デスゲーム?
時は一週間前――つまり『インフィニット・デイ』正式サービス初日まで遡る。
隆二がゲームに求めるものは、自由と高揚感でありそれがゲーマーを
続ける理由であり、この世界はその基準を十分に満たしていた。
「やっぱ綺麗だなーここ。現実なんかよりよっぽど――」
東京都で育ちほとんど外に出たことのない隆二にとってはVRMMOのなかで
見る自然こそが唯一の自然であった。
金を貰って仕事をしている以上いつまでも感動に浸っているわけにもいかない。
とはいえ本来の仕事の根源である異常事態などというのはそう起こるものでもないため
内容はもっぱら、内部統制と運営が警察の要求した条件をクリアしているかの確認である。
ゲーム開始直後のチェック項目は大きく分けて3つある。
「『GMコール』」
コマンドを発して、1つ目の確認に入る。
GMコールは、黎明期のオンラインゲームから存在するもので運営への問い合わせである。
確認内容は、10秒以内に応答があるか。
隆二達が仕事をする時、基本的にプレイヤーからの要請はGMを通す事になるので
応答速度は未然に犯罪を防ぐ上で重要なポイントになる。
「ツーツーツーツー」
結局コール音だけが空しく響き、隆二は1つ目の項目に×をつけた。
ゲーム開始直後は運営は対応に追われ、応答しないというケースは珍しくないが
わざわざ確認している立場としてはいい気分ではない。
げんなりとした気分のまま2つめの確認に入る。
「『ログアウト』」
ある意味1番大切な確認でるが、できない事はまずないうえに
問題が発生したのであればGMコールの時に報告があるために2つ目にになっている。
今日もすんなりログアウトするだろう。
そのぶんだけタイムロスしてしまうな…と悠長に構えていたのだが
いつまでたっても変化がない。発生を間違えたのだろうか。
「『ログアウト』!」
「――――――――」
「っ!おいおいマジかよ・・・」
いや待て落ち着くんだ。発声では駄目だっただけかもしれない。
なんとか平静を取り戻し、メニューを開く。ログアウトボタンは――ない。
閉じ込められたのか...実感を感じられないまま
所定通りに管理部門にメールを作成して送る。
とはいえこれがデスゲームなのであれば望みは薄いであろう。
これまでのケースで外部と連絡が取れたことはなかった。
朦朧とした意識のままで第3項目のチェックに入る。
これも駄目なんだろうな、、デスゲームをやるような運営が
警察に特別扱いを許すとは思えない。
3つ目の項目は警察の独自スキルが使用可能かどうかだ。
「『ジャンプ』『リキュール』」
「『フライ』」
「『ケラウノス』」
やはり駄目だ。本来なら順番に位置指定の転移、浮遊、
対象を強制ログアウトさせる雷の順番で発生するはずだがどれも発動しなかった。
本格的に閉じ込められているらしい。
これからどうするべきだろうか、動くにしても1人だけではできることのほうが少ない。
とりあえずは信頼のおける仲間と連絡をとるべきであろう。
「『コール』エル」
そう考えてまずは仕事仲間と連絡をとりはじめた。