二話
無茶するなと、東雲くんから言われるけど、私にはそんなに時間がないような気がしたから、私は睡眠時間を多少削ってまでも弓や魔法の鍛錬をし、薬師としての教育を受け、同時に仕事をこなしてきたはずなのに、私の中では何か鍛錬しなければならない重要なことを鍛錬し忘れているような気がした。
私が倒れひたすらに眠る日々から三ヶ月過ぎた頃。東雲くん達は順調に強くなっていて、後数ヶ月したら魔王退治に出てしまうそうだ。師匠から聞いたから、五割くらいは信じておいた。
さて、今の私は薬師として、自立出来るくらいなんだそうだ。だけど、もっと勉強しなくては……、東雲くんの役には立てないような気がしたから、私はただただ薬師としての仕事をこなしつつ、さらなる勉強をしている。もちろん、弓や魔法の鍛錬も怠ってはいない。
だけど、私は一番学ばなきゃいけない何かを学んでいないような気がして、でもそれの正体がわからないから対処しようがなかった。
……東雲くんに相談してみようかな。
私は、薬師としての書類作業を早急に終わらせて、自分のデスクから重たい腰を持ち上げた。
「で、そう思ったからここに来たと?」
優しい声で迎えてくれる東雲くん。
私はその声に、とても安心した。
だから、私は警戒を解いて、久しぶりに穏やかな気分で東雲くんの問いに対して頷いてみせた。
「もう、哀川さんは真面目すぎだよ? 薬師としても優秀、魔法使いとしても弓師としても優秀と言われているのだからこれ以上何の鍛錬するの?
哀川さんの勘は良く当たるみたいだし、それを信じてない訳ではないよ? でもね、また無茶してこの前のようなことがないか、僕はそれが心配に感じてるのはわかってるよね?
あまり、心配させないで。いつか胃に穴があきそうだから。でもね、今回僕に頼ってくれたことは嬉しかったよ、だから些細なことでも心配に感じたことがあるなら相談すること。いいね?」
優しい声で、力強い視線を向ける彼。
私はゴクリと音を立てて唾を飲む。
どうしてここまでしてくれるのか、私にはわからなかった。だって、異世界に来る前には関わりすら持ったことがないと言うのに。
「どうして……? どうして、そこまで私を心配してくれるの。だって、前まで関わりすら……」
「確かに、“なかった”ね。でも、俺は“知っていた”んだ。俺が君と関わりを持つことを、君と出会う前から。
だから、実際に見かけていい子だと思ったから君を助けたいと思った。君を、殺させたりはしないと誓ったんだ。
君は死ぬ運命なのかもしれない、だけど俺は“正当な方法じゃない”かもしれないけど君を生かしたい。それが例え、禁術だとしても」
東雲くんはとても真剣な表情をしてながら、普通の人なら若干引くようなことを躊躇わずに言った。
でも、私にとっては……。この世界で生きていく未来が、希望が見えたような気がしたの。
私は躊躇わず東雲くんに抱きついた。
何も言わずただただ、涙を流して。
涙が止まらなくて。
東雲くんの服を強く握りしめて……。
「私、生きたい……!」
そんな私の頭を優しく撫でて、東雲くんは何も言わず抱きしめ返してくれた。




