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第98話「カップリングミスマッチ」

 ポン太はコンちゃん…

 ポン吉はシロちゃん…

 いや、わたしも、正直「逆」がお似合いって思うんです。

 ポン太ままじめでポン吉は遊び人だもん。

 でもでも、世の中だいたい「逆」ですよね~


 今日も夕飯のお豆腐を貰いに行くんです。

「ポンちゃん」

 お鍋を持ってお店を出ようとしたら声。

 振り向けば物陰に隠れているシロちゃんがいますね。

 なにかな?

「ポンちゃん、今からどこに?」

「お豆腐を貰いに行きます」

「本官も一緒してよいでありますか」

「べつにいいけど……」

「では、行くであります」

 わたし、シロちゃんと一緒にお豆腐屋さんに向かいます。

 でも、シロちゃん、わたしを捕まえると、

「こっちから行くであります」

「??」

 引っ張られて裏を通って行くんです。

「シロちゃんどうしたの?」

「ポンちゃん、思い出すであります」

「?」

「いつもはレッドと一緒でありますよ」

「そういえば、そうですね」

 でも、レッドは今日、コンちゃんとポン吉と一緒にボール遊びの最中なんです。

 楽しそうだから、わたしひとりで行くつもりだったんですよ。

「レッドはみんなと遊んでいました」

「ポン吉がいたでありますよね」

「あー!」

 わかりました。

 駐車場で遊んでいるポン吉に見つかりたくなかったんですね。

 ポン吉はシロちゃんスキーですから。

「そこまでポン吉を避けなくてよくないですか?」

「ポンちゃんにはわからないでありますよ」

「わたしも店長さんにラブラブされた~い」

 そんな事を話しながら、お豆腐屋さんへGO!


