★★番外編:『お父さんのバレンタイン(◆高校生<好拘性◆ 外伝)』★★
はじめまして! 雨美しずく(あまみしずく)と申します。
いつもは官能、R18指定の作品ばかり書いている私なのですが、
FC2小説のほうで大変お世話になっております水聖さんより
「バレンタイン女子会」への参加のお話をいただきまして
今回はバレンタインにちなんだR18指定ではないお話を書かせていただきました。
このお話は私が以前書きました◆高校生<好拘性◆というお話の中に
登場してくるキャラクターを主人公に書かせていただいております。
本編を読んだことのない方にも、少しでも楽しんでいただけたらうれしいです^^
2012年2月14日のバレンタイン。
この日は俺にとって本当にとても思い出深いものだった。
「はじめまして」の方もいらっしゃるといけないので、
俺から簡単にご挨拶をば!
俺の名前は佐々木遥斗。
弱冠34歳にして、18歳の長男「遥海」、
14歳の双子の姉妹「茜音」と「桃花」、
11歳の次男「遥希」の4人の子供を持つパパだ。
高校時代。バイト先で俺の一目ボレから始まった俺の最愛の人。
姉さん女房でもある葵さんとかわいい4人の子供たちに囲まれ、
俺の人生はめちゃくちゃ薔薇色、めちゃくちゃハッピーなハズだったのだが-。
それはバレンタインを翌週に控えた週末の出来事だ。
その日休日だった俺は、朝からうちにいるのがもったいない位の
冬晴れのいい天気だったので、近場の海に海釣りにでも行こうかと
子供たちを誘った。
「遥海~っ♪w」
まず手始めに、二階の自分の部屋にいた長男、遥海に声を掛けると、
慌てて階段を駆け下りてきた遥海は一言。
「あっ! 父さんごめん! 僕、これから部活!!」
そう言うなり、バスケ部で使う着替えの入ったデカい荷物を背負って
急いで玄関から出て行ってしまった。
『そうだった! 遥海の部活の休みは月曜だけだったよな・・・w』
などと思いながら、今度は洗面所でパジャマ姿のまま歯を磨いていた茜音に
「茜音っ!!w」
そう声を掛けると、
「あたし、これから友達と秋葉行って来る~♪」
楽しそうにそう言われてしまった。
『そうだ! 今日は茜音の好きなマンガの同人誌の発売日だって
前からそう言ってたっけかw』
そんなことを思いながら、今度は階段を降りてきた桃花に
「桃花っ!」
そう声を掛けると、中学の制服である紺のセーラー服に身を包んだ桃花は
「お父さんごめんね。 わたし、これから学校なの・・・・」
俺に対してものすご~~く申し訳なさそうな表情をしながらそう言った。
『今日は土曜だもんな。 部活でもあるんだろうな』
そう思いながら、今度は居間で3DS版のモンハンを熱心にやっていた遥希に
「遥希!」
そう声を掛けると、
「ボク、これからお友達の家でモンハンするんだ~♪
みんなで一緒に狩りするのっ!w」
という元気な返事が返ってきた。
『そっか・・・ モンハンはみんなでやったほうが楽しいもんな・・・・』
「俺の最後の希望」だとばかりに声を掛けた末っ子である遥希からも
そう言って断られてしまった俺は、思いきりガックシと肩を落とし、
そしてこう思わざるを得なかった。
『寂しい・・・・。 お父さんはめっちゃ寂しいぞっ!!。゜ヽ(゜`Д´゜)ノ゜。ウァァァン』
わかってる。 わかっちゃいるんだよ、この俺だって!
