艦橋で目視での警戒にあたっていた見張り手からの報告であった。

 私は急いでスリットから敵艦が見える位置に移動し双眼鏡を向けた。

 ピントを合わせる時間のも焦れったく感じる中で、次第に敵戦艦の姿が星弾の光の中に明瞭に見えてきた。

 確かに右舷側に大きく傾いていた艦体はほぼ水平に戻っていた、我々が敵の巡洋艦との戦闘に忙殺されている隙に回復させたのだろう、しかし、回復のために艦内への注水を行ったためか、艦は全体的に喫水を下げており特に前部は第一砲塔の基部付近まで海水に浸かっていた。

 それでも艦の足が止まったまま事から機関部の消火と回復が出来たようにも見えず、これの何処が危険なのかと問おうとして、私は重大な見落としに気が付いた。

 これまで艦の傾斜とともに明後日の方角を向いていた第二砲塔の3門の主砲が此方を向いていたのだ。

 それを見て私は悟った、それは偶然ではないと。

 敵は明確に我々にその砲の照準を合わせてその時を待っていたのだ。

 次の瞬間その砲口に閃光が生まれた。

「敵艦発砲!」

 誰がそう言ったのか記憶には無い、私は双眼鏡を放り出すと、同じく隣でその様子を眺めていたリー少将の身体を床に押し倒しその上に覆い被さった。

 艦橋内には激しい衝撃と轟音のなか、全てを溶かす様な光と炎が凶器と成る無数の破片とともに舞い狂った。


えー何と言いましょうか、毎回これで終わります詐欺に成ってすみません、ともかく終わらないのです。

それでも後一話で完結出来ると思います。

あっと、勘違いされると申し訳ないので先に言っておきますが、完結するのは「八坂激闘譜」です、断証は当分続きます、次は何が出てくるか、お楽しみお待ち下さい。


はい、という訳で最後まで読んで頂き有難う御座います、誤字脱字等有りましたら感想の方で結構ですので御一報下さい、勿論感想や意見もお持ちしています。

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