「こんにちは~」

「あ……ポン姉……」

 お豆腐屋さんに行ってみるとポン太が出てきました。

 わたし、見逃さないんだから。

 ポン太を捕まえてヘッドロックです。

「えいっ!」

「わわ、ポン姉、何なにっ!」

「今、わたしを見てがっかりしたでしょ」

「……」

「どうしてですかっ!」

 えい、ギリギリ。

 ポン太腕をばたつかせています。

「ほら、痛いですか、痛いですか?」

「ポン姉やめやめっ!」

「どーしてがっかりするんですかっ!」

「だ、だってコン姉いないし」

「あー!」

 わたしがヘッドロックを解くと、ポン太ふらふらです。

 シロちゃんポン太を支えてやりながら、

「コンちゃんはお店にいるでありますよ」

「シロ姉……あの……」

「なんでありますか?」

「どうしてここにはポン姉しか来ないんでしょう?」

 わたし、ポン太にチョップ一撃。

 ポン太、頭を押さえてわたしをにらんでいます。

 シロちゃん笑いながら、

「ポン太はコンちゃんを知ってるでありますよね」

「?」

「コンちゃんはなにもしないでありますよ」

「……」

「お使いに来るわけないであります」

「でも、学校や老人ホームに配達には行くじゃないですか」

「行かないとミコちゃんに怒られるであります……それに……」

「?」

「配達に行ったら帰ってこないでありますよ」

 わたしもポン太もあきれ顔になっちゃいます。

 それでかー、出て行ったらなかなか帰ってこないんですよ。

 外でサボっていたんですね。

 わたしがシロちゃんに聞いちゃいます。

「ねぇ、シロちゃん、コンちゃん普段どうしてるの?」

「コンちゃんは老人ホームかおそば屋か駄菓子屋でグダグダしてるであります」

「今度とっちめてやるっ!」

 そんなわたしにポン太も笑顔が戻ります。

 奥からおばあちゃん出てきて、

「ポン太、ほら、おはぎを持っておいき」

「おばあちゃん」

「あのキツネ娘に逢いに行くんだよ」

「おばあちゃん、ありがとう」

 わたしはお豆腐、シロちゃんはおあげ、ポン太はおはぎを持って出発です。

 はて……

「ちょっと二人は先に行ってて」

「?」

 わたし、思い出してお豆腐店に戻ります。

 おばあちゃん、戻って来たわたしを見て首を傾げているの。

「どうしたんだい、ポンちゃん」

「おばあちゃんとおじいちゃんは一緒に来なくていいんですか?」

「ああ、私とじいさんと長老で晩酌」

「そうなんだ」

 おばあちゃん、わたしに顔を寄せて、

「キツネ娘をこっちに連れてきたらダメだよ」

「え? なんで? 商売繁盛だけど?」

「あのキツネ娘はなーんにもせんからね」

「それでポン太を……」

「ポン太はいい子だけど、ありゃ失敗するタイプだね~」

「おばあちゃんがしっかり教育してください」

 わたしが言ったらおばあちゃん笑ってます。


 で、急いで戻ってみたら、お店の前でやっと追い付きました。

 駐車場ではレッド・コンちゃん・ポン吉がボール遊びをしているの。

 あ、レッドがポン太に気付きましたよ。

「わーい、ぽんたすきすき~」

 ボール投げ出してダッシュです。

「なになに、おいしいにおいです~」

 レッド、ポン太の風呂敷クンクンして、しっぽ振りまくりなの。

「おばあちゃんの作ってくれたおはぎだよ」

「わーい、おはぎ!」

 それを聞いてコンちゃんもダッシュ。

「おお、お婆のおはぎか、わらわもいただくのじゃ」

 ボールを持ってポン吉も来ました。

「ばあちゃんのおはぎ、うまいよな~」

 ポン吉ニコニコ。

 でも、ポン太の表情は厳しいです。

 なんでかな?

「はやくたべよー!」

「あ、うん、そうだね」

 レッドに手を引かれて行っちゃうポン太。

 わたしとシロちゃんも続きます。

 その時、ポン吉の目も険しくなったんです。

「ちょっ……ポン吉、どうしたんです?」

「ポン姉……ちょっといい?」

 わたし、ポン吉に引っ張られて駐車場の隅へ。

「どうしたんですか?」

「ねぇねぇ、ポン姉」

「?」

「ポン姉とシロ姉、ずっと一緒だったの?」

「そうだけど」

「アニキはお店からずっと一緒だったの?」

「ですね」

 ポン吉の頭から湯気が上がってます。怒ってますね。

「どうしたんですか?」

「アニキ、シロ姉と一緒だった!」

 わたし、ポカーン。

 ちょっと考えて……なるほど~。

「ポン吉、シロちゃんとポン太が一緒なのに怒ってますね」

 わたしが耳元でささやくと、耳まで真っ赤になって、

「そ、そんな事思ってないやいっ!」

 わっかりやすいな~

 シロちゃんが好きなの知ってるんだから、なにをいまさらですよ。ふふふ。


 おやつはお店でいただくわけですが……

 わたしと店長さん、ミコちゃんはドキドキしっぱなしなの。

 コンちゃんとシロちゃんはおはぎをモグモグ食べています。

 レッドは口のまわりをあんこだらけ。

 ポン太とポン吉が問題なんです。

 二人ともにらみあって、さっきから視線で火花散らしまくり。

 わたし、ポン太の隣だから嫌なオーラ浴びまくりだよ。

 するとミコちゃんからテレパシー。

『ポンちゃんポンちゃん!』

『な、なに、ミコちゃん』

『ポン太くんとポン吉くん、どうしたの?』

『さ、さあ……』

 今度は店長さんが、

『さっき、ポン吉と駐車場で話してたよね』

『あー……』

 わたし、天井に視線を泳がせるけどごまかせそうにありません。

『ポン吉はポン太とシロちゃんが一緒なのが嫌なんだよ』

 ミコちゃん、目をパチクリさせてから、

『じゃあ、ポン太くんはどうして怒ってるの?』

 ふむ、なんででしょう?