年頃になった子供たちが友達や外界との繋がりをどんどんと広げ、
親元を離れ外に出ていく-。
それって親としては本当に喜ばしいことだと手放しで喜んだっていいことなのに、
でも俺はものっそ寂しかった。
大学を中退し若干20歳で家庭を持った俺は、この14年間。
仕事と家庭に俺の全人生を捧げてきた。
当然俺は喜んでそうしていたし、それが俺にとっちゃあ、
ものっそ幸せなことだった。
仕事自体至って順風満帆、家庭においては、妻である葵さんとは今でも、
隙と時間を見つけちゃあお互いにイチャイチャしたくなっちゃうほどラブラブだし、
子供たちとだって、小さいうちは休みの日にはいつも一緒に
近場の公園へ行ったり旅行に行ったり。
今だって顔を合わせりゃみんなで仲良く談笑するなど
一緒に楽しい時間を過ごしている。
家族と共に過ごす時間-。
それが俺にとっての「何よりの楽しみ」であり、
ひとつのデカい「趣味」のようにもなっていたのだが、
子供たちが成長することにより、それがここに来て大きく崩れ始めたのだ。
ものっそ寂しくなってしまった俺は、洗面所で洗濯物を干していた
かわいい葵さんの元へといそいそと近づいて行った。
「あ~おいさんっ♪」
そう言いながら、俺に背を向け洗濯物を干している、
今でも相変わらずのナイスバディを保っている葵さんのくびれた腰に
両腕を廻して葵さんを抱き寄せた俺は、
葵さんの耳元でちょっと甘えるようにこう言った。
「ね。 せっかく二人きりなんだしさ。
今のうちに思いっきりイチャイチャしよっ??w」
すると葵さんは桃花同様、俺に対してものすご~~く
申し訳なさそうな表情を向けながらこう言った。
「あんっ・・ でも・・・ お洗濯とかお掃除が・・・w
午後からお天気が悪くなるみたいだから、
できるだけ今のうちにしておいたほうがよさそうでしょ・・・?」
葵さんの言うように、洗濯カゴの中には家族6人分の洗濯物が
「これでもか!」というほどたくさんあり、葵さんの言うことはもっともだよな。
そう思ったのだが、「俺の最後の砦」であった葵さんからも
やんわりと断られてしまった俺は、思い切りしょんぼりとせざるを得なかった。
『うぅっ・・・ 俺も何か一人で楽しめるような
ちゃんとした趣味でも持たなきゃダメかもな・・・・。
このままじゃ余りにも寂しすぎるもん・・・・ (-公- 、)シクシク…』
そう思った俺は、せっかく天気もよかったし、
気分転換にもなるかとも思ったので、とりあえず外に出てみることにした。
「葵さん! 俺、ちょっと散歩がてらに駅前の本屋まで行って来るね!w」
靴を履きながら俺がそう言うと、玄関先までわざわざ急いでやって来てくれ
「は~い♪ 気をつけてねw」
笑顔でそう言ってくれた葵さんと軽くキスを交わしたことで
ちょっと元気が出てきた俺は、駅前の本屋へ向かって足取りも軽く歩き始めた。
駅前に向かう道路は土日である為か、車もそして行き交う人も
いつもより多い気がした。
そんな中-。 俺が歩いていた公園通り沿いの遊歩道の対面の道を
駅前の商店街のほうからやってきた、
チャリに2人乗りしている中学生と思われる仲睦まじげなカップルの姿に、
俺は思わず目を奪われていた。
『あれ? 桃花・・・・? 確かさっき、学校へ行くって言ってたよな・・・?』
私服を着た中学生らしき短髪のイケメン男子の運転するチャリの後ろに
横向きに女のコ座りしながら、楽しそうに笑っているセーラー服姿の少女。
それがどっからどう見ても桃花なのだ。
桃花自身は俺が対面の道路にいた為、俺の存在には
全く気づいていなかったようなのだが、
二人は、公園の近くに立ち並んでいる住宅街の一角。
庭付きの洋風の一戸建て住宅の前にチャリを止めると、
二人で何やら笑顔で楽しそうに会話しながら、
仲良く連れ立ってその家の中へと入っていった。
『マジか・・・?!!』
俺はかなりアセっていた。
俺たちの前でもキワどいエロトークを平気で繰り広げる茜音なら
なんとなくわからないでもなかったのだが、
よりにもよって箱入り娘だとばかり思っていた桃花が男と・・・!!
