序章に代わる三つの小篇 ~巫女姫の場合~
序章その3です。
明日の13時に第一話を投稿予定です。
< 序章に代わる三つの小篇 ~巫女姫の場合~ >
綺麗に整理整頓された部屋の中。
様々なものが整然と並べられ、積まれている。
その部屋の中央。
緋と白の巫女服に身を包んだ若い女が、水盤を覗き込んでいた。
年の頃は15,6だろうか。
長く美しい金髪と、深い青の瞳。
誰もが「美しい」と認めるであろうその美貌。
彼女は「巫女姫」と呼ばれ、この国では国王の次に発言力があると言われている「一個人」であった。
「チッ!!」
その可憐な唇から漏れる盛大な舌打ち。
儚げな美貌には、実に似つかわしくない行為である。
彼女が覗き込む水盤の中では、今まさに勇者が魔王に殴り飛ばされ、無様に地面に這い蹲った所であった。
「腕一本か。今回の勇者も使えない!!」
苛立ちと不満を隠そうともしない。
「私が膨大な魔力を使って喚んでやっているというのに! 魔王ぐらい倒して見せなさいよね。異世界の勇者なんだから!」
真性の自己中であった。
「魔王を倒して、魔の国を手に入れなければ、この国はすぐに行き詰まる。資源も食料も人材も何もかも。また魔力を貯めこんで、新しいヤツを召喚しなくちゃ。次は使えるヤツだといいなぁ・・・」
巫女姫と呼ばれた少女は、水盤から目を離す。
「あの魔王に頭を下げるなんてまっぴらよ。また一月は魔力溜めなくちゃ・・・」
そんなことを言いながら、テーブルに置かれた果実水を一息に呷る。
その時だった。
水盤が真っ白な光で満たされる。
「な、なに!?」
狼狽える巫女姫をよそに、光はだんだんと強まっていく。
最後に一際強く光が輝き、部屋を白光が満たす。
「ちょ、これって、まさか!?」
巫女姫はこの現象に心当たりがあった。
「まさか、私が召喚されてる!?」
人それを因果応報と言う。
後には揺れる水盤が残るのみ・・・。
お読みいただきありがとうございます。
良ければ評価などクリックしていただけたら嬉しいです(((((((((((っ・ω・)っ