 隣にいるので、聞いちゃいましょう。

『ねぇねぇ、ポン太』

『なんですか、ポン姉』

『コンちゃんと逢えたのに、なんでさっきから不機嫌なの?』

『ポン姉、ポン吉はずっとこっちにいたんですか?』

『ですね、遊びに来てましたよ、レッドにつかまっちゃったし』

『ずっとコン姉と一緒だったんですか!』

 はぁ……こっちもそうだったんですか。

『ねぇ、ポン太、コンちゃんとポン吉が仲がいいとか思ってませんか?』

 って、ポン太、耳まで真っ赤です。

 兄弟ですね~

『ポン吉とコンちゃんはなんでもないと思うよ』

 って、わたしのテレパシーにもポン太はにらみ返してきます。

 信じてませんね。

 でも、なにを言っても聞いてくれなさそうなの。

 もう、なるようになるしかないかな、わたし、早くも「あきらめ」です。

 そんなわたしにミコちゃんが、

『ポンちゃん、どうだったの?』

『あー、もう、めんどうくさいから、どーでもいいです』

『そんな事ないでしょっ!』

 うわ、ミコちゃん怒った目でこっちを見てます。

『ポン太達はコンちゃんやシロちゃんと一緒にいたいだけなんですよ』

『今、一緒におやつ食べてるじゃない』

『そうなんだけど、そうじゃなくって~』

 わたしが説明する前に、ミコちゃんの頭に裸電球光ってます。

「なーんだ、そうだったんだ」

 ミコちゃん、席を立って……「ポン太とシロちゃん」「ポン吉とコンちゃん」を並べて座らせました。

「ほら、機嫌直して!」

 って、ミコちゃんにこやかに言うけど、ポン太とポン吉はひきつってます。

「ミコちゃんミコちゃん!」

「なに、ポンちゃん?」

「席が違います」

「え?」

『ポン太はコンちゃんが好きで、ポン吉はシロちゃんが好きなんですよ』

「えーっ!」

 ミコちゃんびっくりしてます。

 わたしと店長さんでミコちゃんを連れ出します。

 わたし、ミコちゃんに、

「あれじゃ火に油です」

「だ、だって……」

 店長さんあきれ顔で、

「ミコちゃん、気持ちはわかるけど、好きになるのは人それぞれ」

「だ、だって……」

 ミコちゃん手をあげたりさげたりしながら、

「ポン太くんとシロちゃんで、ポン吉くんとコンちゃんがお似合い」

「ポン太はコンちゃんが好きで、ポン吉はシロちゃんが好きなんです」

「な、なんで……」

 ミコちゃん、信じられないって顔で首をブンブン横に振ってます。

 よっぽどショックだったみたい。

「ポンちゃん、なんとかしないと」

「店長さん……」

 わたし、言われて改めてポン太達を見ます。

 コンちゃんとシロちゃんは油汗たらたら。

 ポン太とポン吉は視線バチバチ。

「ポン吉、いつもコン姉と遊んでいるの?」

「アニキこそ、いつもシロ姉と散歩してんのかよ?」

 わーん、ケンカの始まる5秒前?

 店長さんわたしの背中をゆするけど、どうしろと?

 そうだ、レッドがいるんです。

 って、レッドはおはぎに夢中でなにかしてくれそうにありません。

 ああ、もう、店長さんがゆするの強くなります。

 コンちゃんとシロちゃんも助けて視線を送ってきますよ。

 もう、ここは先輩のわたしが行くしか!

「ポン太、ポン吉、どうしたんですか」

「ポン姉……」

「二人とも不機嫌ですよ」

「ポン姉はボクがコン姉の事好きなの知ってますよね!」

「オレがシロ姉の事、好きなの知ってるよな!」

「知ってますよ~」

 二人がポン太・ポン吉とデートすれば終わりって思うけど……

 なんでコンちゃんもシロちゃんもわたしに助けて視線を送ってくるかなぁ。

 しょうがない、一肌脱ぐか。

「ポン太もポン吉もお子さまです」

「!!」

「まずはわたしとデートして、実践を積むんです」

「「えー!」」

 さすが兄弟「えー!」がぴったりはもってます。

 顔もすごい嫌そうなの。

 わたし、ポップコーンよろしく頭から「怒りマーク」ポンポン弾けるの。

「なにが『えー!』ですか、なにが!」

 それ、ふたりそろってヘッドロックです。

 ギリギリ!

「コンちゃん達とはデートしたくて、わたしとはしたくないんですか、ええ!」

「痛いいたい!」

「しむー!」

 わたしが本気で怒ってるかって?

 別にポン太やポン吉に好かれたいわけじゃないんです。

 わたしは店長さん一筋だから、他はどーでもいいんですよ。

 でも、さっきの「えー!」はなんだか許せない!

 すごい嫌そうな顔だったし。

「今夜二人はここにお泊りです、わたしがみっちりお説教するんです!」

 ふふ、なんだかんだ言って、わたしは二人を家に引きとめてあげるんです。

 感謝するところですよ。

 って、コンちゃんとシロちゃんが血相変えて飛びついて来ます。

「ポン、やめるのじゃ!」

「ポンちゃん、やめるでありますっ!」

 二人はポン太ポン吉にべたべたされたくないから、こんな事を言ってるんです。

 って、ミコちゃんもやってきました。

「ポンちゃん、二人が死んじゃうっ!」

 え!

 ああっ!

 思い切りはまっちゃってます。

 二人の顔から生気が!

 真っ青です!

「ポン太、死ぬでない、ポン太!」

 ポン太をゆするコンちゃん。

「ポン吉、帰ってくるであります!」

 シロちゃんもポン吉をゆすってます。

 二人とも、好きな人にやさしくしてもらって、よかったですね。


 わ、わたしは結局ダンボールの刑だったけど……とほほ。


「ぼくもでま~す」

 レッド、子供みこしのチラシを持ってピョンピョン跳ねてます。

「レッドはなにをするんですか?」

 わたしが聞いたら、レッドはうちわを持って、

「おおきなうちわをふりま~す」


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