俺自身も初体験は高1の時だったので
人様の事をとやかく言えたギリじゃあなかったのだが、
その時に今の妻である葵さんに「遥海」を仕込んじまっていた俺は、
どうしたって「最悪の事態」。
要は桃花の妊娠だが・・・をも視野に入れて考えざるを得なかった。
桃花はまだ14歳だ。 ここで万が一のことがありでもしたら、
心も体も傷つき一番苦しむのは桃花じゃないのか?
こんな時。親である俺はどうしたらいい・・・・?
そんなことを考えていたら、とてもじゃないけど
自分の趣味云々を考えるどころではなくなってしまった俺は、
とりあえずそのまま家に帰ることにした。
「おかえり♪ 早かったね?w」
葵さんは俺の帰宅が早かったのを不思議そうに出迎えてくれたのだが、
情けないことにその時相当気が動転していた俺は、
葵さんに桃花のことを打ち明けられなかった。
その後俺は、葵さんの家事の手伝いをした後、昼飯を食い、
その後二人で仲良くお昼寝をした後、葵さんと共に
夕飯の買い物に出かけたりして、ソワソワと落ち着かない気持ちを
紛らわすようにしながら過ごしていた。
桃花が家に帰ってきたのは、夕方の4時前だった。
茜音も遥希もまだ家に帰っていなかったのだが、
11月に推薦入試ですでに私大への合格を決め、
部活自体、すでに引退状態となっている高校3年生の遥海は家に戻っていて、
居間で俺たちと談笑しながらおやつを食べていた。
「ただいま♪」
居間に入ってくるなり、いつものように俺たちに向かってそう言った
桃花の純真な笑顔を見た俺は、今日の昼間目にしたことを思い出し
胸が苦しくなっていた。
『親として俺ができることってなんだろう・・・・?』
悩みに悩み考え抜いた末、俺なりに出した結論-。
俺は桃花ととりあえず話をしてみることにした。
「桃花っ!w 今日は学校終わるの早かったのか?w」
俺はいつものように笑顔で桃花に向かってそう聞いたのだが、
俺がそう言葉を掛けた途端-。
それまで笑顔を浮かべいてた桃花は不意に表情を硬く曇らせた。
「・・・・どうして?」
何か後ろめたいことでも隠しているかのように、
俺に不安げな瞳を向けた桃花は、上目遣いに小さな声でそう聞いた。
『やっぱりあれは間違いじゃなかったのか・・・・』
そう思った俺は軽く動揺していた。
「あ・・ いやさ。 昼間、公園通りで桃花を見かけたから・・・・」
俺がそう言うと、桃花は一度ハッ!としたような表情をした後、
俯きそして黙り込んでしまった。
俺はここでかなり動揺してしまったのだが、だけど
『親父として娘の前でそんな動揺を微塵も見せちゃいけねぇ!』
そう思った俺は、そんな自分を鼓舞するかのように
努めて明るく笑いながら桃花に向かってこう言った。
「チャリンコに2ケツさせてもらってたの。あれ彼氏か?!!
めっちゃイケメンだよなぁ?!w
彼氏がいるならお父さんにも隠さずに紹介してくれりゃあいいのにっ!w」
そう。
『どうせなら隠さずオープンにしちまえばいいんじゃないのか?』
単純に俺はそう思ってしまったのだ。
わかっちゃいるんだ。
年頃の子供が好きな人を親に紹介するなんてことは
はずかしくって絶対にしたくねぇ!って思うことは。
だけど、桃花はまだ中学生という親の保護観察の必要な年齢であるのだからして、
健全な心身の育成を望み見届ける権利が親である俺にはあるハズだ。
家族ぐるみとまでは行かなくても、その彼氏とやらが
俺らと顔見知りになっていれば、余りヘタなことをしようとは
思わなくなるんじゃなかろうか・・・・?
