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第93話「プリンのお話」

 むう、最近あんまりプリンを食べた事、ない気がします。

 3個パックで売ってるプリン。

 レッドとみどりが食べたら残りは1個……

 ミコちゃんもプリン作ってくれるけど……

 味が違うんですよねぇ~


「はい、今日のおやつよ」

 ミコちゃんが持ってきたのはプリンです。

 あの、3個パックのプリン。

 カップのまま食べるのもいいんですが……

 やっぱりお皿に出して食べるのがいいでしょ。

 フルフル・プルプルさせるんです。

「ふむ、久しぶりじゃの」

「そういえば……そうですね」

 わたし、プリンをじっと見つめます。

 3つでパックになってます。

 今、いるのはわたしとコンちゃん、ミコちゃん。

「3人で食べたらなくなっちゃいます」

「うむ……それがどうかしたのかの?」

「わたしとコンちゃんとミコちゃんで終わりです」

「まぁ、そうかの……ま、まさかっ!」

「?」

「ポン、おぬし一人で食べたかったのではないかの?」

「うーん、プリンは好きだけど、独り占めはちょっと……」

「ふむ、そうかの」

「この3個って、いつも配達人が持って来ますよね」

「そうじゃの」

「3つ来てるのに……本当に最近食べた覚えが……」

「わらわもじゃ」

 わたしとコンちゃんで考え込みます。

「レッドとみどりがおるでのう」

「ですよね……レッド達がいない時は食べれるかな?」

「そうじゃの」

 ミコちゃん、ティーカップを持ってやって来ます。

「レッドちゃん帰ってきたら、私はいいわ」

 って、窓の外に帰って来るレッドが見えました。

 レッド・みどり・千代ちゃん……

「あー、3人だから、食べれません」

 お店のカウベルがカラカラ鳴って、レッド達が入ってきました。

「ただいま~、おやつー!」

 わたし、こっそりため息なの。


 レッド達がプリンを食べているのを、紅茶を飲みながら見ているの。

 テレパシーで、

『ねぇねぇ、コンちゃん』

『何じゃ、ポン』

『お姉さんは我慢しないとダメでしょうか?』

『そうじゃ、我慢するのじゃ』

 コンちゃん、わたしをジト目で見ながら、

『そんなにプリンが食べたかったのかの?』

『うーん……正直なところですね……』

『うん?』

『最近、プリン、食べてないですよね』

『うむ……そうじゃの……確かに……』

『なんだかもう、食べないのが当たり前みたいになっちゃって』

『ふむ……ふむ……』

『なんだかプリンの味、忘れちゃったかな……』

『あきらめがついたなら、よいではないか』

『ちょっとさみしいかも』

『むー』

『コンちゃんはいなり寿し食べれてる?』

『うむ、わらわは大丈夫じゃ』

『コンちゃんにはこの気持ち、わからないです』

『すまぬのう』

 でもでも、プリンが食べられないなら「何か」が出てくるはず。

 もしかしたらもう1パックあるかもしれません。

 ミコちゃんがやって来ました。

「はい、代わりのおやつ」

 わたしとコンちゃんの前に置かれたのはミコちゃんの「手作りプリン」。

 実はお店ですごい人気商品なの。

 パックのジュースやコーヒーを入れた冷蔵庫半分を占領してます。

 そしていつも全部売り切れなの。

 わたしとコンちゃん、そんな手作りプリンを食べます。

「ミコちゃん……」

 わたしの言葉にミコちゃんの表情が……もう怒ってます。

「何、ポンちゃん、美味しくないの!」

「言いたくないけど……」

 わたし、コンちゃんに視線を送ります。

「ミコ、正直に言おう、まずい」

 めずらしくコンちゃんの援護射撃。

 ミコちゃん眉間に縦しわ刻みまくり。

 わたしはレッドに食べかけのプリンをあげます。

「ほら、わたしの食べていいですよ~」

 コンちゃんはみどりにあげました。

 って、ミコちゃんの前にあったのは千代ちゃんに渡ります。

