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第95話「花屋の娘」

 レッドがデートするたびに、ひまわりが増えるんです。

 ひまわり、風にゆられて、ゆらゆら。

 のどかですね~

 でもでも、あの大きな花をどこからレッドさんは持ってきますかね?

 学校のひまわりじゃないみたいなんだけど……


「ねぇねぇ、デートしてくださいな」

 レッドがピョンピョン跳ねながら言います。

「わたし?」

「コンねぇ~」

 そう、休憩時間でわたしとコンちゃんでお茶している最中なんです。

 わたしを見てるんじゃなくて、わたし越しにコンちゃんに言ってたんですね。

「コンねぇ~、デートしてくださいな」

 レッド、ピョンピョン跳ねてます。

 しっぽフリフリなの。

『コンちゃん、デートしてって言ってるよ』

『むー、面倒じゃの』

『それくらいしかできないでしょ~』

『散歩するだけじゃがのう……』

「ねぇねぇ~」

 レッド、コンちゃんの服を引っ張って言います。

 コンちゃん、ティーカップを置きながら、

「ふむ、レッドよ、デートしてやるかの」

「やったー!」

「しかし、花のひとつも持って来んかの」

「おはな?」

「そうじゃ、花じゃ」

 コンちゃん、指差します。

 花壇はここからは見えないんですが……

 ひまわりは背が高いから見えるんです。

 ひまわり、ゆらゆら揺れてますよ。

「デートの時はひまわりを持って来るのじゃ」

「ひまわり~」

「咲いておる場所は知っておろう」

「らじゃー!」

 レッド、行っちゃいました。

「コンちゃん、ひまわり好きなの?」

「ポンよ、わかっておらんのう」

「?」

「レッドはあれを根っこごと持ってくる」

「うん、そうだね」

「あやつの体格では、ちょっと骨なのじゃ」

「ふーん、レッドを試しているの?」

「それもあるかの、それに、わらわ、ひまわり好きなのじゃ」

「へぇ、そうなんだ、どうして」

「ひまわりは……大きくて……ゆらゆらして……」

 言われると、花壇に並んでいるひまわり、そんな感じです。

 大きな花が咲いて元気な感じもしますが……

 よーく考えると、のんびりしたイメージかも。

「眺めていて、飽きんのじゃ」

「ふーん……あ、で、その」

「何じゃ?」

「あんな大きなの、どこに咲いてるんです……学校のじゃないですよね?」

「学校にもあるが、あそこのを持ってきたら怒られよう」

 コンちゃん、ティーカップを口にやりながら、

「山の上の方に咲いておるのじゃ」

「へぇ」

「花がたくさん咲いておる場所があるのじゃ」

「そんな場所があるんだ、わたし、知らなかった」

「わらわ、山は長いゆえ、何でも知っておるのじゃ」

「で、レッドに教えて、採りに行かせてるわけ」

「まぁ、そうかの」

「ひまわりなしでデートしてあげたら?」

「わらわ、安っぽい女ではないのじゃ」

「ひまわりでデートも安くないかな?」


 お茶の片づけをし終わったくらいに、レッドが帰って来ました。

 大きなひまわりを持ってます。

 一緒に女の人が持ってくれてます。

 誰でしょ?

 あと……シロちゃんも一緒にいるんだけど、表情が険しいの。

 レッドと女の人、ひまわりを花壇に植えてます。

 その間もシロちゃん、きびしい目でこっちを……見てますね。

 むー、なんでシロちゃんがこわい目してるかわかりません。

 ちょっとの間、知らん顔して目を逸らしちゃいましょ。

「ただいま~」

 レッド、女の人と一緒に入ってきます。

 女の人はですね……Gパンにシャツで、活動的な感じ?

 最初は村長さんかと思ったけど、ずっと若いんです。

 お店に来る女の人はおしゃれさんが多いけど……

 どっちかというと現場監督さん風かな?