そう俺は思ったのだ。
全くもっと親ってヤツは、俺は、本当に勝手だと思う。
俺だって高校の頃は親にナイショでどんだけ好き勝手
イケないことをしてきたんだよっていう話だっつーのに・・・・。
だけどやっぱり俺は、娘である桃花のことが
本当にかわいくてかわいくて仕方なかった。
そして何よりも、遥海をお腹に宿した時に
葵さん一人に背負わせてしまった苦労を
娘である桃花には何としてでもさせたくない!
そう思ってしまったのだ。
俺の言葉を傍で聞いていた葵さんと遥海は、その時。
驚いたような表情をしながら桃花の顔を黙って見つめていた。
ほんとは桃花と二人きりで話せばよかったのかもしれない。
でもその時俺は、逆にみんなのいる前で話したほうが、
余り重くならなくていいんじゃないのか?
そんな風に思ってしまったのだ。
でもそれが大きな間違いだったことを俺はこの後、
イヤというほど思い知ることになる。
それまで俯いていた桃花は俺の言葉を聞き終えると、
顔を上げ俺のほうを見たのだが、その目には涙が浮かんでいた。
そして、涙をこぼし声を震わせながら、俺に向かって一生懸命にこう訴えた。
「倉谷先輩は彼氏なんかじゃないもんっ!
お父さん。ヘンな想像しないでっっ!!」
「ヘンな想像って! 俺はただ・・・・!!」
俺の言葉を聞き終えずして居間を出て行ってしまった桃花は、
階段を駆け上がり、一人自室へと篭ってしまった。
桃花・・・・・。
俺は自分自身のケツの穴の小ささとデリカシーの無さを呪ったが、
後の祭りだった。
俺がガックシと肩を落としていると、葵さんが心配そうに俺に声を掛けてくれた。
「どうしたの・・・・? 遥斗クン」
「実は・・・・」
俺が事の顛末を話すと、
「そう」
神妙な面持ちで俺の話を聞いていてくれた葵さんは
「この時期の女のコって難しいよね」
そう言った後、
「私、ちょっと桃花と話をしてくるね」
そう言うなり、二階の桃花の部屋へと足を運んでくれた。
今までの事の成り行きを心配そうに見守っていた遥海は
「父さん、僕。ちょっと買い物に出てくるよ」
俺に気を利かせてくれたのか、そう言って外に出て行った。
それから15分ほど経った頃のことだと思う。
桃花の部屋から戻ってきた葵さんは、俺に向かって笑顔でこう言ってくれた。
「大丈夫だよ、遥斗クン。 桃花。怒ってるワケじゃなかったよ?w」
「そうなの・・・・?」
「うんw だから余り気にしないほうがいいよw」
「そっか・・・w ありがとう、葵さん」
葵さんの温かな笑顔でほっとしたものの、でもやはり俺は、
俺自身の思い込みから桃花に心無い言葉を掛けてしまった
自分自身に対する不甲斐なさを感じて落ち込んでいたし、
何か事が起きた時、親として子供に接する時の難しさ。
それも痛感していた。
葵さんの言う通り、確かに桃花は怒ってはいなかった。
だけど、その日以降、桃花は俺と顔を合わせても、
以前のように無防備に俺に笑い掛けてはくれなくなっていた。
少し伏目がちに、そして自信なさげに小さな声で挨拶をしたり、
申し訳程度に言葉を交わしたり。
そんな桃花の姿に、
『桃花の俺に対する愛情も親父としての信頼も-。