 3人はパックのプリンを食べ終わってから、手作りプリンを食べてます。

 でも、表情は……レッドとみどり、笑顔から真顔になっちゃいました。

 最後のシロップのところまでいくと、ちょっとニコニコしましたね。

 千代ちゃんは最初から最後までおいしそうにしてました。

 むー、千代ちゃんきっと気を使ってるんですよ、絶対。

 わたし、聞いちゃいます。

「ねぇ、レッド、最初のと後の、どっちがおいしい?」

「さいしょですね~」

「みどりは?」

「1個目ね」

 ミコちゃんを見たら、目尻に涙を浮かべて、壊れた笑みを浮かべてます。

 もう、怒ってるんだか、笑ってるんだか、なんだか分からない顔なの。

 こ、壊れてるみたいです……頭から煙出てるもん。

 レッドとみどり、食べたらさっさと奥に行っちゃいました。

 千代ちゃん心配そうに、

「ポンちゃん……ミコちゃん大丈夫なの?」

「壊れてる……夕飯なしかも」

 コンちゃん、ミコちゃんをゆすりながら、

「まぁ、レッドにああも言われてはのう」

 わたし、ふと、

「千代ちゃんはどう思ったんですか?」

「どっちもおいしかったけど」

「どっちがいいですか?」

「うーん、手作りの方」

 途端にミコちゃん復活です。

 千代ちゃんを抱きしめて、

「千代ちゃん、ポンちゃんの代わりに家族になる?」

 なんかこわい事言ってます。

 でも、千代ちゃんの一言でミコちゃん復活しかたら、夕飯は安泰そう。

『ねぇねぇ、千代ちゃん』

『?』

『ウソつかないでもいいよ』

『本当にミコちゃんの手作りがいいけど』

 って、ミコちゃん、わたしをガン見してます。

「ポンちゃん、今、千代ちゃんに何を?」

「なにも言ってな~い」

 ミコちゃん、わたしを捕まえて、

「今晩、ダンボールで寝る事になるわよっ!」

「なにも言ってないもんっ!」

 ここは言い切るしかないです。

 でもでも、きっとバレてるんですけどね。

 コンちゃん助けてくれるといいけど……ビビって固まってます。

「ちわー、綱取興業でーす」

 カウベルが鳴って、配達人登場です。

「何やってんです? 女子プロレス? めずらしくミコちゃん?」

 って、配達人がニコニコしながら言うのに、ミコちゃんわたしを放して、

「ちょっと配達人さんっ!」

「?」

 ミコちゃん、冷蔵庫の売り物プリンを出して配達人に押し付けると、

「みんなこれ、美味しくないって言うのっ!」

 配達人、小さく頷きながら食べちゃいます。

 わたしもそんな配達人に、

「あの、3個パックのプリンと手作りプリン、パックの方が美味しいですよね」

 って、配達人の顔がパッと明るくなって、

「あれと比べてるの、ははは……」

 配達人、全部食べちゃうと、

「ミコちゃんのプリンとパックのプリンは別モノだから比べるもんじゃないよ」

 うわ、大人発言。

「だって売り切れてるよね……うちで扱ってもすごい売れてるよ」

 ミコちゃん、ホッとしたみたい。

 わたしは納得できません。

「わたしはパックの方が絶対美味しいと思う」

「むー、そうだなー」

 配達人、考えてから、

「ミコちゃんの焼きそばって食べた事あるよね?」

「たまにお昼に出ますね、学校給食もミコちゃんのかな」

「インスタント食べた事あるよね」

「!!」

 これにはみんな、ピンと来たみたい。

 千代ちゃんが真っ先に、

「作ったのとインスタントは全然別モノ」

「そう、それ」

 配達人は自分が食べたプリンの容器を見ながら、

「作った焼きそばも美味しいけど、お湯を入れるのも美味しいよね」

「わたし、納得です」

「わらわも納得したのじゃ」

 千代ちゃんも頷いています。

「でも!」

 ミコちゃん、じっと配達人を見つめて、

「私、レッドちゃんやみどりちゃんに喜んでほしいもんっ!」

 ミコちゃんは子供スキーだから、譲れないのかな?

 配達人、コクコク頷いています。

 って、頭上に裸電球が点灯!