「おかえり……その人はどうしたんですか?」

「ひまわりいっしょにはこんでもらいました~」

 女の人、微笑みながら、

「こんにちは」

「こんにちわ……レッドがお世話になりました」

「いえいえ、どういたしまして……」

 微笑みながら、わたしの肩に手を置くと、次の瞬間わたしを抱き寄せます。

「犯人捕まえたっ!」

「えっ?」

「婦警さん、犯人逮捕しましたっ!」

「ええっ!」

 女の人の抱きしめる力が、また強くなりました。

「ししししっぽがあるっ!」

「ちょ、ちょっとー!」

「あの子もしっぽあったけど……」

 わたし、間近に女の人の顔を見ます。

 目、大きく見開いてびっくりしてるの。

「婦警さん、ここはどうなって……」

 シロちゃん、あきれ顔でちょっとしっぽを見せます。

 白いしっぽがチラチラ……

 隣でレッドもしっぽをフリフリ……

「ふふふ婦警さんもグルなのーっ!」

 近くで叫ばれるとうるさーい。

「これ、静かにせぬか」

 コンちゃんがあきれ顔でやってきます。

「たたた助けてくださいっ! しっぽがある人ばっか……」

 って、女の人、コンちゃんのしっぽを見て青くなりました。


「びっくりさせちゃって、ごめんなさいね」

 ミコちゃんがテーブルにお茶を置いていきます。

「ど、どうも……あなたにはしっぽ、ないんですね」

 ミコちゃん、微笑みながらも、指をパチンと鳴らしました。

 途端にテーブルに着いていたコンちゃんに雷落ちます。

「私はしっぽがないけど、神さまです」

「かかか神さまっ!」

 ミコちゃん、一度は脅しておきながら、すぐに困った顔でペコペコ。

「レッドちゃんがひまわり盗んでごめんなさい」

「……」

「コンちゃんが言ったのよ、悪いのはこの女キツネなの」

 って、ミコちゃん、崩れたコンちゃんの頭にゲンコツをコツコツ。

 それを見ていたら、女の人、クスクス笑い始めました。

「なんだか漫画みたい~」

 女の人、レッドを抱きあげて、

「花畑でレッドがひまわり引っこ抜いている時はびっくりしたんです」

 レッド、女の人に抱きついて嬉しそう。

 女の人はレッドのしっぽを触りながら、

「どうなってるんです?」

 女の人、ミコちゃんを見ます。

「えっと、私が説明していいのかしら……こっちがポンちゃん、タヌキだったの」

 わたし、ぺこり。

「この女キツネがコンちゃんで、こっちの婦警さんがシロちゃん」

 コンちゃんはまだ死んでますが、シロちゃんは会釈。

 レッドは女の人のほっぺにキスしながら、

「けのいろがあかいからレッド~」

「はい、レッド……私は村の上の方で花屋をやってるの」

「花屋さん……って……」

 わたし、考えちゃいます。

 この村だって、最近は人が多いけど、それって神社の白ナマズあってですよ。

「花屋さんって……お花を売ってるんですよね?」

「ええ、そうです」

「この辺でお花を買う人なんていませんよ」

 花屋の娘さんはクスクス笑いながら、

「花屋さんだけど、ここで売ってる訳じゃないんです」

 お店のドアが開く音がしました。

 カウベルがカラカラ鳴って、目の細い配達人が入って来ました。

「ちわー、綱取興業でーす」

 みんなの視線が配達人に注がれます。

 花屋の娘さんが、

「この人に作った花を卸してるんです」

「あ、花屋さん、こんな所にめずらしいですね」

「ちょっと、いろいろあって」

 配達人、みんなを見てから、

「コンちゃんがなにかやらかした?」

 シロちゃんが頷きながら、

「窃盗の黒幕でありました」

「ふーん」

 配達人、空いている席に腰をおろしながら、

「花屋さん、この中で一番おそろしいのは誰かわかる?」

 は?

 この男はいきなり何を言い出すんでしょ。

 それもわたしを見ながらです。

 もう、わかってるんだから!

 って、シロちゃん、なんでわたしの手首を捕まえてるんです?

「さ、さぁ……さっきミコちゃん……が雷出したけど……」

「あー、CGじゃ死なないから大丈夫、コンちゃんもすすけてるだけ」

「……」

「一番注意しないといけないのはポンちゃんだから」

 ほーら、わたしの悪口です。

『シロちゃん、手を放して、わたしに拳を振るわせて!』

『ちょっと理由、知りたくないであります?』

 そ、それは確かに……

 わたし、配達人をにらみます。

 配達人、ニコニコ顔で、

「見ただけでわかるか!」

 途端に花屋さんとミコちゃん、シロちゃんがうつむいてしまいます。

 丸めた背中が震えているの。

 わ、笑いを……堪えてますね。

「配達人、言ったなーっ!」

「だって本当じゃん!」

「モウッ!」

 わたし、配達人をポカポカ叩いちゃうんです。

 なんでかレッドも一緒になって叩いてるの。

「痛いよポンちゃん」

「配達人なんか嫌いーっ!」

「えー、そうなんだ、てっきり愛情表現の裏返しかと」

「キーッ!」

 花屋の娘さんとは知り合いになれたけど……

 なんだかちょっと頭に来ましたっ!


「おい、爺さん、いるか!」

「どうしました?」

「爺……いやがった!」

「?」

 帽子男、すごい怒ってます。どうしたんでしょうね?


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