俺。一気に失っちまったのかもしれねぇな・・・・』
そう思った俺は、なんともいえぬ寂しさと胸の痛みを抱えながら、
毎日を過ごしていた。
それは2月14日。バレンタイン当日のことだ。
「ただいま!」。
俺がいつも通り午後8時過ぎに仕事先から戻ると、
いつもは部活だったり塾や習い事に行っていたり。
そんな感じで、最近はなかなか家族全員が
顔を揃えていることの少なくなった我が家にその日はみんないて、
みんな揃って俺を笑顔で出迎えてくれた。
遥希から手を引っ張られ居間へと入っていくと、
食卓には葵さんお手製の、いつもよりちょっと豪華な手料理が
たくさん並んでいた。
「これって・・・」
「今日ってバレンタインだよね。 だから・・・w」
葵さんは頬を染めちょっとテレくさそうにそう言った。
それだけでも俺はめちゃくちゃうれしかったのだが、
俺の喜びはこれだけでは終わらなかった。
「はい。 僕からはこれw」
長男である遥海がそう言って、チェック模様の
プレゼント用の紙袋を俺に手渡してくれた。
その袋の中には、俺の大好きなリッチストロベリーを始め、
コンビニやスーパーで市販されているイチゴが使われている
大小さまざま、様々なメーカーのチョコレート菓子が
これでもか!というぐらいギッシリと詰まっていた。
「イチゴチョコ。 父さん好きだったよね?」
遥海から笑顔でそう聞かれた俺は、
「うん!w うっわぁ~♪ しっかしこんなにたくさんよく集めたよな!!w
ほんとありがとう!!w」
喜びと感嘆の声を上げつつ、遥海にそうお礼を言った。
「はいっ♪ お父さんっ♪」
今度は遥希が俺に小さなビニールの袋を手渡してくれた。
「ボクはこれっ♪ お父さんがいつまでも元気でいられますようにって!w」
中を開けてみると、栄養ドリンク「○オビタドリンク」そっくりの
小瓶に入った「チョコビタドリンク」なるチョコレートが入っていた。
そのチョコの入っていた袋が近くのスーパーの袋だったことから、
『遥希。 お小遣いを握り締めてわざわざ買いに行ってくれたんだな』
そう思いうれしくなった俺は、
「おおっ!! ありがとうな、遥希! 大事に食べさせてもらうよ!!w」
遥希にも心を込めてそうお礼を言った。
次に俺の目の前に赤い小さなハート模様のたくさん書いてある袋を
ズイッ!と勢いよく差し出したのは茜音だった。
「あたしからはこれ~!w お父さんがお母さんの次に好きなモノ!!w」
うれしそうにニヨニヨと笑いながら茜音からそう言われた俺が
「なんだろ??w」
そう言いながらその袋を開けてみるとそこには、
「ちょ!!w」
俺が思わずそう言ってしまった、ある「スゴいもの」が入っていた。
それは透明なプラスティックの円筒形の入れ物の中に、
個包装されているチョコレートがたくさん入っていたのだが、
そのチョコレートの形がこれまたすげぇのだ!
ホワイトチョコを女性の胸のお肉に見立て、その小さなおわん状の形をした
ホワイトチョコの真ん中に、乳首を象っているピンクのチョコが
ちょこんと乗っているという、それはそれはとんでもけしからん形をしている上、
名前もそのまんま。「おっぱいチョコレート」という代物だったのだ!
