第3話 目標は世界征服です
第三話です。
お付き合い下さいませ。
<第三話>
「ふむ。何となくは把握した」←魔王
「同じく」←巫女姫
「微妙・・・」←勇者
飛鳥による三人へのレクチャーは一時間程度で終了した。
「要約してやろう、範馬」
「あ、ありがとな、ルイン・・・
①この世界全体の名称は「地球」である。ジ・アースとも呼ばれる。
②この国の正式名称は「日本皇国」である。
③国家元首は天皇と呼ばれる。敬称は陛下。
④日本は、全部で6つの地域「州」に別れている。北から蝦夷、奥州、関東、中部、西国、九州となっている。それぞれに鎮守府と呼ばれる小政府があり、将軍をトップとした統治体制が敷かれている。
⑤天皇陛下は、西国京都御所にお住まいである。首都は京都御所。
⑥現在国内での争いは起きていない。
⑦周囲を朝選国、華国、南方アジア連合国に囲まれた海洋国家である。
⑧周辺国家との関係は良くもなく悪くもなくである。必要であれば協力するし戦いもするというところ。
⑨科学技術が発達しているが、古来より伝わる陰陽術など「魔術」と呼ばれる技術も細々とではあるが残っている。
「合っているか?」
「はい。だいたいそのようなところです。私は科学者ですが、魔術と科学の融合を試み、独自に魔技理論を展開していたため、科学側・魔術側両サイドからハブられている状態であります・・・」
自分で言っていて悲しくなったのか、飛鳥がうつむいてしまう。
要するに「今さら魔術なんて(*´艸`)プギャーwww」言われていたわけである。
「その理論が正しかったことは我らが証明しているのだろう?」
「そうよ、結果が出ているんだから胸を張りなさい」
励ましているのだろうか?
「は、はい。私はこの結果をもって学会に復讐してやります!」
「その意気よ!」
「うむ。汚名は返上せねばならぬ。誇りを取り戻すための戦いは是であるな」
「ありがとうございます、ルティアラ様、ルイン様!」
少し元気になったらしい飛鳥。
だが、また表情に陰りが見える。
「どうした?」
「いえ、その。先ほども申し上げたように、私は学会の鼻つまみ者。コネや伝手があまりないのです。送還までの生活を保障して差し上げたいのですが、先立つものが・・・」
要するに、金がないので面倒を見きれないかもしれないというのだ。
「この研究所は私のモノなので、場所はあるのですが。食料や資金が・・・」
「そりゃ困ったな。バイトでもすればいいのか?」
「範馬、バイトとはなんぞや?」
「短期の仕事で金を稼ぐことだよ」
「そんなことをこの私にしろと、範馬?」
「そりゃ姫さんはそんな経験無いだろうけどさ」
考え込んでいたルインが顔を上げる。
「相分かった。無いものは手に入れねばなるまい。そうだろう?」
実に悪そうな笑みを浮かべてルインが言う。
整った顔をしているだけに、余計悪そうに見える。
「うわ、悪そうな顔・・・」
「うるさい、範馬。我は魔王であるぞ。悪いのは当たり前だ。なあ、巫女姫?」
「あー、何考えてるか分かってきたわー。でも、それってあり?」
「あるもないもない。我は魔王だ。やることなど一つしかあるまい」
そう前置きするとルインは言った。
「世界征服だ!」
ドヤ顔である。
ルティアラと範馬が「やっぱりか・・・」という顔だ。
「る、ルイン様?」
「うむ、飛鳥。そなたには申し訳ないが、我はこの国を手始めに世界を征服することにするぞ」
「本気ですか?」
「うむ。前の世界では穏健派であったからな。せっかくの魔王ライフを異世界で楽しんでみたいではないか」
「最悪ね、アンタ」
「褒め言葉と受け取っておこう。第一、お前も嫌いではあるまい、ルティアラ」
ニヤリと笑うルインに、華のような笑みを浮かべるルティアラ。
「勿論よ」
「お前ら、どっちもどっちだよ!!」
「お主にも働いてもらうぞ、範馬。勇者の力、期待している」
「悪の勇者になりたい訳じゃ!?」
「す、素晴らしい!!」
「へ?」
飛鳥の感極まったような叫びに範馬が間抜け面を晒す。
「どうか、私もその計画に乗らせて下さい!」
「良いのか? 祖国を滅ぼすことになるやもしれぬぞ?」
「元より承知。私に不遇を囲わせたこの国になぞ未練はありませぬ」
「良かろう、飛鳥。そなたを魔王軍技術長官に任命する」
「ははーっ! ありがたき幸せ!」
「範馬、お前は軍務長官でよかろう。ルティアラ、お前は宰相に任ずる。働きに期待しておるぞ?」
「勝手に決めんなよ!?」
「宰相ね・・・。まあいいわ、世界の半分で手を打ちましょう」
「おいぃ!?」
どこの悪の竜王だ。
「範馬、あきらめなさい。私達が世界征服をするのは決定事項なの。あなたも別段元の世界に未練はないでしょう。この世界を手に入れて、みんなで幸せになりましょう?」
にっこり。
美しさと腹黒さが同居する、有無を言わせぬ笑みであった。
範馬は何も言えず、がくりと崩れ落ちた。
「よい。ではここに新たなる魔王国の誕生を宣言する。世界を我らの手に!」
「我らの手に!」
こうして、不思議な実験により召喚された魔王と巫女姫+勇者の世界征服は始められたのだった。
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