「そうだ、老人ホームで出すヤツだけど……」

 言って出て行っちゃいました。

 すぐに小さな箱を持って戻ってきます。

「ポンちゃん達も食べた事あるんじゃないかな、老人ホームでプリン」

 みんなで思い出してみます。

 コンちゃんが頷きながら、

「そうじゃの、おやつでプリン、出た事あるのじゃ」

「どんな味だった?」

 配達人、箱をミコちゃんに渡しながら言います。

「うむ、パックで売っておるプリンと同じじゃったのじゃ」

「あ、わたしも思い出した、同じ感じでしたよ」

 ミコちゃん、箱を見て震えています。

 わたしとコンちゃん、千代ちゃんも一緒に覗き込むの。

「プリンの素!」

「老人ホームで出来たの買ってたらお金かかっちゃうから、素でたくさん作るんだよ」

「そうだったんだー!」

 わたしびっくり。

 千代ちゃんが頷きながら、

「幼稚園の時に作った事ある……」

 もう、ミコちゃん千代ちゃんを捕まえてます。

「千代ちゃん、これから一緒して!」

 って返事も聞かずに千代ちゃん連れて行っちゃいました。

「ポン、よかったではないかの」

「え? なにが?」

「おぬしも老人ホームのプリンを食べた事があろう」

「うん……あれってパックのじゃなかったんだ……器が違ってたかも」

「ともかく、おぬしもプリン、食べれるのじゃ」

「な、なるほど!」

 急に口の奥に甘い「記憶」がよみがります。

 明日はプリン、食べれそうです。やったー!


 今日のおやつはプリンです。

 ふふ、冷蔵庫にですね、6つあるの、チェック済み。

「ポン、なんじゃ、嬉しそうじゃの」

「久しぶりのプリンだもんっ」

「ふむ、確かに、ポンにとってはのう」

「冷蔵庫にたくさんあったから、今日はきっと食べられるの」

「そうじゃの」

 って窓の外にはレッドとみどり、千代ちゃんです。

「ただいま~」

 3人はおやつ前に手を洗いに、奥に引っ込んじゃいました。

 代わりにミコちゃんがプリンを持って登場です。

「はい、今日のおやつもプリンでーす」

「やったー!」

「ポンちゃん、そんなに喜ばなくても」

「だってだってー、プリン、ぷりん!」

 ミコちゃん、テーブルに6個のプリンを並べます。

 一瞬不安が!

 プリンの容器はミコちゃんお手製のと同じなんだもん。

 でも、覗き込んだら「スーパーで売ってる」「3個パック」と同じのです。

 ミコちゃんとコンちゃんが大きな声。

「ポンちゃんっ!」

「こ、これ、ポン、どうしたのじゃっ!」

「え?」

 ミコちゃん・コンちゃんびっくりした顔でわたしを見てるの。

「二人ともなんですかっ!」

「何で泣いておるのじゃ!」

「え、泣いてる、うわ、本当だ!」

 わたし、涙を拭いながら、

「久しぶりのプリンに涙出たのかも」

「ポンちゃんがそんなにプリンに飢えてたなんて……」

 ミコちゃん、言いながら、プリンを覗き込んで、

「でも、私も嬉しいかも」

「え、ミコちゃんもプリンスキー?」

「プリンは好きよ……そうじゃなくて……」

「?」

「わたしのお手製プリン、売れてるけど、みんなには不評よね」

「う……ごめん……でもこっちの方がいい」

「今まで、どうしても作り方わからなかったの……」

 ミコちゃん、ちょっとこわい顔になって、

「プリンの素があるなんて……」

 って、レッド達の足音が近付いて来ました。

「おやつ、おやつ~!」

 早速3人はテーブルに着いて、

「いただきま~す」

「はい、召し上がれ」

 レッド、みどり、千代ちゃん食べ始めました。

「では、わらわ達もいただくとするかの……」

 その時です。

 駐車場に一台の車がやって来ました。

 そして配達人・ポン太・ポン吉。

「ちわー、綱取興業っす」

 は、配達人。

「お豆腐持ってきました~」

 ポン太スピーキン。

「遊びに来たぜっ!」

 ポン吉、元気な声です。

 えっと……ポン太とポン吉にはプリン、あげないとね。

 わたし、ミコちゃんとコンちゃんを見ます。

 二人は頷いてくれました。

「プリン、美味しそうですね、いただきます」

「超うまそー、いただきま~す!」

 ポン太・ポン吉、一口食べてうっとり。

「ミコ姉のプリン、美味しいです」

「極上だぜっ!」

 二人の感想にミコちゃん嬉しそう。

 最後の一個はわたしが食べて……

「あ、昨日のなんだ、どう、味見しちゃえ」

 配達人、最後の一個を手にすると、すぐに食べちゃいます。

「あーっ!」

「な、なに、ポンちゃん」

「わわわわたしのプリンっ!」

「え……そうだったの?」

「配達人のバカーッ!」

 もう、本気で叩いちゃうんだから!

 この、バカばかBAKAーっ!


 わたし、プリンを食べられる日、来るんでしょうか……とほほ。


 ミコちゃんもコンちゃんも神妙な顔……どうしたんでしょ?

「ポンは気付かんようじゃの」

「コンちゃん、どうかしたの?」

 わたしが聞くと、ミコちゃんが、

「最近、たまおちゃんがおとなしいのよ」


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