「おっぱい。 大好きでしょ??w」
俺が答えるまでもなく、イタズラっぽい笑みを浮かべながら
俺の顔をうれしそうに覗き込んでそう言った茜音の言葉に
俺は一瞬苦笑しながらも、
「あのな~・・・w まぁでも確かに、大好きだわなっ!!w
ありがとう、茜音!w」
俺の好みをズバリと言い当てた、俺のエロ遺伝子を
濃ゆく受け継いでしまった茜音にも心を込めてそうお礼を言うと、
一瞬、ちょっとテレくさそうな笑みを浮かべた茜音は、
「えへへ♪w 楽しんで食べてねっ♪w」
そう言ってニカっと笑った。
そして最後に、俺の目の前に大きな紙袋をオズオズと差し出したのは
桃花だった。
「お父さん。この間はごめんね。 わたしからはこれ・・・w」
この間のことで桃花とは深い溝が出来てしまったと
落ち込んでいた俺だったのだが、その桃花から
思いもよらぬ何やら大きなプレゼントをもらった俺は、
それだけでもう涙腺がちょっとばかし崩壊しそうになっていたのだが、
そこをなんとか堪えた。
「開けてみて?」
桃花からそう言われたのでその袋を開けると、
中には大き目の長方形の箱が入っていた。
その箱を開けると、中にはきれいに飾り付けをされた
おいしそうなロールケーキが入っていた。
そのロールケーキの中にはフルーツが入ったイチゴクリームがサンドされ、
表面にはイチゴやキウイ、チョコなどでかわいく飾り付けがされている、
それはそれは見事なケーキだった。
「これって・・・ すげぇっ!!w」
俺が感嘆の声を上げると、桃花はそんな俺に笑顔でこう言ってくれた。
「これね。 倉谷先輩と一緒に作ったのよ?w」
「え? 彼って男の子なのにお菓子を作れんの?」
「うんw 倉谷先輩ね。 高校を卒業したらお菓子の専門学校へ行って、
将来はパティシエになりたいんだって!」
「そうなんだ!!w」
「うん♪ 倉谷先輩のお母さんがとってもお料理上手で、
わたし。倉谷先輩のおうちでお母さんと倉谷先輩と一緒にこれを作ったの」
「そうだったんだ。 だからあの時・・・・」
桃花のその言葉で俺は、あの日の俺が桃花に対して、
ものすごく失礼な上に恥ずかしい誤解をしていたことに気がついた。
「学校に行くなんてウソをついちゃってごめんね。
お父さんにはこの日までナイショにしておきたかったの・・・。
でも倉谷先輩とは本当になんでもないんだよ?」
不安そうに上目遣いに俺にそう言う桃花に、
反省の意味を込めて俺は心から謝罪をした。
「うん、わかってるよ。 俺のほうこそ余計な詮索をしちゃって
本当にごめんな」
そんな俺に桃花はいつものように無防備で明るい笑顔を向けてくれた。
そして
「ううん、いいのw わたしのほうこそ、素直になれなくてごめんね」
そう言ってくれた。
『桃花とも仲直りできた』。
そのことを何よりうれしく思った俺は、
「いいんだよ。 ほんとありがとうな」
胸をいっぱいにしながら、桃花にそうお礼を言った。
家族みんなからこうしてそれぞれにプレゼントを貰い、
ただでさえ涙腺の弱い俺がウルウルとしていると、
そんな俺に茜音がイタズラっぽい笑みを浮かべながらこう言った。
「でね! あたしたちからのプレゼントは、
実はチョコだけじゃないんだよぉ??w」
「え?!!」
そんな茜音の言葉に俺が驚いていると、
「はいっ、お父さんっ♪」
遥希が何やら俺に小さな白い封筒を手渡してくれた。
「これ、何? 手紙??」
「開けてみて♪」
遥希からにこにこと笑顔でそう言われた俺がその封筒を開けてみると、
その中には、きっと落書き帳の1ページを切り取って
書いてくれたんじゃないかと思われる白地の紙に、
遥希の文字で、『1日自由に使っていい券』という文字と、
俺と葵さんのマンガチックなかわいい似顔絵が
デッカいハートマークで囲まれている(かなり上手に書かれていたので、
これはきっと茜音が書いてくれたんだと思う)が書かれていた。
