【16】
「ーこっち!! こっち!!」
凛は雅巳の手を引っ張りながら、進んで行く。その足は軽く、純粋に楽しんでいるようだった。
「ちょ、ちょっと待て」
「一緒に買い物しようって言ったでしょう?」
凛は笑顔を浮かべたが、先日の事件がまだ尾を引いていた。無理に明るく振る舞っているわけではないが、心がちくちくと痛む。
ー今日だけは。
誰に詫びるわけでもなく、心の中で許しをこうた。
「あ!! このお店!!」
目当ての店は装飾品を扱うところだった。雅巳が眉根を寄せる。
「高いんじゃ…」
「大丈夫。ここは良心的だって、お兄ちゃんに聞いたから」
「そうか。それならいいか。何を買うんだ?」
「お守り!!」
「…は? お守り?」
店内はおしゃれな雰囲気で、客を心から出迎えるような作りだった。凛はきょろきょろと首を動かし、「あ!」と声をあげる。
「これ!! これがいい!!」
「何…? 首飾り…?」
「そう!! これなら落とさないでしょう?」
「ーお客様、お目が高い」
すすすと音もなく、人好きしそうな店員がやって来た。雅巳は近寄られるのが嫌なのか、頬をひきつかせたが、凛は気にせず、むしろ話しかける。
「これ2つください」
「え! もう買うのか?」
「いけない? 前から欲しかったのよ」
首飾りは青い宝石のついた簡素なものであったが、鏡を見ているようにきらきら輝いていた。雅巳も「へえ」と声を出す。
「どう? 似合いそう?」
襦裙の上から、首飾りをつける真似をしてみると、雅巳は表情を和らげた。
「…うん。それがいい」
「じゃあ、私が…!!」
「駄目。これは俺からの贈り物」
「え!? いいの?」
「たまには、甘えろって言っているだろう?」
雅巳も嬉しそうに、首飾りを当てる真似をし、凛から親指を立てられる。対なのは恥ずかしさもあるが、雅巳が側にいるような心地よさがあった。
「ありがとう、雅巳さん!!」
「はい、どういたしまして」
2人は満面の笑みを浮かべると、2つの首飾りをくっつけたのだった。




