↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

第1章・プロローグ

修学旅行、高校では一度きりしかない大切な思い出作りの日。

私は、飛行機の中にいた。

飛ぶことの出来ない私達人間は、こうして空の中に存在出来ることは、本来なら貴重な体験なのだと思う。だけど今、それは当たり前なことになっていて油断している。それが当たり前だと言うことが、明日そうではなくなってしまうかもしれない。

そうした未来が想像出来るか?

そう言われれば、私には出来ない。

私は、見慣れない空の中と言う景色を目に焼き付けた。眠らずに、只々眺めていたくて。空を泳ぐ雲の姿を眺めていれば、明るかった空色も、幻想的で妖しげな紫がかった空へと少しずつ変化していった。

飲み込むように、それは飛行機の全てを飲み込んでいく。その途中、私は見えてしまったのだ。……数え切れないくらいの星々の姿を。

私は、その時を一生懸命輝くその光に、思わず目が離せなくなった。

そして、幸運に思う。

その瞬間をこの目で、同じ時で見ることが出来たことを、私は幸せに思った。

その時、私は何処かへと、まるで引き寄せられるような感覚に陥ったのだ。

この時から、私の運命は決まっていたのかもしれない。……最後の結末以外は。


次目を覚ましたのは、真っ赤な家具で統一されたまるで王宮のような場所だった。

シャンデリアのような照明があったり、随分派手で目がチカチカする。

色を統一するならば、もっとシックな色を使えば良いのに、とは思う。

赤は赤でもワインレッドとか。

まあ、派手なのは変わらないけど。

しかし、まるでファンタジー世界のような外装だわ。小説で言う王道、貴方が勇者ですこの世界を助けてくださいパターンかもね。まあ、私はどうでもよいのだけれど。

「大丈夫? 隣のクラスの……哀川朝陽(あいかわあさひ)さんだよね? 哀川さんは……、異世界に来たこと喜ばないんだね」

綺麗な顔が、心配そうにする。

私はこの世界に、深入りしてはいけないような気がするから、あまり喜べなかった。

それよりも、名前をわかっているとは言え、名前以外は何も知らないのにそんな顔をさせてしまったこと、申し訳ないと思った。

彼は有名だ。神社の息子で弓道の実力者であり、そして綺麗な顔をしていると。そんな彼、東雲華月(しののめかづき)くん。

私も冷静だが、

「東雲くんこそ、冷静ね」

そう言えば、彼は目を見開いた後、見惚れるくらいに綺麗に、彼は微笑んだ。

私は、その笑みに目を奪われた。

そうしている間、自分の聴力を疑うような言葉が聞こえてきたの。

「君は、僕が必ず、守るから」

何か私には見えない何かを、東雲くんは見えているような気がした。

そして彼はまた、続けて、

「だから、選択肢を間違えないで」

その言葉を向けられて、初対面なはずなのに、どうしてここまでしてくれるんだろう? とそう思った。何処かで話したことがあったっけ?

私は内心で戸惑っていた。

接点のない、高校では有名だった東雲くんに私の存在を知られていたこと。

そして、何故か私は異世界に来たことに対して、こんなにも冷静でいられるのかは自分でもよくわからない。だけど、今をきっと冷静でいられる理由を彼もわかっていないと、何故かそう思ったのだ。