「これって・・・・」
俺がそう言いながら子供たちの顔を黙って見つめていると、
遥海がそんな俺に向かってこう言ってくれた。
「僕らもう子供じゃないからさ。 父さんと母さんで
どこか1日のんびりと出かけてくるといいかなって思ったんだw」
「でも飯とか困るだろ?」
俺が心配しいしいそう聞くと、
「ご飯のことは大丈夫だよ! 僕ら何かしら作って食べれるしね!w」
遥海は笑顔でそう答えた。
「うん♪ わたしが何か作るから大丈夫♪w」
遥海に続いて、葵さんに似て料理上手な桃花がそう言うと、
「あたしも手伝うしっ♪」
「ボクも~~♪」
茜音と遥希も桃花に同調してそう言ってくれた。
そしてその後、
「お父さんとお母さんで買い物に行ってきてもいいんだよ?w」
遥希がそう言うと、
「ちょっとした旅行へ行ってもいいかなと思うしね!」
遥海はそう言った。
「近場の温泉旅行とかに行っても楽しそうっ♪」
桃花のその言葉に続き、最後に茜音が『ここがあたしの決めどころ!w』
とばかりに、思いっきりしたり顔をしながら俺と葵さんに向かってこう言った。
「で、あたしたちがいないのをいいことに、泊まった旅館で、
二人で思いっっきりイチャイチャしちゃうんでしょ??ww」
そんな茜音の言葉に、俺と葵さんは思わず顔を見合わせ、
葵さんなどは思いっきり顔を赤らめていると、
「おねえちゃんっ!」 「茜音っっ!!」
桃花と遥海が、『してやったり♪w』とばかりに
うれしそうにニヨニヨと笑っている茜音に向かって
ものっそいいタイミングでそうツッコミを入れた。
そんな日常のなにげない光景に、「ひとつの家族」としての和を見た俺は、
とても胸がいっぱいとなっていた。
「あははw ほんとありがとう、みんな! 俺はほんとうれしいよ!!w」
最初は笑いながらそう言った俺だったのだが、
『俺はつくづく、いい子供たちを持ったな・・・』
そう思った途端、ここまでの一連の流れで
随分と弱まっちまっていた俺の涙腺がとうとう崩壊した。
俺が涙腺が弱いのを知っている俺の家族たちは、
そんな俺を見てみんな困ったような笑顔を浮かべていたのだが、
さすがにみんなの前で一人だけ泣いているのはカッコ悪い。
そう思った俺は、慌てて拳で涙を拭った。
そして、葵さんにこう語りかけた。
「葵さん。 子供たちの言葉に甘えて次の土曜日さ。
どこか二人で出かけようか?」
すると葵さんはそんな俺を見つめ、
「うん・・・w」
小さく微笑みながらうれしそうにそう言ってくれた。
「ゆっくりしてくるといいよ」
と遥海が。 桃花は
「うん♪ だねっ♪」
そう言い、茜音は茜音らしく、
「帰り、何かおいしいもののおみやげ、よっろしく~~♪w」
ニカっと笑いながらそう言うと、
「ボクも~♪」
遥希は茜音に同調し、楽しそうにそう言った。
「うん、わかったよw」
笑顔でそう答えた俺は、
葵さんと久しぶりに、二人でのんびりとどこか出かけられる-。
そのことでワクワクしながらも、旅先で葵さんと二人。
いろんな景色を楽しんでいる光景を頭に思い浮かべたら
それと同時に浮かんできたある光景-。
それを頭に思い浮かべながら、「あ。 でもさ」
俺はみんなに向かってこう言っていた。
「葵さんと・・・ お母さんと一緒に出かける時間を
こうしてみんなからもらえたのは、本当にめっちゃうれしいんだけどさ。
俺。 またみんなと一緒にどこか出かけたいな」
そう。それは子供たちが幼い頃。
みんなで一緒に出かけた海やら山やらの光景。
俺の頭の中にはその光景が浮かんでいた。
そのしあわせだった時間をまたみんなで一緒に共有したい-。
そう俺は思ったのだ。
そんな俺の言葉に、
「うんw そうだね!w」
子供たちはみんな揃ってうんうんと頷いてくれた。
そんな子供たちの笑顔に、俺は幸せいっぱいな気持ちとなっていた。
【Fin】