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白銀の魔王と白金の巫女姫+勇者  作者: 葉月風都
第一部 蝦夷編
5/13

第2話 和解?

第二話です。


お付き合い下さいませ。

<第二話>


 いつの間にか、魔法陣の中で倒れ伏していたはずの男と女が立ち上がっていた。


 美男美女ということばが相応しい二人。

 かたや異世界の魔王。

 かたや異世界の巫女姫。


「うわ、魔王と巫女姫様、いつの間に!」

「お目覚めかね。気分はどうかな。どこか具合の悪いところがあったら言ってくれ。善処しよう」


 驚く範馬と対照的な飛鳥。


「別段不具合はなさそうだな。気にするな。して、ここはどこだ?」

「体のことはともかく、貴女が私を召喚したのですね!?」

「その通りだ。喜んでくれたまえ、実験は成功だ!」

「一つだけ聞くわ。帰れるの?」


 誇らしげに胸を張る飛鳥に対して巫女姫はそう聞いた。


 「元の世界に帰れるのか」と。


「今は無理だな」

「簡単に・・・っ!」

「ふはは。自業自得だな、女狐」

「なんですって!!」


 憤りを露わにする巫女姫に対して、魔王が如何にも楽しそうな笑い声を浴びせる。


「貴様がこれまでどれだけの異世界人を道具にし、使い潰してきたか胸に手を当てて考えてみろ」

「くっ・・・」

「喚ぶことができるのだ。喚ばれることとて予想はできようが」


 唇を噛む巫女姫を、侮蔑の笑みを浮かべて見る魔王。

 実に楽しそうな、意地の悪い笑みである。

 さすがは魔王といったところであろうか。


「待ってくれ。私は『今』は無理だといったのだ。私の理論が正しいことが証明されたのだから、研究を進めることで送り返すこともできるようになるだろう。安心してくれ。それは私の責任だ。努力はする」


 平然とした様子の飛鳥を三人がそれぞれの表情で見つめる。


「我の国は、我一人が居なくとも十分に動く。そのようになっているからな。しばらく骨休めに旅に出たとでも思えばよい。貴様の国は違うだろうがな、女狐」

「女狐女狐うるさいわ、魔王!」

「事実だから仕方あるまい。巫女姫などと偉そうに?」


 にらみ合う魔王と巫女姫。

 二人の間に緊張と魔力が高まる。


「待て待て待て待て!!」


 間に割って入る勇者。

 この瞬間、勇者は間違いなく勇者であった。


「こんなところで魔力高めてんじゃねえよ。わざわざ異世界まで来てバトることねえだろ!」

「お前は黙っていろ、勇者」

「勇者は黙っていなさい!」


 範馬は二人に浴びせられた言葉と視線にたじろぐ。

 だが、そこで引かなかったのも勇者らしい。


「勇者勇者うるせえ! オレには鉄範馬って名前があるんだよ!」

「ちなみに私は小鳥遊飛鳥だ。あなたたちは魔王様と巫女姫様なのか。何とも大物を召喚してしまったものだな、私も」


 あくまでマイペースの飛鳥。


「せっかくだ、魔王様に巫女姫様。自己紹介してもらえないだろうか?」

「何を・・・」

「飛鳥と言ったか。其方、なかなか面白いな。よかろう、我は魔王。魔の国トルキアを治める王である。名はルイン」


 笑みを浮かべると、魔王はそう名乗った。


「アンタ、そんな気軽に・・・」

「この世界で我を知るものは貴様と勇者しか居らぬ。何も問題はあるまい?」

「そっか、魔王ってルインっていうんだな。名前で呼んでもいいか?」

「ははは! 構わぬ、構わぬとも勇者よ。我もお主のことは範馬と呼ぶが良いな?」

「勿論だぜ。異世界に呼ばれちゃった者同士、仲良くしてくれよ!」


 そんなことでいいのか、魔王と勇者よ。


 だが、魔王はこの状況を楽しんでいた。

 魔王として「魔の国」に君臨してより数十年。

 こんな楽しい出来事は久しぶりなのだから。


「なんで魔王と勇者が仲良くなって握手してんのよ!?」


 巫女姫の言うことももっともである。

 もっともではあるが、無意味でもあった。


「それで、巫女姫様は何というのですか?」


 小首をかしげて飛鳥が尋ねる。


「私だけ空気読めてないみたいじゃない!?」

「うむ。読めていないな」

「そうだな。読めてないな、巫女姫様」


 魔王と勇者は早くも意気投合したようだ。

 意地の悪い笑みを浮かべて巫女姫を見ている。


「わ、私は神聖国アリーナの巫女姫ルティアラ・・・」

「おお、そういえばそんな名前であったな、女狐」

「女狐って言うな!!」

「ルイン殿にルティアラ殿だな。今すぐに帰してやれずに申し訳ない。研究が進むまでは申し訳ないが我慢して欲しい」


 そういって飛鳥は頭を下げた。


「なに、別段急がねばならぬ理由もない。のんびりやってくれればよい」

「オレもだな~。なんかもうそこまで元の世界に執着もないっていうか」

「・・・それもそうね」


 何かに気がついたように、そう巫女姫ルティアラが呟いた。


「終わりかけの国を立て直すために魔王を狙ってたのよ・・・。元の世界に帰らなければ立て直すなんて面倒事もないのよね!」

「ちょっとまて。聞いた話と違うじゃねえか!?」

「だまされていたことにようやく気がついたか、勇者よ?」

「ちょ。説明プリーズ!!」


 しばらくの説明タイム。

 面倒なので割愛。


「魔物に襲われてたいへーん・・・ってのは嘘か!」

「そうよ」


 ルティアラが開き直った。


「資源を得るために他国に戦争を仕掛ける。どこの世界でも一緒なのですねえ」

「まぁ、争いの原因など突き詰めれば資源か復讐か正義かであろうからな」


 飛鳥とルインがうんうんと頷いている。


「この世界にいる限り、私は巫女姫の責務から解放されるんだから、無理して帰らなくてもいいんじゃない、もしかして!?」

「もしかしなくてもそうだろ・・・」

「せっかくだ、異世界とやらも楽しんでみたいではないか」

「この世界にいる限り、私達の利害は一致しているはずよ。一時休戦といきませんこと、魔王様?」


 セリフとは裏腹の、純真無垢そのものの笑みを浮かべてルティアラが提案する。

 今まで自分が何をしてきたかなど完全無視。

 何という厚顔無恥。

 心臓に毛が生えているどころではない。


 しかし、そうでなくては貴族やお偉いさんなど務まらない。


「構わぬ」

「いいのかよ!?」

「何を驚く、勇者よ。国のいざこざなどそういうものよ」

「その通り。腹では何を考えていようとも、それを表に出さないのが上に立つものの常識よ」

「オレは偉い人にはなれなくていいや・・・」


 微妙な顔の範馬。


「ところで飛鳥よ」

「はい?」

「しばらくこの世界に厄介になるとしても、我らには何もかもが足らん」

「そうね。ここは異世界召喚の常として、この世界のことを教えてもらえるかしら?」

「そうだな、日本とはいえ、オレの知ってるのとは別な日本だ。オレも聞きたい」

「そうですね・・・。では、簡単にですがこの世界のことをレクチャーいたしましょう」


 勉強会開始である。

お読みいただきありがとうございます。


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