だから、彼の言った「守る」と言う言葉を素直に受け入れられたんだ。


「他の皆は、どうしたんだろうね」


本当は、聞かなくてもわかってた。

でも、何故だろうか。

聞かなくちゃいけないような質問であるような気がして。私は東雲くんに答えを問う。彼も、わからないはずなのにも関わらず。


「きっと、皆目的地に着いてるよ」


彼は、嘘をついた。

……私を守るための、優しい嘘を。

「そう、だね……」

私はその嘘を、見て見ぬフリをした。優しい嘘を、壊すのは惜しいと思ったから。


「突然、呼び出してすまない。勇者達よ。君たちには所縁のない世界のことなのに、巻き込んでしまったこと心からおわび申し上げる。

勇者達よ、この世界を救ってはくれまいか。君達の力が必要なのだ」


唐突に、現れたその声。

その持ち主は、派手な格好をした中年のおじさまな王様。若い時、さぞかしおモテになられたのであろう。まあ、今もモテそうだけれど。

私は、何故か彼を警戒していた。

自分の意志では制御出来ない何か、所謂勘と言うやつなのだろうか? この王様は、信用出来ないと私はそう感じていたのだった。


東雲くん以外は、王様の話を聞いて、テンションが上がっていた。私達が住んでいた世界、地球には魔法がなかったからテンションが上がってしまうのはしょうがないか。

いや、……地球にも魔法は存在していたかもしれない。昔は、と言う話ではあるが。

地球が誕生した、その範囲の授業の時、不思議な話だと感じた。たくさんの“偶然”が重なって、地球が生まれたとして、偶然人の住める環境になっていくなど奇跡としか言えない。それならば昔、地球に魔法があったとしても、おかしくはないことだろうと思う。

人の知恵は凄いと思う。

昔は、マンモスと戦って生活し、時には石で道具を生み出したりした。

だが、知恵とは時に、自らさえも傷つける。人は、想像以上に知恵のある存在だった。

結果、その知恵の深さに、追求する根気良さに、地球が耐えきれられなくなってしまったのだから。奇跡さえ呼ぶ人の知恵、それは何時しか、我が身を身を滅ぼすような結末を迎えるかもしれない。地球は今地球温暖化現象に悩まされているが、あまりに知りすぎた我々の代償だと私は思う。

我々は宇宙では生きられない存在だ。だから今、我々には地球しか居場所がない。

だが、とある方にとっては、“想定外”や“規格外”と言う言葉が当てはまるかもしれない我々は、いつか宇宙へ住めるように自力でしてしまうかもしれない。それが膨大な数の選択肢の一つなのか、それとも規格外な出来事なのかは、地球に存在しない今、最も知ることの出来ない問題だ。まあ、地球に居たとして私が知ることが出来るかは明白ではないけれども。

それはそうと、可能性が広いと言える人の知恵で、魔法と言う存在は、想像であるから何時かは言えないが、存在が薄れ、いつしかファンタジーな存在になってしまったのかもしれない。これは私の考えであり、誰かに押し付けるつもりはさらさらないが、私はそのおかげて冷静でいられた。


「君は、冷静なんだね」

「あなたこそ」


明確な理由は話さない。

……私も、彼も。


「困っている時はお互い様だ」


私達が話しているうちに、彼らは勝手に話を進めてしまっていた。

「ちょっと、待ってください!」

私は思わず、話を遮ってしまった。

「ん? どうしたのかね」

話を聞くような素振りを見せるが、何故かとても圧迫感を感じた。

全身に冷汗が滲む。

そして、言おうとしていた言葉が、声にならない音になってしまう。

そんな私に、隣にいた東雲くんは、

「彼女を薬師にしては如何でしょうか、王様。いつ、回復魔法の使い手が怪我するやもしれませんし、我々四人は魔王城へ、彼女はいつ魔物が襲いかかり、戦士達が怪我した時の予防線として、彼女を薬師にし、王城に残しておくのも一つの手だと」

と、助け舟を出してくれた。

「それもそうだな、そうしよう」

東雲くんの意見が通り、安堵感に包まれたが、同時に矛盾した気持ちを抱く。

何故なんだろうか? とても不安で、不安で仕方がない気持ちを抱くのは。

私の運命は最初から決まっていた。

何故か、そう思う。

でも、東雲くんにはそれを感じない。私のように決められた選択肢を無自覚に辿っていくしか道がない人間とは違って、この世界にとって彼はイレギュラーな存在であるんだろう。簡単に言えば、元からあるシナリオを上書き出来る行動が取れるのは彼しかいないと言うことだ。


「頼りにしてる」


私は冷汗を、懐にあるポケットからハンカチを取り出して拭ってから、口元だけ緩めるように微笑めば、彼はとても綺麗に笑った。

そう笑える彼が、私は羨ましい。
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。